カテゴリー「20日米貿易問題」の記事

2019年10月 2日 (水)

日米貿易協議において日本は何を得たのか

歴代の米国大統領の中でドナルド・トランプ大統領ほど【再選】を意識して選挙公約を実現しようと苦闘している大統領はいないであろう。トランプ大統領の選挙公約の一丁目一番地は【製造業の雇用増】である。製造業の中でもトランプ大統領が重視しているのが【鉄鋼】と【自動車】だ。

【鉄鋼業】を象徴する都市はペンシルベニア州のピッツバーグ市である。ピッツバーグにはアメリカの鉄鋼業最大手の【USスチール】の本社が置かれている。【USスチール】の最盛期の1960年のピッツバーグ市の市域人口は76万人であったが現在の人口は30万人にしか過ぎない。さらに【自動車産業】を象徴する都市は【ミシガン州】のデトロイト市であるがその全盛期の1950年のデトロイトの人口は185万人であったがトランプ大統領が大統領に就任した年の2017年の人口は67万人で現在は人口は回復傾向にある。【デトロイト市】には米国自動車メーカーのビッグ3の【GM]、【フォード】それに【FCA](フィアット・クライス―・オートモビールズ)の本社が存在する。

ところで、4年に1度、11月の第一月曜日の翌日に実施される米国の大統領選挙の一般選挙は大統領を選ぶ選挙での投票権を持つ【選挙人】(538人)を選ぶ間接選挙である。大統領選挙の本選は12月に選挙人538人の選挙人によって行われる。選挙人の数は人口に応じて米国の50州とワシントン特別区に割り当てられる。

米国は2大政党制なので大統領選の立候補者を共和党と民主党が1人づつ擁立するが1981年に誕生したレーガン大統領以降、共和党の強固な地盤となった州は中西部の農業が盛んな州と南部諸州である。それに対して民主党の地盤となっているのが北東部の諸州とカリフォルニア州などの西部の諸州である。政党の地盤が安定していない11の州は【スウィング・ステイト】(揺れ動く州】と呼ばれ、大統領選挙の激戦区となる。

【スウィング・ステイト】は、フロリダ州(選挙人29人)、ペンシルベニア(20人)、オハイオ州(18人)、ミシガン州(16人)、ノースカロライナ州(15人)、バージニア州(13人)、コロラド州(9人)、アイオワ州(6人)、ネバダ州6人)、ニューハンプシャー州(4人)、ニューメキシコ州(5人)、ウイスコンシン(10人)である。トランプ大統領が25%関税を課して保護しようとした鉄鋼と自動車産業はこの【スウィング・ステイト】に入っている。つまり関税の目的は選挙対策と増税のためであったということにある。中国に対する関税の結果、米国の一般市民が2018年に負担した関税分は一人当たり1000ドルを超えたという調査結果が出ている。

4月から始まった日米貿易協議は9月に決着したが実利を得たのは米国産農産品の関税引き下げに成功した米国で、日本はトランプ大統領の再選に有利になるように協力したということになる。   (おわり)

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2019年9月17日 (火)

日米貿易交渉の合意内容の大筋が判明

今月末に行われる予定の日米首脳会談で【日米物品貿易】の協定書の署名が行われる。それに先立ち【日米貿易交渉】の閣僚級会談で【日米物品貿易】の内容が確定する関

【日米物品貿易】の米国側の関心の焦点は【米国産農産品】の関税を日本側がどこまで引き下げるかであり、日本側の関心の焦点は米国が日本車に課している輸入関税の撤廃を受け入れるかであった。9月15日に【共同通信】が配信した記事によれば、米国産農産品の関税は昨年12月30日に発効した【TPP11】の水準で合意したとされる。新たに報じられた内容は「日本が米国に設定した最大7万トンの【コメ無関税枠】を大幅に縮小する」ということである。日本への米国のささやかな譲歩ということであろう。

