カテゴリー「14国際問題」の記事

2019年6月14日 (金)

ホルムズ海峡入り口のオマーン湾で起こったタンカー襲撃事件の犯人は誰なのか

中東産原油輸送の最重要拠点であるホルムズ海峡入り口付近のオマーン湾で日本関連の積荷を積んだ2隻のタンカーが昨日(6月13日)午前11時45分頃砲撃された。砲撃された2隻のうち詳細が判明している1隻のケミカルタンカータンカーは【三菱ガス化学】が50%出資している海運会社【国華産業】(東京都千代田区)が運行しているパナマ船籍の【コクカ・クレージャス】である。最初の砲撃で【コクカ・クレージャス】は船体左側後部のエンジンルームに被弾して火災が発生、二酸化炭素を注入して消火に成功したが3時間後に船体左側中央部に再び被弾したために船長は身の危険を察知して乗組員全員(船長を含め21人全員がフィリピン人)に退船を命じ、救命ボートで脱出したという。その後、乗組員全員がオランダからUAE(アラブ首長国連邦)に向かう船に救出された。

可燃性のメタノール2万5000トンを積載していたケ【コクカ・クレージャス】はッ可燃性のメタノールに引火すれば爆発の危険性があることから船長は退船を決断したのである、【コクカ・クレージャス】は6月10日にサウジアラビアを出港し、タイを経由してシンガポールに到着予定であった。

この砲撃事件に関してボルドン米大統領補佐官はほぼ確実にイランだ」と指摘してイランを非難しているがボルドン補佐官は根拠を示していない。イランは事件への関与を否定している。国連の経済制裁を受けているイランが安倍首相がイランを訪問している時期に砲撃事件に関与するとは考えにくい。さらなる経済制裁を課されることが想定できるからである。

今回の砲撃事件に関してイランの対テロ作戦などを担当している【イラン革命防衛隊】のホセイン元司令官は産経新聞の取材に対して「安倍晋三首相のイラン訪問を反イラン宣伝に利用する狙いで行われたものでテロ組織が関与した」可能性があるという見解を示した。さらに米・イランの軍事的緊張を高める目的でイラン南東部の反政府組織【ジェイシ・アドリやその他イランと敵対関係にあるイスラム教スンニ派過激派組織【イスラム国】や国際的テロ組織【アルカイーダ】系の関与の可能性も指摘した。

いずれにしろ今回の日本タンカー砲撃事件は米国が国連に対して更なるイランへの経済制裁を提案する口実を与えたことになる。その上、原油価格の高騰という願ってもない副産物を米国は手に入れた。

しかしながら砲撃事件の真相はまだ解明されていない。   (おわり)

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2019年5月16日 (木)

日本の新幹線技術が世界を席巻する試金石となる英国高速鉄道HS2の車両入札問題

英国の鉄道は日本とは異なり上下分離方式で運営されている。【上下分離方式】とは【上】は列車運営会社と【下】は線路などの鉄道インフラ管理会社を切り離す方式である。英国では現在、【下】は国が保有する【ネットワーク・レール】が鉄道インフラの保有・管理をしていて、【上】は2017年2月の時点で25社ある旅客鉄道運送業者(TOC)が列車の運行を行っている。さらに英国の鉄道運営が複雑なのは【鉄道車両】を保有する業者が別に存在していることである。その結果、【TOC】は【ネットワーク・レール社】と車両保有会社にリース料を支払っている。その上、ことを複雑にしているのは鉄道車両の発注権は特例で英国運輸省が掌握していることだ。

日本を代表する総合電機メーカー【日立】は鉄道車両製造事業で海外進出を果たすための橋頭保を確保しようと英国に照準を合わせて営業活動を展開し、その努力の集大成として老朽化した英国【都市間高速鉄道】の車両の切り替え時に888両の車両を受注した。【日立】の受注の決め手となったのが英国内に鉄道車両工場を建設すという提案である。工場は英国北東部のニュートンエイクリフに建設され、2015年1月から稼働を開始した。現地採用の英国人の労働者は当初900人であったが現在は1000人に増えているという。

