カテゴリー「20日米貿易問題」の記事

2019年6月21日 (金)

日米物品貿易協議で米国の要求を呑む以外に選択肢がない日本政府

日米物品貿易協議の閣僚級会合は茂木敏充経済再生相とロバート・ライトハイザー米通商代表部代表との間で数回行われているが日本のマスメディアの報道を散見する限り進展はない印象である。

今回の物品貿易協議の重要品目は【自動車】と【農産物】である。米国側の非公式の要求は2017年の対日貿易赤字約7兆円のうちおおよそ65%を占める輸出額4兆5600億円の自動車の輸出量(174万台)の削減と米国内での現地生産台数を増やすことであると言われている。

日本の米国への自動車輸出台数は2015年が160万台、16年が173万5000台、17年が約174万台、18年が172万台である。それに対して米国での現地生産台数は、2015年が384万7500台、16年が396万6400台、17年が376万5300台であった。初めて現地生産を開始した1985年の生産台数が29万6500台であったから12.5倍増えたことになる。

2016年から輸出台数が増加しているがSUVの販売が好調で現地生産が販売量に追い付かず輸出で急場を凌いでいるのが現状である。米国は自動車関税を現行の2.5%を10倍の25%に引き上げると日本を恫喝して米国の要求を貫徹する意向である。一応180日間関税引き上げを猶予するとは言っているが。日本政府には有効な対抗措置を用意できないので現地生産台数の増加を受け入れることになる可能性が高い。

経済産業省は自動車関連税制を改正して国内の自動車メーカーの税負担を軽くし、それを中国と同じように値引きの原資に充当させようという意図がある。高額の関税を負担するのは米国の日本車購入者であるからだ。

もう一つの【農産品】に関しては米国はTPP11の関税率と同等の税率の適用で決着される腹積もりであろう。トランプ大統領は国内向けにTPP11以下の関税率を要求しているが日本はTPP11の税率以下の税率の引き下げに応じることはあり得ない。米国を優遇してTPP11以下の税率を米国に対して容認すればTPP11は崩壊しかねないからだ。

米国は昨年、日本への牛肉輸出国のトップとなったが昨年末にTPP!!が発効したことによって今年はオーストラリアにその座を奪われる危機に瀕している。輸出1位の座を維持するにはTPP11の税率と同等の税率を米国は日本に認めさせる必要がある。税率引き下げ交渉が長引けば長引くほど米国産冷凍牛肉は日本で売れなくなる。日本政府は米国のこの弱みを突いて交渉を引き延ばし、自動車の輸出台数の削減数を最小に抑えるべきであろう。日本の雇用を守るために。   (おわり)

 

 

 

 

 

 

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2019年6月 9日 (日)

日本は日米物品貿易交渉協議の早期の解決を先送りすべきだ

【日米物品貿易交渉協議】の3回目の閣僚級会合が6月13日にワシントンで開かれる。出席者は日本側は茂木敏充経済再生担当相、米国側はロバート・ライトハイザー米通商代表部代表である。

米国のトランプ大統領は膨大な貿易赤字解消の切り札として昨年、米国への輸出が多い国・地域や商品に追加の輸入関税を課した。【追加関税】の導入の理由としてトランプ大統領は米国の安全保障を脅かすことを理由に挙げ、米国民に対しては関税を負担するのは輸出国であるという【フェイクニュース】流した。関税は輸入品の価格を押し上げるので輸入品を購入する米国民もその一部を負担せざるを得ないのである。

最初に関税を課された商品は鉄鋼とアルミニュウㇺで、追加関税率は10%であった。【追加関税】措置の恩恵を受けたのは鉄鋼価格が上昇した米国の鉄鋼メーカーである。一芳、鉄鋼を大量に使用する自動車は鉄鋼価格の高騰によって製造原価が上昇し、さらに米国の【追加関税】に対して中国は米国からの自動車などの一部の輸入品に報復関税25%を課したために米国産の自動車には中国の現行の輸入関税15%に25%が上乗せされたために40%になった。

