カテゴリー「21米中関係」の記事

2019年10月 8日 (火)

2020年の米国大統領選挙まで米中貿易戦争を終結させる気のない中国政府

ドナルド・トランプ米大統領は2016年の大統領選挙期間中から米国の巨額な対中貿易赤字額を問題視していた。2017年1月12日、【中国税関総署】は2017年の【対米貿易黒字額】を発表したが、黒字額は2758億1000万ドル(約30兆3400億円)で、過去最高であった。

この巨額な【対中貿易赤字】の原因は,、米国製造業の大手企業が生産拠点の一部を中国に移転させ、中国で生産した製品を逆輸出していることであった。問題の本質は米国内の雇用が減少したことにある。国内の雇用を増やすには海外移転した企業を国内回帰させることであるとトランプ大統領は考え、中国からの輸入品に高い関税を課すことになった。2018年3月23日に鉄鋼・アルミ製品への25%と10%の追加関税措置が発動され、中国との貿易摩擦が生じたのである。

5月3日には貿易摩擦解消のため第1回米中貿易協議閣僚級会議が北京で開催され、17日にはワシントンで閣僚会議が開催された。だが貿易協議では話し合いは物別れに終わり、7月6日、米国は中国からの輸入製品818品目に対して340億ドル規模の25%の追加関税を発表したが中国も対抗措置として同率の報復関税を発動。さらに8月23日には米中が第2弾の関税措置を発動、9月16日には米中が第3弾の関税措置を発動した。激化する米中貿易戦争の余波で10月には世界同時株安が発生している。

米中貿易戦争の核心は、米国が第1次世界大戦(1914~1918年)後から約1世紀の間、掌握し続けた世界の覇権を1990年代以降急激に【経済大国】成長し、経済的にも軍事的にも米国の覇権を脅かす存在となった【中国】の更なる経済発展を阻止しようする意図が米国にはあるということである。

昨年の11月以降、米中間で貿易戦争を終結させようと水面下でぎりぎりにの交渉が継続されていたが米国側の要求は次の5つの項目であったとされる:①米国企業への技術移転の強要の禁止、②知的財産権の保護、③非関税障壁の撤廃、④サイバー攻撃の即時停止、⑤サービスと農業の市場開放。

中国は5つの項目を受け入れる方向で検討していたとされるが、検討した結果、中国は膨大な新たな投資が必要となり、【中国経済】の最大の推進力であった【国家資本主義】(膨大な産業補助金によって国営企業を育成する)が崩壊しかねないことに気付いて中国は2019年5月10日に90%纏まりかけていた米中貿易協議を反故にしたのである。

中国は米国への対抗策として中国にとって過酷な条件を突きつけるトランプ大統領の再選を阻止する作戦に転換したのであろう。戦略の変更に踏み切った原因は米国連邦議会下院の過半数を掌握しているのが野党【民主党】であることがであろう。民主党はこれに呼応するかのようにこれまで慎重姿勢を崩さなかった【トランプ大統領弾劾】に民主党下院は舵を切った。

10月10~12日に開催される【閣僚級貿易協議】での成果が上がる可能性は極めて低い。   (おわり)

 

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2019年9月 2日 (月)

米中、制裁関税合戦を再開

米国は、米国東部時間9月1日午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)、1100億ドル(約12兆円)分の中国製品を対象に【制裁関税第4弾)を発動した。これによって1日午前0時1分以降、米国政府は税関を通過した中国製品から15%の【追加関税】徴収する。

今回の追加関税は【半導体メモリー】やテレビなどの家電関連製品や衣料、靴など合計3243品目が対象である。米国民の生活に直結する消費財が半分を占めているので米国民ばかりでなくメーカーや小売業などの企業にも影響が及ぶことになる。トランプ大統領は中国製品に対する関税を負担するのは中国であるなどとこれまでフェイクニュースを意図的にツイッターを駆使して流していたが関税を負担するのは企業と米国民であることを米国民は理解すべきである。

中国も9月1日の同時刻にに制裁関税を発動したため【米中制裁関税合戦】はいつ果てるとも知れない泥沼の戦いの様相を呈してきた。米中両政府は9月上旬、ワシントンで閣僚級の貿易協議を再開させる予定であるが具体的な日程は未だ決まっていない。たとえ、貿易協議が再開しても合意に達する可能性は極めて低い。そもそも、トランプ大統領が中国に対して制裁関税合戦を仕掛けた目的は、中国へ生産拠点の一部を移転させた米国の製造業を本国回帰させて米国の製造業を再生させることだからだ。トランプ大統領は製造業の本国回帰と製造業の再生を選挙公約に掲げ、選挙に勝利したので2020年の大統領選での再選を果たすためにはトランプ大統領は製造業の一部でも本国回帰させなければならないのである。