【日立】の高速車両の納入車両数はロンドン・パディントン駅とウェールズ南部地方を結ぶグレートウェスタン本線を運営しているグレートウェスタン鉄道に369両、英国の主要鉄道幹線の一つイーストコースト本線(東海岸本線)を運営するヴァージン鉄道イーストコースト社に497両である。【グレートウェストン鉄道】に納入された車両が営業運転を開始したのは2017年10月16日で、初日にエアコンからの水漏れ事故などで列車の到着時間が40分遅れて先行きが心配されたがその後問題は一つも起こっていない。【ヴァージン鉄道】に納入された車両の営業運転の開始日は昨日(5月15日)であったが問題は発生していない。

【日立】の次のターゲットは今年中に入札が行われる英国の本格的な高速鉄道に投入される最高時速400kmの高速車両である、新規の【ハイスピード2】(HS2)の路線はロンドン―バーミンガム(英国第2の都市)を結ぶ。現在の在来線のウェストコースト本線を利用するればロンドンーバーミンガム間の所要時間は1時間24分であるが【HS2]では45分である。

この入札に応札すると思われるのは世界一の車両製造メーカーの【中国中車】、フランスのアルストムと合併して世界第2位となったドイツの【シーメンス】それに【日立】などであるが、この3社が落札社の有力候補である。【日立】が落札できれば日本の高速鉄道の技術が評価されたことになり、インドの新幹線建設の受注よりも国際的な影響は大きい。

地球温暖化の防止の観点から鉄道輸送の長所が再評価されている時代である。【日立】が受注できるかどうかは日本の新幹線技術が世界を席巻する試金石となる可能性が高い。

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2019年5月 7日 (火)

英国統一地方選で与党保守党惨敗、EU離脱の是非を巡る再度の国民投票となるのか

英国議会は【EU離脱】(ブレグジット)実施に関して与野党の対立が激化し、3月29日のブレグジット実施に踏み切れず、テリーズ・メイ首相はEU首脳との協議でブレグジットの実施を11月1日まで延期するという時間稼ぎに成功した。しかしながら国民の眼から見れば議会の混迷ぶりは目を覆いたくなるような惨状で国民の怒りの矛先は今年に入ってからは英国の2大政党の与党【保守党】と野党第一党の【労働党】に向けられていた。

そうした状況下で4年に一度の英国の統一地方選挙が5月2日に実施された。今回の改選の対象となったのは保守党の牙城の【イングランド】地方の248の地方議会と6自治体の首長、【アイルランド】地方の11の地方議会で、合計259の地方議会の改選議席数は約8900であった。イングランドの地方議会はその誕生の歴史から日本の地方議会とは異なり、強い自治権を保有し、中央政党と直結している。公明党と共産党、立憲民主党以外の日本の地方議員の多くが選挙対策上、政党色を薄めれるために無所属を便宜的に標榜するが、英国の地方議員はそうした姑息な手法は駆使しない。

今回の統一地方選挙では【ブレグジット】に関しては、保守党はブレグジットの実現、労働党は曖昧、野党第二党の【自由民主党】は親EU派であることから再度の国民投票の実施(ブレグジットの見直し)、環境政党の【緑の党】も再度の国民投票を主張していた。労働党が【ブレグジット】に対して曖昧な態度を取り続けているのは、ジェレミー・コービン党首の本音は【ブレグジット】であるが党内の多数派がEU残留を支持しているからだ。

選挙結果は、、保守党が改選前の議席の25%をに該当する1330議席を失うという大惨敗を喫し、獲得議席は3542議席であった。【ブレグジット】に優柔不断の姿勢を変えなかった【労働党】は84議席減の2021議席、EU残留派の【自由民主党】は再度の国民投票を選挙戦で訴え、704議席増の1351議席を獲得し、議席を倍増させた。【緑の党】も選挙戦で再度の国民投票を主張し、議席を194議席増やして、これまた議席を改選前より倍増させた。

英国の世論は2年前とは明らかに変化したのである。2年前には国民の過半数は英国の自治の回復を望んで【ブレグジット】を選択したのであるが、ブレグジットのもたらすデメリットに気付いた有権者の大半は【再度の国民投票】を選択したことになる。