日本人にとっての最大の関心事は現行の日本車に課されている2.5%の輸入関税の撤廃であるがこれは現状維持ということで日本の要求は受け入れられなかった。トランプ大統領は日本車に25%関税を課す可能性を示唆して日本に対して脅しをかけていた。だが25%の関税は単なる脅しであり、実行される可能性は限りなくゼロ%に近かったのである。

膠着状態に入っている【米中貿易戦争】の現況を視れば簡単に理解できる。米国の大手自動車メーカー【フォード】の2017年の中國販売台数は156万6000台であったが、米中貿易戦争が勃発した2018年には【フォード】の中国販売台数は105万5000台と51万1000台激減した。この流れは今年に入っても継続していて2019年上半期(1~6月)の【フォード】の中国販売台数は前年同期の40万0443台から24万1000台とこれまた大幅に減少している。

【フォード】の2017年の世界販売台数は660万台7000台であったが翌18年には前年比9.5%減の598万2000台でその減少分の約82%は中国での販売減少分である。米国が日本やEUに高率の自動車関税を課せば年間150万台を販売しているEUでもEUの報復関税によって【フォード】の販売台数は100万台を割ることは必至であろう。【フォード】にとってドル箱市場であったEUと中国を失えば【フォード】身売りする事態に追い込まれかねないのである。

任期2年を超えたトランプ大統領の経済政策に対して日本でも著名なノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ・コロンビア大教授やポール・クルーグマン・ニューヨーク市立大学教授は批判的な見解を述べている。トランプ政権が実行した【大型企業減税】は、上場企業によって自社株買い取り資金や株主の配当金として支出され、従業員にはさほど還元されず、減税と関税という矛盾する政策によって米国の中間・低所得層の負担を増やしたというのが両教授の見立てである。

【日米物品貿易協定】の締結は安倍首相からトランプ大統領への再選の【前祝】という意味合いが強い。   (おわり)

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2019年8月26日 (月)

2020年の大統領選に向け実績作りに焦るトランプ大統領

【日米物品貿易協定】を成立させるために8月22日からワシントンで開催されていた茂木敏充経済再生相とロバート・ライトハイザー米通商代表部代表との4回目の閣僚級会合で米国側が求めていた米国産農産品の輸入関税税率の引き下げと日本側が求めていた自動車関税の撤廃に関して大筋の合意に達した。合意内容の詳細は判明していないが米国産の農産品の税率の引き下げ率は最高でも【TPP11】で合意された税率と同等である。日本側が求めた現行の米国が日本車に課している2.5%の関税の撤廃は先送りされた。

8月24~26日にフランス南西部の大西洋に面したスペイン国境の高級リゾート地の小都市ビアリッツでG7首脳会議が開かれ、その会期中の25日に日米首脳会談が行われ、終了後に共同記者会見が行われた。その席上で【日米物品貿易協定】協議に置いて大筋で合意に至ったと両首脳は発言した。首脳会談においては安倍首相が米国産、の飼料用トウモロコシ約250万トンを購入することを約束したとトランプ大統領が発表した。

トウモロコシの生産量では米国はブラジルと1,2位の座を争っている。トウモロコシの輸入量は永年、日本が世界1位であったがここ23年は中国が1位である。2015年の日本の【トウモロコシ】輸入量は1437万トン、そのうち飼料用トウモロコシの輸入量は986万トンでそのうち733万1000トンを米国から輸入した。

米国でトウモロコシの生産量が多いのは中西部のオハイオ州とアイオア州で、これら2つの州はラストベルト地帯(錆び付いた工業地帯)を形成していて2016年の大統領選ではトランプ大統領の誕生に一役買った州でもある。トランプ大統領再選の鍵を握っている州とも言える。それだけにトランプ大統領には日本の米国産飼料用【トウモロコシ】250万トン購入は朗報であり、実績として大統領選で利用できる約束でもある。