ドイツの高級車メーカーの【ダイムラー】(メルセデス・ベンツを製造)と【BMW】は米国内で製造した車を中国に輸出しているために40%の関税と鉄鋼価格の上昇によって製造原価が14%上がったことから中国での販売価格は54%上昇した。それに対してトヨタの高級車【レクサス】は日本国内で製造して中国に輸出したので製造原価は据え置き、輸入関税は15%なので米国産のドイツの高級車とは39%の開きが出た。その結果ドイツの【ダイムラー】や【BMW】は中国向けの車の製造は米国以外での製造に切り替えた。

中国に製造拠点を設ている【GM】や【フォード】、【クライスラー】も米国から送られる部品に関税が25%課されるので製造原価が上昇し、さらに米中貿易戦争の影響で米国車は中国ではボイコットされ販売台数が大幅に減少した。その結果、米国の【GM】や【フォード】は雇用の削減を発表している。トランプ大統領の追加関税策は裏目に出たのである。その上、鉄鋼製品への【追加関税】は米国への輸出が多いカナダ、メキシコ、EUの反発を呼び、米国産の農産品に報復関税が課されることになった。米国産の農産品は競争力を低下させ、輸出が減少して米国の農家は大きな打撃を受けた。

自動車産業と農業の生産が盛んな地域は米国の中西部と呼ばれる地域で【ラストベルト】(錆び付いた工業地帯】と【コーンベルト】(農業地帯)が重複している地域でもある。この地域でトランプ大統領は大統領選で勝利を収めたことによって当選したのである。関税政策をこのまま続行すればトランプ大統領の再選は覚束なくなるのでトランプ大統領は5月17日にカナダとメキシコに対する【鉄鋼・アルミニュウㇺ】の関税引き上げを停止した。さらに翌18日には【EU】と【日本】に対する【自動車関税引き上げ】の判断を180日先送りにした。つまりトランプ大統領は通商政策を転換したのである。

【日米物品貿易交渉協議】で日本の弱点は【自動車関税率の引き上げ】をブラフの材料にされることである。その懸念がなくなった以上米国産の農産品の輸入関税率を【TPP11】と同水準の税率以下に引き下げることを要求する米国に【ノー】を言える立場になった。現在、米国産牛肉の輸入関税は38.5%であり、【TPP11】加盟国のカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、その他【EU]からの輸入牛肉の関税は26.6%であるから10%以上の開きがある。この状態が長引けば米国産牛肉は日本への輸出量は減少することになる。そのためにトランプ大統領は焦っている。交渉の主導権は日本が掌握したのである。日本は安易な妥協をする必要はない。   (おわり)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2019年5月28日 (火)

トランプ大統領の日米貿易協議関する発言はアメリカ選挙民に対する発言にしか過ぎない

【令和時代】の初の国賓として来日したドナルド・トランプ大統領は4日間の日程を終えて5月28日午後1時過ぎに大統領専用機で帰国の途に就いた。

トランプ大統領は5月27日の日米首脳会談後の共同記者会見で【日米貿易協議】に関して「日本とアメリカは公正と互恵を原則として、経済関係の改善に向けて努力している。現在、われわれは双方にとって利益のある貿易協定の合意に向け、交渉を進めている。アメリカの目標は日本との間の貿易赤字を削減すること、アメリカからの輸出を促進するために貿易障壁を取り除くことだ。貿易交渉についてはまもなく何らかの発表ができるだろう」と述べた。

貿易協議の課題の一つ米国産の農産物に対して日本市場を開放することについて「TPPで合意した上限か」という共同記者会見に出席した一人の記者の質問に対してトランプ大統領は「TPPは私とは全く関係がない。アメリカはTPPに拘束されない。」と応えた。トランプ大統領はTPP離脱を決断したのであるから当然と言えば当然の発言である。