この有権者の選択に対して【保守党】のブレグジット強硬派はどのような対応をするのであろうか。5月23~26日に行われる【欧州議会選挙】の結果が強硬派に影響を与えるに違いない。世論調査では反EU派が議席の3分の一を占める可能性が高いという結果が出ている。世論調査の結果通りとなればブレグジット強硬派は、統一地方選で示された民意を無視して合意なきブレグジットに突き進むかもしれない。

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2019年4月14日 (日)

混迷を極める英国のEU離脱

欧州理事会(EU首脳会議)のドナルド・トゥスク常任議長(ポーランド元首相)は4月11日未明、4月10日ブリュッセル(ベルギ―)で開かれた特別欧州理事会で英国のEU離脱を条件付きで最長10月31日まで再延長することで合意したと発表した。

【離脱の再延長の条件】は「①離脱日は、英国およびEUが離脱協定を完了した翌月の1日、もしくは11月1日のいずれか早い日とする。②英国で離脱協定が5月22日までに批准されない場合、英国はEU法に従い、欧州議会選挙を実施する義務を負う。英国がこの義務を履行しなかった場合、離脱日の延期は5月31日までとする。」などの4つの条件である。

英国の【EU離脱】が決定したのは2016年6月23日に実施された英国の【EU離脱】の是非を問う【国民投票】の結果であった。【国民投票】は登録有権者4650万1241人、投票率72.21%であったから有効投票数は3357万8016票で、離脱賛成の票は1740万0742票、反対票(EU残量)は1614万1241票で、離脱賛成票が125万9501票反対票を上回った結果EU離脱が決定した。

英国がEU離脱を決定した最大の要因は東欧を中心としたEU域内からの移民の増加であると言われている。その遠因は英国の産業構造にある。英国の2017年の名目GDPは世界5位の2兆8286億4000万ドルで、一人当たりのGDPは44162ドルと日本のそれを9533ドル上回っている。生産性が高い原因は世界有数の金融都市ロンドンを有し、国内、国外への投資で業績を上げているからである。   英国の国土面積は日本の約3分の2の2336万haであるがその70.9%は農用地で農用地(放牧地を含む)は日本の約4倍の1723haで、農場の1経営体当たりの経営面積は92.3ha(2013年)でEU28カ国の中でチェコに次いで2番目に大きく、大規模かつ効率的な農業が行われているために農業就業人口は50万人に満たない。農業のGDPへの貢献度は2%である。               製造業の比率も先進国の中では米国とともに10%を下回っている。その結果、GDPの最大の比率を占めているのが金融や小売業、近年は不動産業や観光業を含むサービス業の第3次産業である。第3次産業の中で小売業の占める割合は22%で、地方都市での雇用への貢献度が高い。

EU域内からの移民は専門技術の取得者は少なく、就職するとすれば小売業や観光業などの専門知識をそれほど必要としない職業で地方住民の雇用を奪う可能性が高いために地方都市ではEU離脱支持票が多かったのである。英国がEU離脱となれば英国の稼ぎ頭の外資系の金融機関が世界の金融センターのロンドンを離れEU域内のドイツやフランス、あるいはオランダやベルギーなどに移転する可能性が高まる。既に移転した金融機関も存在する。製造業も同様である。航空機の【エアバス】や自動車の【BMW】さらに日本の3大メーカーのホンダは英国工場の閉鎖を決定、【日産】と【トヨタ】も英国工場の縮小を発表している。

英国のEU離脱は再延期されたが与えられた約半年間で英国が明確な道筋をつけられるかは甚だ疑問である。   (おわり)

 

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2019年4月11日 (木)

日米通商協議を前に日本に圧力をかける米国農務長官

トランプ大統領の選挙公約の一つは貿易赤字の是正であった。トランプ大統領が貿易赤字の是正に拘るのは米国人の雇用が外国に奪われたと考えているからである。そして貿易是正の標的にされた国は中国、日本、ドイツ、メキシコであった。

2014年以降の【米国の貿易赤字額】は、2014年が7514億ドル、2015年が7618億ドル、2016年が7525億ドル、2017年が7962億ドル、2018年が8913億ドルと推移している。過去最大の貿易赤字となった2018年の米国対中国赤字は4192億ドル(約46兆8600億円)、対メキシコが815億1700万ドル(約9兆1100億円)、対ドイツが682億5000万ドル、対日本が676億3000万ドル(約7兆6000億円)で日本は米国にとって貿易赤字額の多さでは前年の3位から4位と順位を下げた。