トランプ大統領はさらに26日には「中国政府から米中貿易交渉再開の申し入れがあった」と述べたが、ブルームバーグ通信によれば、中国外務省の耿爽報道官は26日、北京で開いた定例記者会見でトランプ米大統領が言及した電話による中国政府の米中貿易交渉再開の申し入れに関する情報はないとトランプ大統領の発言内容を否定した。

真相は藪の中であるが株価を釣り上げるためにトランプ大統領がフェイクニュースを流した可能性を否定できない。  (おわり)

 

 

 

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2019年8月25日 (日)

日米物品貿易協定協議大筋合意

4月に始まった【日米物品貿易協定】協議の茂木敏充経済再生相とロバート・ライトハイザー米国通商代表部代表による閣僚級会合は4月から開始され、6月までに3回の閣僚級協議が行われたが、日本の参議院選への影響に配慮して7月には協議は中断していた。4回目の閣僚級会合は8月22日に始まり、大筋合意に至ったので8月24日に協議は終了した。

トランプ米国大統領は就任以降、前任者のオバマ大統領の施策をことごとく否定、大統領就任直後にはオバマ政権が苦心して締結にまで漕ぎつけた【TPP(環太平洋連携協定】からの離脱を表明した。トランプ大統領は【TPP】を無効にして【TPP】参加国の11カ国と個別に米国に有利な【FTA】(自由貿易協定)を締結することを目論んだのである。ところが日本が他の参加10カ国に呼びかけて11カ国で構成される自由貿易協定【TPP11】を発足させ、昨年の末の12月30日に【TPP11】を発効させた。

日本は米国にとって重要な米国産農産品の輸出先である。特に米国産【牛肉】の最大の輸出先は日本であり、米国産【豚肉】も日本はメキシコに次ぐ輸入国である。2017年の米国産【牛肉】の冷蔵品を13万6793トン日本は輸入し、全輸入量の51%を米国産冷蔵品が占めた。米国産【牛肉】の冷凍品を10万2270トン輸入したが全輸入品の31%に該当する。

【TPP11】の発効により、今年の4月1日からカナダ産やオーストラリア産【牛肉の輸入関税】は26.5%となり、自由貿易協定を結んでいない米国産牛肉の関税は38.5%のままであるから、米国産【牛肉】の日本への輸出量は減少する可能性が高まったのである。

米中貿易戦争の勃発によって米国産大豆や牛肉、豚肉の中国の輸入量は激減したために、米国では農産物の在庫が積みあがっている。来年の大統領選を考慮すれば米国は農産物の在庫を減らさなければならない状況に追い込まれたのである。現時点で米国産農産物の大量の購入可能な国は日本しかないのである。トランプ大統領は米国の国内向けに日本に【TPP11】より低い関税率を飲ませるなどと強気な発言をしていたが日本が優位な立場に立っているのでそのような要求を日本政府に飲ませることは不可能である。

閣僚級協議で合意に達した内容は、米国の農産品に課す関税は【TPP11】と同率ということである。さらに日本が要求していた【自動車関税】の撤廃は米国は拒絶したので現行の関税率2.5%の維持である。日本メーカーに対する輸入関税率を引き上げることになれば今や自動車の最大の市場は中国であるので日本メーカーは米国への投資を減らし、中国への投資を増やすことになる。米国メーカーは米国での販売は微減であり、中国では大幅減である。米国メーカが国内投資の余力がない以上米国での販売台数が4割を占めている日本メーカーを米国から締め出すような高率の関税を課す選択は米国政府にはないであろう。

トランプ大統領は農業と自動車産業の雇用の増加を選挙戦中に約束していたが現時点では公約違反となっている。貿易戦争によって米国の自動車メーカーは中国での販売台数を大きく減らしている。その結果、トランプ大統領誕生の原動力となった農業と自動車産業の中心地の中西部でのトランプ支持が揺らいでいるのである。米国のためにも、世界のためにもトランプ大統領の再選を米国民は許してはならないのである。  (おわり)

 

 

 

 

 

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2019年6月21日 (金)