ところで、昨年3回に分けて米国が実施した【制裁関税】がもたらしたものは【大豆農家】の倒産の急増と米国が誇る【ビッグスリー】とかつて呼ばれた自動車メーカーの大幅な販売台数減である。

[大豆農家】は最大の輸出先であった中国が輸入先を米国からブラジルへシフトしたことによって米国の【大豆農家】は経営難に陥り、今年の2~6月の6か月間で農家の破産申請数は535件に急増した。トウモロコシも農家も中国からの輸入がほぼゼロとなり、今後、倒産が増えるかもしれない。

米国の色褪せた名称【ビッグスリー】のうち【GM】(ゼネラルモーター)の2017年の中国での販売台数は404万0789台であったが2018年の中国販売台数は364万5044台であったから報復関税合戦の影響によって【GM]は39万4200台減らしたことになら。減少幅は今年になってさらに拡大傾向にある。2019年上半期の中国販売台数は前年同期比15%減の156万7899台で、昨年が184万14396台であるから27万6500台減少したことになる。2019年通年では300万台前後にまで落ち込む可能性すら現実味を帯びてきた。

【フォード】も2018年の中国販売台数は105万5000台で前年より50万9000台減少した。【FCA】(フィアット・クライスラー・オートモビールズ】は中国販売台数は数万台程度であったことから2018年の販売台数は1万台程度である。

トランプ大統領が自動車メーカーを恫喝して本国回帰させようとしても米国での生産コストが他の地域の生産コストより高いので自動車メーカーの本国回帰は口言うほど簡単ではない。現時点ではトランプ大統領の【制裁関税】政策は米国を景気後退追い込んでいるだけである。   (おわり)

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2019年7月18日 (木)

2019年上半期(1~6月)の日本の貿易収支の赤字によって浮かび上がった中国経済の減速

財務省は7月18日、2019年6月の【貿易統計】を発表した。【輸出】は、前年同月比で6.7%の減少の6兆5845億円で、輸出の減少は7カ月連続である。【輸入】は、前年同月比で5.2%減の5兆9950億円、輸入の減少は2カ月連続である。【輸出額】から【輸入額】を差し引いた【貿易収支】は5895億円の黒字であった。貿易収支の黒字は2カ月ぶりである。

日本の貿易相手国の中で日本が黒字を積み上げている相手国は【米国】で6月の対米輸出額は前年同月比4.8%増の1兆3555億円で9カ月連続の増加。【輸入額】は2.5%減の6856億円で【貿易収支は】前年比で13.5%の6699億円であった。一方、日本が【貿易赤字】を垂れ流している相手国の【中国】への【輸出額】は前年同月比で10.1%減の1兆2450億円、中国からの【輸入額】は前年同月比で5.3%減の1兆3772億円。【貿易収支】は1313億円の赤字で、赤字は15カ月連続である。対中国の赤字が常態化している原因は中国からの輸入品の大半は日本のメーカーが中国で製造した製品を逆輸入しているからである。

【輸出】で増加したのは自動車で前年同月比で78.7%増えている。これは米中貿易戦争によってアメリカで生産された高級車(ドイツのメルセデス・ベンツやBMWなど)に35%の関税がかけられるので日本のレクサスなどの高級車に価格の面で太刀打ちできないために日本の高級車の売れ行きが好調なのである。日本から輸出する【レクサス】の関税は10%である。日本からの輸出品で減少しているのは半導体製造装置(27.1%減少)、自動車部品(30.5%減少)、半導体電子部品(21.5%減少)などである。

【半導体製造装置】の輸出量が減っているのは半導体の在庫が積みあがって値崩れを起こしているために半導体工場の稼働率が低下しているためだ。自動車部品の輸出の減少は中国の自動車生産量が昨年から減っていることが原因である。つまり、中国経済が減速している証なのである。

昨年の上半期(1~6月)の日本の【貿易収支】は【輸出】が40兆1314億円、【輸入】が39兆5282億円であったから6032億円の黒字であった。ところが今年の上半期の【貿易収支】は、【輸出】が前年同期比4.7%減の38兆2404億円、【輸入】は39兆1292億円で8888億円の赤字である。輸出が大幅に減っているのは【半導体製造装置】(18.5%減)、鉄鋼・自動車部品(21%減)である。

国別の【貿易収支】で赤字額が一番大きかったのが中国で2兆0439億円、【黒字額】が最も大きかったのが米国で3兆4590億円である。日本は米国と中国を除いた東アジアと東南アジアで稼ぎ、【中国】と【EU]さらに【中東】では恒常的に赤字である。日本の【貿易収支】に重大な影響を与えるのは原油価格と中東である。  (おわり)