皮肉なことにトランプ大統領が大統領に就任した17年以降米国の貿易赤字は増えている。その原因は、米国の好調な経済と減税により国民の可処分所得が増え、購買意欲が増大したことと輸入関税率のアップである。トランプ大統領の対中関税政策は失敗であったというべきであろう。だが、来年の大統領選前に関税政策の失敗を認めたくないトランプ大統領は中国に次いで貿易赤字額が多いEUに対して輸入関税の税率を引き上げようとしている。因みに昨年の対EUの貿易赤字額は1693億ドル(約18兆92億円)であった。

ところで、中国に対する関税を課したことにより中国から報復関税を課され、その結果、甚大な被害を受けたのが米国の大豆農家であった。米国産大豆は中国から25%の報復関税を課され中国への輸出量は昨年7月以降はほぼゼロになり、在庫が積みあがったために米国産大豆の価格は暴落し、破産する大豆農家が続出した。さらに、TPPが昨年末に発効したことによりカナダ産やニュージーランド産の牛肉の関税が27.5%に引き下げられ、日本の牛肉輸入量は今年の1月以降30%程度増えている。4月1日からは牛肉の関税が26.6%と0.9%引き下げられるのでカナダ産、ニュージランド産、オーストラリア産牛肉の輸入量はさらに増加すると予想されている。その影響を受けるのは米国産の牛肉である。米国の食肉業者はTPPに復帰するよう米国政府に圧力をかけている。今や日米通商協議は米国にとって喫緊の政治課題となったのである。

そうした情勢を受けて茂木敏充経済再生担当大臣とライトハイザー米国通商代表部代表による日米通商協議の閣僚級会合を4月15日開催で調整に入っているという。閣僚級会合を前にパーデュ―農務長官は4月9日に会見して、日本が米国産の農産物に課している関税などについて「TPPと同じかそれを上回ることを望んでいる。」と述べて日本側に圧力をかけている。日本政府としては7月の参議院選を控え、TPPを上回る関税引き下げに応じるわけにはいかないであろう。結論を先延ばしにするか他の分野で米国の要求を受け入れるかということになるのであろう。

米国の現行の2%の自動車関税の引き上げが一つの落としどころとなるかもしれない。自動車業界にとって迷惑な話ではあるが。あるいは2016年から急増している米国産シェールオイルやシェールガスの輸入量を増やすという妥協策もある。なにしろ日本は天然ガスの世界最大の輸入国であるから。   (おわり)

 

 

 

 

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2019年3月14日 (木)

EU離脱を巡り混迷を深めるイギリス議会

イギリス議会は、3月12日(日本時間13日未明)、EU(ヨーロッパ連合)からの離脱の条件を定めた【離脱協定案】を賛成242、反対391で1月に続いて再び否決した。これを受けメイ首相は、何の条件も付けずに離脱する【合意なき離脱】に踏み切るかどうか、13日(日本時間14日の朝)に議会に諮ることを決断した。、13日の議会では何の条件も付けないないまま離脱する【合意なき離脱】に突き進むのかどうかを問う採決を行う。
イギリス下院議会内部の離脱強硬派の中には【合意なき離脱】を推進すべきだとの強硬論が一部には存在するものの日本の自動車メーカのホンダの2022年でイギリス南部のスウィンドン工場の閉鎖の発表や北部サンダーランドでイギリス最大の工場を稼働させている【日産】が2月にSUV【エクストレイル】の次期モデルの製造拠点を日本回帰させると発表したことに加えて【離脱協定案】の採決当日に高級車【インフィニティ】の製造中止を発表したことによって下院議員の中にイギリス経済に関する危機感が醸成されてきた。
日本の自動車メーカーの英国離れはイギリスの【ブレグジット】が主たる要因ではない。最大の要因は2月1に発効した【日欧EPA】(日欧経済連携協定)である。日本の自動車メーカーは日本車をEU圏内に輸出する際に現在10%の関税を支払っている。しかし2026年には10%の関税が撤廃されるのでEU内で工場を稼働させる意義が薄れてきたのである。
そうした日本の自動車メーカーの状況の変化を理解するようになったイギリス下院議員たちは経済の混乱への懸念から「合意なき離脱」には否定的な議員が大多数を占め、採決では否決される可能性が高いとみられている。
しかしながら【合意なき離脱】が否決されたにしても2度にわたる【離脱協定案】の否決はイギリス国内ばかりでなく、国際的にもメイ首相の求心力のなさを露呈したことになり、イギリスに進出している日本企業は欧州戦略の見直しを迫られている。
現在欧米の主要国では賃金格差が拡大し、低所得者層の間では【不満】というマグマが噴出寸前の状態になっている。その起爆剤となりうるのが【移民】である。低所得者層の雇用を奪う存在であるからだ。この起爆剤の排除を選挙公約に掲げて当選したのが米国のトランプ大統領である。だがイギリスの既存の政治家にはそこまで移民に対して攻撃的にはなれなかった。イギリスのEU加盟に加担して、EU域内からの移民の受け入れを容認した責任があるからだ。
移民問題の解決策は現時点では早急には見つからないであろう。ただ言えることは【移民】への対応で国論が分裂した米英両国は国富の源泉を【製造業】から【金融業】に移動させたという共通項がある。国民に雇用の機会を一番与えられる業種は製造業であるということを世界各国の政治に携わる人たちは肝に銘じるべきであろう。   (おわり)