日米物品貿易協議で米国の要求を呑む以外に選択肢がない日本政府

日米物品貿易協議の閣僚級会合は茂木敏充経済再生相とロバート・ライトハイザー米通商代表部代表との間で数回行われているが日本のマスメディアの報道を散見する限り進展はない印象である。

今回の物品貿易協議の重要品目は【自動車】と【農産物】である。米国側の非公式の要求は2017年の対日貿易赤字約7兆円のうちおおよそ65%を占める輸出額4兆5600億円の自動車の輸出量(174万台)の削減と米国内での現地生産台数を増やすことであると言われている。

日本の米国への自動車輸出台数は2015年が160万台、16年が173万5000台、17年が約174万台、18年が172万台である。それに対して米国での現地生産台数は、2015年が384万7500台、16年が396万6400台、17年が376万5300台であった。初めて現地生産を開始した1985年の生産台数が29万6500台であったから12.5倍増えたことになる。

2016年から輸出台数が増加しているがSUVの販売が好調で現地生産が販売量に追い付かず輸出で急場を凌いでいるのが現状である。米国は自動車関税を現行の2.5%を10倍の25%に引き上げると日本を恫喝して米国の要求を貫徹する意向である。一応180日間関税引き上げを猶予するとは言っているが。日本政府には有効な対抗措置を用意できないので現地生産台数の増加を受け入れることになる可能性が高い。

経済産業省は自動車関連税制を改正して国内の自動車メーカーの税負担を軽くし、それを中国と同じように値引きの原資に充当させようという意図がある。高額の関税を負担するのは米国の日本車購入者であるからだ。

もう一つの【農産品】に関しては米国はTPP11の関税率と同等の税率の適用で決着される腹積もりであろう。トランプ大統領は国内向けにTPP11以下の関税率を要求しているが日本はTPP11の税率以下の税率の引き下げに応じることはあり得ない。米国を優遇してTPP11以下の税率を米国に対して容認すればTPP11は崩壊しかねないからだ。

米国は昨年、日本への牛肉輸出国のトップとなったが昨年末にTPP!!が発効したことによって今年はオーストラリアにその座を奪われる危機に瀕している。輸出1位の座を維持するにはTPP11の税率と同等の税率を米国は日本に認めさせる必要がある。税率引き下げ交渉が長引けば長引くほど米国産冷凍牛肉は日本で売れなくなる。日本政府は米国のこの弱みを突いて交渉を引き延ばし、自動車の輸出台数の削減数を最小に抑えるべきであろう。日本の雇用を守るために。   (おわり)

 

 

 

 

 

 

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2019年6月 9日 (日)

日本は日米物品貿易交渉協議の早期の解決を先送りすべきだ

【日米物品貿易交渉協議】の3回目の閣僚級会合が6月13日にワシントンで開かれる。出席者は日本側は茂木敏充経済再生担当相、米国側はロバート・ライトハイザー米通商代表部代表である。

米国のトランプ大統領は膨大な貿易赤字解消の切り札として昨年、米国への輸出が多い国・地域や商品に追加の輸入関税を課した。【追加関税】の導入の理由としてトランプ大統領は米国の安全保障を脅かすことを理由に挙げ、米国民に対しては関税を負担するのは輸出国であるという【フェイクニュース】流した。関税は輸入品の価格を押し上げるので輸入品を購入する米国民もその一部を負担せざるを得ないのである。

最初に関税を課された商品は鉄鋼とアルミニュウㇺで、追加関税率は10%であった。【追加関税】措置の恩恵を受けたのは鉄鋼価格が上昇した米国の鉄鋼メーカーである。一芳、鉄鋼を大量に使用する自動車は鉄鋼価格の高騰によって製造原価が上昇し、さらに米国の【追加関税】に対して中国は米国からの自動車などの一部の輸入品に報復関税25%を課したために米国産の自動車には中国の現行の輸入関税15%に25%が上乗せされたために40%になった。