トランプ大統領にとって農産物の生産者は大切な支持母体である。昨年7月に始まった米中貿易戦争によって中国は報復措置として米国産大豆に25%の報復関税を課した。米国の大豆輸出量の3分の一を輸入する中国は例年の米国産大豆の輸入量を半減させた。約1600万トンの米国産大豆は輸出先を失い、在庫が積み上がり、その結果、米国産大豆価格は年初の1ブッシェル=10ドルから8ドルに値下がりして大豆生産農家は大きな被害を被り、倒産したり、廃業したりという農家が続出した。2016年の大統領選でトランプ大統領に投票した中西部のコーンベルト(穀倉地帯)の農家の間には「このままトランプ大統領支持を続けてもいいのか」という動揺が走っていると言われている。

こうした農家の支持を繋ぎ止めるためにはトランプ大統領はすでに発効している【TPP11】加盟国の関税率よりも低い関税率を日本から獲得したいのである。しかしながら米国を特別待遇することになる【TPP11】の税率よりも低い税率を米国に適用することには日本は簡単には応じられない。日本が主導的な役割を演じて【TPP11]を発足させたので国際信義に反するからだ。

トランプ大統領は「8月には(貿易協議に関して)何らかの発表ができる」と発言しているが日本側はこの発言に関しては何の反応も示していない。発言できるようなことは何もないからだ。換言すれば現時点では何も決まっていないということであろう、来年の大統領選のために選挙運動開始期間に突入する10月までにトランプ大統領は日米貿易協議の成果が欲しいので焦っているのであろう。   (おわり)

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2019年5月26日 (日)

日米物品貿易協定交渉で日本車の輸入関税引き上げを取引材料に使えなくなったトランプ大統領

【令和時代の幕開け】の最初の国賓としてトランプ大統領が7月25日来日した。来日の主たる目的は新天皇のご即位に関して祝辞を述べるためであり、【日米物品貿易協定交渉】を促進するためではなさそうである。トランプ大統領に随行して来日したライトハイザー米通商代表部代表と茂木敏充経済再生担当相の【閣僚級会合】が25日開かれたが貿易交渉が進展したわけではない。

政治家としての経験が絶無のトランプ大統領は、【政治は妥協の産物】という政治の原則を理解していない。自らの主張を圧倒的な米国の軍事力と経済力を背景に交渉相手国の意向を無視して押し通すという傾向が強い。あらゆる可能性に配慮した上で交渉をするわけではなく、場当たり的な対応で交渉を成功させようとしているとしかはた目には見えない。

その例の一つがTPPからの離脱である。TTPから離脱して米国は日本と二国間のFTA(自由貿易協定 現在は日本側は物品貿易協定という名称を使用している)によって農産物の関税を引き下げる戦略を立てていた。ところが日本は米国抜きのTPP11を結成して関税自由化への道筋を付けた。その結果、日本にはTPP11加盟国でFTAを締結しているオーストラリア以外のカナダやニュージーランド、今年の2月1日から発効した日欧EPA(経済連携協定)によって欧州からも安い牛肉が輸入されるようになった。米国の食肉業者は日本市場でシェア(市場占有率)を落としている。

ところで、トランプ大統領が誕生した2016年の米国の対日貿易赤字額は689億ドル、大統領に就任した17年の貿易赤字額が微減の688億ドル、昨年が前年比10.4%減の676億3000万ドル(約7兆6000億円)であった。米国の貿易赤字の最大の要因は日本からの自動車と自動車部品輸入である。18年の自動車の輸入台数は174万6408台(乗用車172万1225台、バス・トラック2万2193台)。それに2輪車と自動車部品が加わるとその金額の総計は5兆9959億9900万円、米国からの輸入車は2万台程度でその金額は887億2800万円、それに自動車部品代を加えると輸入代金の総額は1563億2700万円、米国の自動車関連の赤字は5兆4261億3500万円である。米国の貿易赤字の71.4%が自動車関連の赤字となる。トランプ大統領が日本からの乗用車の輸入に歯止めをかけたくなるのもむべなるかななのである。