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2019年3月 5日 (火)

内政失敗隠しの米朝首脳会談強行し墓穴を掘ったトランプ大統領

2月27~28日にベトナムのハノイで開かれた【米朝首脳会談】は合意文書に米韓の両首脳が署名することなく物別れに終わった。米国政府の高官は「不利な合意を拒絶したことは成功であった」という主旨のコメントを八ぴゅして体裁を取り繕ったが米国内外のマスコミの多くは【会談の失敗】を報じている。
米国内では北朝鮮問題は有権者の興味をそそる問題ではなく、例えば、地上波のテレビ局NBCは米国の東部時間夕方6時半の看板番組「ナイトリー・ニュース」では【米朝首脳会談】と【コーエン元トランプ大統領の個人弁護士の議会証言】の2つの話題を取り上げた。
しかし、最初に取り上げられたニュースはマイケル・コーエン氏が米国連邦下院議会の監視委員会に召喚されて宣誓証言したことである。監視委員会は2月26~28日の3日間開かれ、27日の証人喚問だけが公開された。
米国の議会制度は日本とは大きく異なり、下院の議事進行や運営などを主宰する権限は米国連邦下院議会多数党の議員から選出された議長に付与されている。現在の下院議長は野党民主党のベテラン女性議員ナンシー・ペロシ―氏である。
2月27日に公開の宣誓証言をする公聴会を開催したのは下院多数党の民主党の作戦である。トランプ大統領が外交で点数を稼ぎそうな案件の【米朝首脳会談】の初日にテレビ放映がされる公聴会でのトランプ大統領の元個人弁護士のコーエン氏の証言をぶつけてきたのである。
下院民主党の作戦は図に当たり、ケーブル・ニュース局の【CNN】ばかりでなく、【NBC】を含む地上波3大ネットワークも【コーエン証言】を中継した。
上述の【ナイトリ―・ニュース】は、最初の14分間はコーエン証言を取り上げ、ハノイの首脳会談はその後の約5分間で報じられただけである。
2回目の米朝首脳会談の成果について米国政府高官の間でも悲観論が大勢を占めていた。これまでの米朝外交交渉の経緯から北朝鮮が核兵器の放棄や核施設の廃棄などの非核化に応じる可能性は極めて低いというのが米国の外交や安全保障の専門家の見解であった。さらに今回はチャイナリスクが加わったことにより米朝首脳会談での合意は極めて難しくなったのである。
トランプ大統領は就任2年目に突入した2018年から選挙公約の実現に精力を傾けだした。まず貿易赤字の解消で、米中貿易の不均衡の是正のため、トランプ大統領は高率の関税を中国からの輸入品に課した。それに対して中国も米国産の農産品を中心に25%の報復関税で対抗した。
その影響を一番受けたのが米国中西部の大豆生産農家であった。25%の報復関税によって米国産大豆は価格競争力を失い、中国の輸入業者は輸入相手先をブラジルやアルゼンチンの大豆輸出業者に変更した。その結果、在庫が積みあがった米国産大豆の価格は大幅に下落し、破産したり、大きな損害を被った大豆農家を中心に米国の農家はトランプ離れを起こし始めている。
中国は米中貿易交渉を有利に進めるためにトランプ大統領の権力基盤が脆弱になるよう北朝鮮に米朝首脳会談の決裂を働きかけたのであろう。米国の政府高官からは米中貿易交渉は成功するというリーク情報が流されている。
株価の下落を防ぐための一時的な措置と思われる。
米朝首脳会談決裂を受けてトランプ大統領の政治手腕に疑問を抱き始めた与党共和党の上院議員の中で大統領のメキシコ国境での壁の建設に関する【非常事態宣言】を無効にする議案に賛成票を投じる造反議員が増えて上院でも議案が可決される見通しが確実になった。トランプ大統領はさらに苦境に立たされ出した。   (おわり)