ドイツの高級車メーカーの【ダイムラー】(メルセデス・ベンツを製造)と【BMW】は米国内で製造した車を中国に輸出しているために40%の関税と鉄鋼価格の上昇によって製造原価が14%上がったことから中国での販売価格は54%上昇した。それに対してトヨタの高級車【レクサス】は日本国内で製造して中国に輸出したので製造原価は据え置き、輸入関税は15%なので米国産のドイツの高級車とは39%の開きが出た。その結果ドイツの【ダイムラー】や【BMW】は中国向けの車の製造は米国以外での製造に切り替えた。

中国に製造拠点を設ている【GM】や【フォード】、【クライスラー】も米国から送られる部品に関税が25%課されるので製造原価が上昇し、さらに米中貿易戦争の影響で米国車は中国ではボイコットされ販売台数が大幅に減少した。その結果、米国の【GM】や【フォード】は雇用の削減を発表している。トランプ大統領の追加関税策は裏目に出たのである。その上、鉄鋼製品への【追加関税】は米国への輸出が多いカナダ、メキシコ、EUの反発を呼び、米国産の農産品に報復関税が課されることになった。米国産の農産品は競争力を低下させ、輸出が減少して米国の農家は大きな打撃を受けた。

自動車産業と農業の生産が盛んな地域は米国の中西部と呼ばれる地域で【ラストベルト】(錆び付いた工業地帯】と【コーンベルト】(農業地帯)が重複している地域でもある。この地域でトランプ大統領は大統領選で勝利を収めたことによって当選したのである。関税政策をこのまま続行すればトランプ大統領の再選は覚束なくなるのでトランプ大統領は5月17日にカナダとメキシコに対する【鉄鋼・アルミニュウㇺ】の関税引き上げを停止した。さらに翌18日には【EU】と【日本】に対する【自動車関税引き上げ】の判断を180日先送りにした。つまりトランプ大統領は通商政策を転換したのである。

【日米物品貿易交渉協議】で日本の弱点は【自動車関税率の引き上げ】をブラフの材料にされることである。その懸念がなくなった以上米国産の農産品の輸入関税率を【TPP11】と同水準の税率以下に引き下げることを要求する米国に【ノー】を言える立場になった。現在、米国産牛肉の輸入関税は38.5%であり、【TPP11】加盟国のカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、その他【EU]からの輸入牛肉の関税は26.6%であるから10%以上の開きがある。この状態が長引けば米国産牛肉は日本への輸出量は減少することになる。そのためにトランプ大統領は焦っている。交渉の主導権は日本が掌握したのである。日本は安易な妥協をする必要はない。   (おわり)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2019年5月28日 (火)

トランプ大統領の日米貿易協議関する発言はアメリカ選挙民に対する発言にしか過ぎない

【令和時代】の初の国賓として来日したドナルド・トランプ大統領は4日間の日程を終えて5月28日午後1時過ぎに大統領専用機で帰国の途に就いた。

トランプ大統領は5月27日の日米首脳会談後の共同記者会見で【日米貿易協議】に関して「日本とアメリカは公正と互恵を原則として、経済関係の改善に向けて努力している。現在、われわれは双方にとって利益のある貿易協定の合意に向け、交渉を進めている。アメリカの目標は日本との間の貿易赤字を削減すること、アメリカからの輸出を促進するために貿易障壁を取り除くことだ。貿易交渉についてはまもなく何らかの発表ができるだろう」と述べた。

貿易協議の課題の一つ米国産の農産物に対して日本市場を開放することについて「TPPで合意した上限か」という共同記者会見に出席した一人の記者の質問に対してトランプ大統領は「TPPは私とは全く関係がない。アメリカはTPPに拘束されない。」と応えた。トランプ大統領はTPP離脱を決断したのであるから当然と言えば当然の発言である。