そこでトランプ大統領は日本の自動車関税を現行の2.5%から10倍の25%に引き上げると日本にブラフをかけたのである。この大幅な関税引き上げに対して消費者のである米国民が反発した。米国では日本車の評価は米国車よりも高い。2017年の米国市場での日本車の販売台数は671万台で全販売台数の38.9%を占めていた。2018年の販売台数は662万台で市場占有率は38.3%である。トランプ大統領はポピュリスト(大衆迎合主義者)であるから米国の日本車ファンの意向を無視できない。そのためにトランプ大統領は日本車の大幅関税引き上げを諦めざるを得ないという憶測が米国内では流れている。

参院選後にならないと【日米物品貿易協定交渉】の進展は見えてこないであろう。   (おわり)

 

 

 

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2018年9月28日 (金)

日米首脳会談で自動車関税協議を先送りに成功した安倍首相

国連総会出席のためニューヨークを訪れていた安倍晋三首相は米国東部時間9月26日午後、ドナルド・トランプ米大統領との日米首脳会談を行い、共同声明を発表した。
日米両首脳は【日米共同声明】の中で、「日米間の貿易・投資をさらに拡大し、世界経済の自由で公正かつ開かれた発展を実現することの決意を再確認した」と述べている。。
上述の内容を踏まえた上で、日米両国は、国内で必要な調整を終えたのちに、「日米物品貿易協定」=TAG(Trade Agreement on Goods)の締結に向けて、農産品などの関税を含む2国間交渉を開始することで合意したとしている。
また「日米両国は信頼関係に基づき議論を行い、協議が行われている間、共同声明の精神に反する行動を取らない」などとしていて、これを踏まえて、会談で両首脳は、交渉の継続中に、アメリカが検討する自動車などの関税引き上げ措置は発動しないことを確認した。」とした。
その上、「交渉にあたってはお互いの立場を尊重する」としたうえで「日本としては、農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許(じょうきょ)内容が最大限である」とされ、日本側は、農林水産品をめぐって、TPP協定など過去に締結した経済連携協定の水準を上回る関税の引き下げには応じないことも盛り込まれている。
【TAG】は複数国の間でモノの輸出入にかかる関税の引き下げや撤廃について定める協定で、農産品や工業用品など幅広い貿易品目が交渉対象になる。
9月26日の日米首脳会談で決定した事項は交渉の枠組みだけで閣僚級の【TAG】の交渉の協議が始まるのは米国の中間選挙(11月6日施行)の後になるであろう。米国が首脳会談で自動車関税に触れずに農産品の関税を優先したのは中間選挙対策という側面がある。
米国の穀倉地帯はウイスコンシン、オハイオ、インディアナ、アイオワ、ネブラスカ、カンザスなど米国中央部北側の12の州を集合的に呼ぶ【中西部】地域である。この12の州のうち5大湖周辺のインディアナs、オハイオ,ミシガン、ウイスコンシン、、イリノイの5州は製造業(鉄鋼業や自動車産業)が衰退した地域・【ラストベルト】にも含まれている。
今回の【米中貿易戦争】の影響はまず大豆、トウモロコシ、豚肉、牛肉などの生産地の【中西部】を直撃している。中西部は伝統的に共和党を支持してきた。2016年の大統領選挙でもトランプ大統領の票田であった。ところが【貿易戦争】で世界の食糧消費国の中国の米国農産品の輸入が減って農業従事者は損害を被って【トランプ離れ】の動きか顕在化し、その結果、中間選挙で共和党下院議員の支持率が低迷している。
日本はトウモロコシ、牛肉、豚肉などの米国農産品輸入大国である。来年からTPP11が発効の見通しなのでTPP11が発効すれば米国産の牛肉はオーストラリア産の牛肉に価格の面で太刀打ちできなくなる。そこで米国としては日本と2国間の【TAG】交渉でTPP11の関税率よりも低い関税率を日本に認めさせたいのである。
中間選挙で共和党が勝利すれば米国は自動車関税をちらつかせて日本に米国農産品の税率の引き下げを強要してくると思われる。今回の日米首脳会談の成果は自動車関税を先送りしただけで具体的には何もないのである。   (おわり)


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