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2019年3月 1日 (金)

米政府高官の予測通り物別れに終わった米朝首脳会談

北朝鮮にとって【核兵器の保有】は国家が国際社会で存続するための命綱であり、金正恩朝鮮労働党委員長にとっては自らの生命を担保するものであるが故に北朝鮮が【核兵器の廃棄】に応じるはずはないのである。この事実を知悉している安全保障担当の政府高官の一人は2月27~28日両日にベトナムのハノイで開催予定の2回目の【米朝首脳会談】前から【米朝首脳会談】の決裂を予言していた。
2日間の【米朝首脳会談】で、北朝鮮の【核兵器の廃棄】や【核施設の廃棄】という【非核化】の進め方をめぐり合意文書を作成できなかった理由について、トランプ大統領は2月28日の首脳会談終了後に、北朝鮮が制裁の全面解除を要求したためだと主張した。
2回目の【米朝首脳会談】で、北朝鮮の【非核化】を推進する方法に関して米朝間で合意に至らなかった理由についてアメリカ国務省の高官はトランプ大統領の主張を補足するために、北朝鮮側が首都平壌(ピョンヤン)の北約80kmにある寧辺(ニョンビョン)の核施設の一部の廃棄に応じる代わりに事実上、武器を除くすべての制裁の解除を要求してきたためだと説明した。
寧辺の核施設には北朝鮮最初の原子炉が稼働しており、2006年以降に北朝鮮が行った各十店で使用した核物質を生産していた。施設の一部は老朽化しており、廃棄しても北朝鮮の核開発には影響がないことから施設の廃棄に応じる姿勢を見せているのであろう。
トランプ大統領の主張に対し、、北朝鮮のリ・ヨンホ外相は1日未明に記者会見し、ニョンビョンにあるすべての核施設の廃棄と引き換えに、国民生活に影響が及ぶ一部の制裁の解除だけを求めたと反論している。
現時点では真相は藪の中であるが昨年の中間選挙でトランプ大統領を支える与党共和党が議会下院で過半数を失ったことにより、トランプ大統領は内政では失点を重ねている。こうした状況を打開するためにトランプ大統領は北朝鮮問題で得点を挙げようとして準備不足のまま【米朝首脳会談】に臨んでしまったのである。
トランプ大統領は米国が世界の主導権を握っている理由を理解していないようである。米国の力の源泉は強大な軍事力である。軍事力に裏打ちされた安全保障体制を構築しているために米国は経済的な繁栄を享受していることになる。トランプ大統領はその点に思いが及ばず、安全保障体制の維持にかかる経費は無駄であると思い込んでいるのであろう。
首脳会談に同行した米国政府高官は3月1日、同行記者団に「北朝鮮はいまのところ大量破壊兵器の計画を完全に凍結する気がなく、制裁の解除で多額の資金を与えることは大量破壊兵器の開発を助けることにつながる」と述べて、非核化の前に制裁の解除を要求してくること自体が受け入れられないという認識を示した。
こうした米国の根強い北朝鮮に対する不信感を払しょくしない限り米朝関係に進展はない。北朝鮮はこれまで米国を騙し続けてきた。米国の不信感を取り除く努力をしない限り北朝鮮の国民は救われない。   (おわり)

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2019年2月27日 (水)