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2019年7月 9日 (火)

米中貿易戦争は米国の製造業界に富と雇用を齎(もたら)したのか

6月28~29日に大阪で行われ行われた【G20首脳会談】を利用して米中首脳会談が開かれ、注目を集めていた米国の第4弾の約3000億ドル(約33兆円)分の中国からの輸入品に対する25%(現行10%)への関税引き上げが期限限定なしで先送りされた。

トランプ大統領が習近平国家主席に譲歩した形となったがことはそれほど単純ではないであろう。第4弾の関税引き上げ品目の中にはスマートフォンなどの輸入額の大きい代表的な消費財の関税率が引き上げられれば米国の経済を支えている個人消費が冷え込み、米国の好調な経済にダメージを与えることを回避したというのが真実だと思われる。第4弾の関税引き上げに関しては米財界はこぞって反対を表明していたし、アップル社も引き上げの中止を要請していた。

トランプ大統領は、関税の引き上げ分は中国が負担するなどとツイッターで投稿していたが関税を負担するのは最終的には消費者であり、トランプ大統領は意図的にフェイクニュースを垂れ流していたことになる。トランプ大統領の側近として知られる経済評論家出身の米国の経済政策の諮問機関【国家経済会議】のラリー・クドロー委員長ですらトランプ大統領のツイッター投稿の内容を明確に否定していた。

ところで、米中貿易戦争は1年を経過したが、トランプ大統領が主張していたように米国の製造業は活気を取り戻し、雇用は増大してのであろうか。米中貿易戦争(関税引き上げ)の恩恵を受けたのは鉄鋼業やアルミ業界であろう。それに対して被害を受けたのはハイテク産業や自動車産業であり、製造業ではないが農業である。

米国を代表するハイテク産業の【アップル】は、貿易戦争の影響で景気が後退した中国市場でアイフォンの販売量が減少し、2019年の売り上げ高の見通しを引き下げたし、半導体業界のトップの座を永年維持してきた【インテル】も中国での需要低下を受けて売上高を下方修正した。

被害の大きい自動車産業では、【GM】は今年の製造コストの上昇を関税引き上げと素材関連で10億ドルと見込み、【クライスラー・フィアット】は関税引き上げの影響でコモディティ(汎用品)関連のコスト上昇を7億5000万ユーロと見込んでいる。

【GM】の2019年第1四半期(1~3月)の米国での販売台数は前年より5万台減って81万台、中国では前年の98万6000台から前年比で17万200台減って81万4000台、【フォード】は米国では前年比で9900台減の59万6800台、中国では前年より台数にして10万7000台減の11万5000台。【クライスラー・フィアット】は米国では前年比極ではで1満5300台減の49万8400台、中国では前年比30%減の3万9000台。自動車メーカーは惨憺たる状況である。最大の雇用を生み出す自動車産業の業績がこの体たらくでは米国の製造業の雇用は減ることはあっても増えることはない。

【米中貿易戦争】の先行きは不透明である。単なる経済闘争から米国を中心とする民主主義に裏打ちされた【自由主義社会】と中国共産党独裁型管理型社会】の争いという政治闘争に発展している。それ故に米国と中国の政治指導者の心の中に国家の存亡をかけた闘いに突入した意識が芽生えているために解決策は存在しないかもしれない。唯一被害の最小化を図れる解決策は米国民がトランプ大統領の再選を阻止することかもしれない。   (おわり)

 

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2019年5月14日 (火)

中国の対米輸出品に第四弾の関税引き上げが実施されれば米国経済に想定以上の打撃を与える可能性

トラン大統領が5月5日に中国の対米輸出品5745品目(2000億ドル相当)の関税を現行の10%から25%に引き上げると発言したことから5月6日から日・米・中の株価の暴落が始まった。

米国の主要株価指数の【ダウ工業30種平均株価】は5月3日は2万66504ドルであったが5月8日には前日比475ドル安の2万5965ドル、米中貿易協議閣僚級会合が物別れに終わった後の週明けの5月13日には10日比617ドル安の2万5324ドルと急落した。6営業日で1180ドル下落したことになる。

中国を代表する株価指数【上海総合指数】も4月30日には3078ポイントであったが5月6日には2906ポイントと172ポイントも下がり、目安となる3000ポイントを割り込んだ。1週間で中国の株式資産は2.5兆円が消失してしまった。

日本の【日経平均株価】も大型連休前の4月26日は2万2258円であったが連休明けの5月7日には333円円下げて2万1923円、13日には2万1191円と5営業日で1067円と大幅に値を下げた。米中貿易協議の交渉決裂の衝撃がそれだけ大きかったという証である。