トランプ大統領にとって農産物の生産者は大切な支持母体である。昨年7月に始まった米中貿易戦争によって中国は報復措置として米国産大豆に25%の報復関税を課した。米国の大豆輸出量の3分の一を輸入する中国は例年の米国産大豆の輸入量を半減させた。約1600万トンの米国産大豆は輸出先を失い、在庫が積み上がり、その結果、米国産大豆価格は年初の1ブッシェル=10ドルから8ドルに値下がりして大豆生産農家は大きな被害を被り、倒産したり、廃業したりという農家が続出した。2016年の大統領選でトランプ大統領に投票した中西部のコーンベルト(穀倉地帯)の農家の間には「このままトランプ大統領支持を続けてもいいのか」という動揺が走っていると言われている。

こうした農家の支持を繋ぎ止めるためにはトランプ大統領はすでに発効している【TPP11】加盟国の関税率よりも低い関税率を日本から獲得したいのである。しかしながら米国を特別待遇することになる【TPP11】の税率よりも低い税率を米国に適用することには日本は簡単には応じられない。日本が主導的な役割を演じて【TPP11]を発足させたので国際信義に反するからだ。

トランプ大統領は「8月には(貿易協議に関して)何らかの発表ができる」と発言しているが日本側はこの発言に関しては何の反応も示していない。発言できるようなことは何もないからだ。換言すれば現時点では何も決まっていないということであろう、来年の大統領選のために選挙運動開始期間に突入する10月までにトランプ大統領は日米貿易協議の成果が欲しいので焦っているのであろう。   (おわり)

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2019年5月26日 (日)

日米物品貿易協定交渉で日本車の輸入関税引き上げを取引材料に使えなくなったトランプ大統領

【令和時代の幕開け】の最初の国賓としてトランプ大統領が7月25日来日した。来日の主たる目的は新天皇のご即位に関して祝辞を述べるためであり、【日米物品貿易協定交渉】を促進するためではなさそうである。トランプ大統領に随行して来日したライトハイザー米通商代表部代表と茂木敏充経済再生担当相の【閣僚級会合】が25日開かれたが貿易交渉が進展したわけではない。

政治家としての経験が絶無のトランプ大統領は、【政治は妥協の産物】という政治の原則を理解していない。自らの主張を圧倒的な米国の軍事力と経済力を背景に交渉相手国の意向を無視して押し通すという傾向が強い。あらゆる可能性に配慮した上で交渉をするわけではなく、場当たり的な対応で交渉を成功させようとしているとしかはた目には見えない。

その例の一つがTPPからの離脱である。TTPから離脱して米国は日本と二国間のFTA(自由貿易協定 現在は日本側は物品貿易協定という名称を使用している)によって農産物の関税を引き下げる戦略を立てていた。ところが日本は米国抜きのTPP11を結成して関税自由化への道筋を付けた。その結果、日本にはTPP11加盟国でFTAを締結しているオーストラリア以外のカナダやニュージーランド、今年の2月1日から発効した日欧EPA(経済連携協定)によって欧州からも安い牛肉が輸入されるようになった。米国の食肉業者は日本市場でシェア(市場占有率)を落としている。

ところで、トランプ大統領が誕生した2016年の米国の対日貿易赤字額は689億ドル、大統領に就任した17年の貿易赤字額が微減の688億ドル、昨年が前年比10.4%減の676億3000万ドル(約7兆6000億円)であった。米国の貿易赤字の最大の要因は日本からの自動車と自動車部品輸入である。18年の自動車の輸入台数は174万6408台(乗用車172万1225台、バス・トラック2万2193台)。それに2輪車と自動車部品が加わるとその金額の総計は5兆9959億9900万円、米国からの輸入車は2万台程度でその金額は887億2800万円、それに自動車部品代を加えると輸入代金の総額は1563億2700万円、米国の自動車関連の赤字は5兆4261億3500万円である。米国の貿易赤字の71.4%が自動車関連の赤字となる。トランプ大統領が日本からの乗用車の輸入に歯止めをかけたくなるのもむべなるかななのである。