ところで、昨年7月6日に始まった【米中貿易戦争】は3回にわたる米国による中国からの輸入品に対する【制裁関税】と中国の米国からの輸入品対する【報復関税】の発動合戦である。第一弾は7月6日、米国が自動車や産業ロボットなど340億ドル分の輸入品に25%の【制裁関税】の発動である。同日、中国は自動車、大豆、牛肉など340億ドル分の輸入品に25%の【報復関税】を発動してそれに応じた。

【第2弾】は米国が8月23日に半導体、化学品、鉄道車両など160億ドル分の輸入品に25%の【制裁関税】を発動。同日、中国は自動車、鉄鋼、銅など同額の輸入品に25%の【報復関税】を発動。【第3弾】は米国が2000億ドル分の輸入品(食料品、家具、家電など)に5~10%の【制裁関税】を発動。中国は同日、600億ドル分の輸入品【液化天然ガス、航空機、レーザー機器)に5~10%の【報復関税】を発動した。

米国は今回の貿易協議で中国がトランプ大統領のブラフ(恫喝)に屈しなかったために5月10に2000億ドル分の制裁関税を25%に引き上げる追加関税を発動した。中国は第3弾の【報復関税】を25%に引き上げる措置を6月1日に講じる予定である。

さらに、米国は、今後も続く貿易協議を有利に進めるためにこれまでほとんど関税を課されていなかった3805品目、金額にして3250億ドル分の中国からの輸入品への【制裁関税】の発動の検討に入った。中国は報復関税の対象商品がないのでその対抗策として米国製品の不買運動で対抗する可能性が高い。

【IMF(国際通貨基金)】が4月に明らかにした試算によれば【第3弾】の制裁関税の発動の米国の経済成長に対する負の影響は最大で0.6%、中国の負の影響は最大で1.5%である。米国と中国のGDPの規模の差が中国経済のダメージの大きさに関係しているのである。しかしながら第3弾】の【制裁関税】引き上げの対象商品は日用品なのでは関税は米国の一般国民が負担することになる。米国民の消費意欲が急激に衰えることになりかねないので米国経済への負の影響はさらに拡大すると思われる。

米国の某調査会社は、【第3弾】の制裁関税引き上げにより93万人の、第4弾の制裁関税の発動で216万人の米国の雇用が喪失すると予測している。【制裁関税】の発動による米国経済への影響は決して軽微ではすまないのである。  (おわり)

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2019年5月13日 (月)

米中貿易協議合意に達せず

5月10~11日にワシントンで開かれた米中貿易協議閣僚級会談は予測されたように物別れに終わり、米国は中国に対して第4次の制裁関税を課す見通しとなった。今回の米国のムニューシン財務長官とライトハイザー米国通商代表と中国の劉副首相の会談は単なる貿易交渉ではなく、米国側が中国政府に対して知的財産権の保護と中国政府の国営企業への高額の補助金の給付という【非関税障壁撤廃】を強く求めたために中国への内政干渉にもなりかねず中国側はこれに強く反発して会談は物別れに終わった。

米国の要求は正当なもので今回の会談決裂の責任は100%中国側にあるが中国が米国の2つの要求を受け入れれば中国製品の国際競争力は一挙に低下し、中国製品の輸出量は激減し、GDP世界第2位の座を失う危機に瀕する結果、中国共産党の崩壊に繋がりかねないことから中国としては米国の要求を拒否する以外の選択肢はなかったのである。中国共産党の一党独裁の正当性は経済発展によって担保されているからである。

中国の工業製品の生産コストが先進国に比べて廉価である最大の要因は、ここ数年人件費が高騰したとはいえ先進国に比べれば格段に廉価な労働力と特許料を支払わないことである。さらに中国の輸出品の価格が他国の輸出品の追従を許さないほど廉価なのは中国政府が輸出品に対して高額な補助金を給付しているからに他ならない。

トランプ大統領は資本主義の経済合理性に基づき中国からの輸入品に高率の関税を課せば中国製品の米国での販売価格は高騰して中国製品は米国市場で販売不振に陥り、中国の輸出は激減し、米中の貿易不均衡は是正されると考えている。交渉相手が自由主義経済に基づく資本主義国であればトランプ大統領の措置は成功するのであろうが資本主義の経済合理性の枠外の中国相手ではトランプ大統領の措置が成功する保証はないのである。中国は対抗策として報復関税で応じるであろうがそれ以上に中国の国営、民営企業を問わず中国の輸出企業に高額な補助金を給付して対抗すると思われる。

今回の米中貿易協議が決裂したことによって世界経済は未踏の分野に足を踏み入れたことになる。この米中の貿易摩擦の到達点は神のみぞ知るということに現時点ではなるのであろう。   (おわり)

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