そこでトランプ大統領は日本の自動車関税を現行の2.5%から10倍の25%に引き上げると日本にブラフをかけたのである。この大幅な関税引き上げに対して消費者のである米国民が反発した。米国では日本車の評価は米国車よりも高い。2017年の米国市場での日本車の販売台数は671万台で全販売台数の38.9%を占めていた。2018年の販売台数は662万台で市場占有率は38.3%である。トランプ大統領はポピュリスト(大衆迎合主義者)であるから米国の日本車ファンの意向を無視できない。そのためにトランプ大統領は日本車の大幅関税引き上げを諦めざるを得ないという憶測が米国内では流れている。

参院選後にならないと【日米物品貿易協定交渉】の進展は見えてこないであろう。   (おわり)

 

 

 

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2018年9月28日 (金)

日米首脳会談で自動車関税協議を先送りに成功した安倍首相

国連総会出席のためニューヨークを訪れていた安倍晋三首相は米国東部時間9月26日午後、ドナルド・トランプ米大統領との日米首脳会談を行い、共同声明を発表した。
日米両首脳は【日米共同声明】の中で、「日米間の貿易・投資をさらに拡大し、世界経済の自由で公正かつ開かれた発展を実現することの決意を再確認した」と述べている。。
上述の内容を踏まえた上で、日米両国は、国内で必要な調整を終えたのちに、「日米物品貿易協定」=TAG(Trade Agreement on Goods)の締結に向けて、農産品などの関税を含む2国間交渉を開始することで合意したとしている。
また「日米両国は信頼関係に基づき議論を行い、協議が行われている間、共同声明の精神に反する行動を取らない」などとしていて、これを踏まえて、会談で両首脳は、交渉の継続中に、アメリカが検討する自動車などの関税引き上げ措置は発動しないことを確認した。」とした。
その上、「交渉にあたってはお互いの立場を尊重する」としたうえで「日本としては、農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許(じょうきょ)内容が最大限である」とされ、日本側は、農林水産品をめぐって、TPP協定など過去に締結した経済連携協定の水準を上回る関税の引き下げには応じないことも盛り込まれている。
【TAG】は複数国の間でモノの輸出入にかかる関税の引き下げや撤廃について定める協定で、農産品や工業用品など幅広い貿易品目が交渉対象になる。
9月26日の日米首脳会談で決定した事項は交渉の枠組みだけで閣僚級の【TAG】の交渉の協議が始まるのは米国の中間選挙(11月6日施行)の後になるであろう。米国が首脳会談で自動車関税に触れずに農産品の関税を優先したのは中間選挙対策という側面がある。
米国の穀倉地帯はウイスコンシン、オハイオ、インディアナ、アイオワ、ネブラスカ、カンザスなど米国中央部北側の12の州を集合的に呼ぶ【中西部】地域である。この12の州のうち5大湖周辺のインディアナs、オハイオ,ミシガン、ウイスコンシン、、イリノイの5州は製造業(鉄鋼業や自動車産業)が衰退した地域・【ラストベルト】にも含まれている。
今回の【米中貿易戦争】の影響はまず大豆、トウモロコシ、豚肉、牛肉などの生産地の【中西部】を直撃している。中西部は伝統的に共和党を支持してきた。2016年の大統領選挙でもトランプ大統領の票田であった。ところが【貿易戦争】で世界の食糧消費国の中国の米国農産品の輸入が減って農業従事者は損害を被って【トランプ離れ】の動きか顕在化し、その結果、中間選挙で共和党下院議員の支持率が低迷している。
日本はトウモロコシ、牛肉、豚肉などの米国農産品輸入大国である。来年からTPP11が発効の見通しなのでTPP11が発効すれば米国産の牛肉はオーストラリア産の牛肉に価格の面で太刀打ちできなくなる。そこで米国としては日本と2国間の【TAG】交渉でTPP11の関税率よりも低い関税率を日本に認めさせたいのである。
中間選挙で共和党が勝利すれば米国は自動車関税をちらつかせて日本に米国農産品の税率の引き下げを強要してくると思われる。今回の日米首脳会談の成果は自動車関税を先送りしただけで具体的には何もないのである。   (おわり)


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