英国の合意なきEU離脱は日本自動車メーカー英国撤退をもたらす

英国は2016年6月23日、英国の欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票を実施したが、離脱賛成の投票率は51.89%、離脱反対の投票率は48.11%で、その結果、3.78%という僅差で英国のEU離脱が決定した。
その後、英国とEUの間で離脱の条件に関する協議が重ねられて離脱の合意案が作成され、2018年11月25日に開催されたEU加盟27カ国の首脳会議で離脱合意案が承認された。英国のEU離脱には英国下院議会の承認が必要で2019年1月16日、英国下院議会でEU離脱合意案は否決された。英国下院で離脱合意案が可決されれば3月29日から離脱の移行期間に入る予定であったが下院で否決されたことにより英国のEU離脱は不透明になった。
英国のEU離脱にとって重要な事項は移行期間の期限(2019年3月29日~2020年12月31日)と離脱のための清算金であるが清算金の金額の詳細は不明であるが390億ポンド(約5兆7000億円)とみられ、これを英国が数年間で支払うことになっていた。
移行期間に突入する3月29日まで残り30日であるがその期間内に新たな離脱合意案が提示され、英国下院で可決される可能性は極めて低い。そうなれば離脱の先送りか合意なき離脱という二つの選択肢に限定される。
合意なき離脱となれば、、英国は3月29日から【EU単一市場】から緩和措置なしに締め出されることになり、英国は関税や物流の分野で大きな混乱に巻き込まれる可能性が高い。
英国は現在、EUの一員として他の加盟国との間で、商品や物品などモノを自由に移動させることができる。しかし、英国がEUから離脱した後は、EU域内とのモノの移動に際して、通関手続きが必要となる。
その結果、年間150万台超えると想定されるトラックなどが通行する英仏の海底トンネルでは、通関手続きによって数十キロに及ぶ大渋滞が発生することになるであろう。
合意なき離脱になった場合、英国にEU向けの営業拠点や工場などを置いている企業は、その製品を輸出する際に関税を課されることになる。日本の自動車の3大メーカーの【トヨタ】、【日産】、【ホンダ】は英国内で工場を稼働させてEU向けの4輪車を製造している。EU域内にこれらの生産車を輸出しても現在は関税は0%である。だが合意なき離脱となれば10%の関税を課される。これでは日本車はEU市場では競争力が大きく損なわれることになる。
[トヨタ】は1992年9月に英国中央部のダービーシャー州ダービー市バーナストンにバーナストン工場を稼働させた。【ダ―ビー市】はイギリス産業革命の中心の工業都市として発展してきたが、現在は航空機エンジンの【ロールスロイス】と【トヨタ】がダービーの経済を支えている。バーナストン工場の従業員は約3000人(期間従業員を除く)、生産台数は約18万台である。2017年に約3億ドルの新規の投資を【トヨタ】は発表したが合意なき離脱となればEUへの輸出車には10%の関税が課されるので【トヨタ】はバーナストン工場の操業を停止することになるであろう。
【日産】は1986年にイングランド地方北東部の北海に面した港湾都市【サンダーランド市】に工場を新設した。英国最大の自動車工場でイギリスの年間自動車生産台数の3分の1を生産している。2018年の生産台数は44万8000台であった。同工場の従業員数は約6000人であったがディ―ゼル車の生産縮小に伴い昨年には従業員の約1割の削減を発表した。
【日産】はサンダーランド市の経済を支えている存在であるから日産が撤退すれば同市の財政に大きな影響を与えることになる。合意なき離脱となれば【日産】も英国から撤退を決断することになるであろう。
【ホンダ】は英国南部のウイルシャー州スウィントン工場の2021年の閉鎖を2月19日に発表したばかりである。工場閉鎖の最大の原因は【ホンダ車】がEU市場では売れないことである。昨年の販売台数は13万台で利益が出ないのである。
英国が合意なきEU離脱に突き進めば日本の3大自動車メーカーは英国を撤退することになり、英国経済に少なからぬ影響を及ぼすことになるであろう。   (おわり)


 

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2019年2月 3日 (日)

竹田恒和JOC会長は東京五輪招致の贈賄容疑で逮捕されるのか

夕刊紙【ルモンド紙】などフランスメディアは2019年1月11日、2020年開催の東京五輪招致に関する贈賄疑惑で、フランス司法当局が昨年12月10日、パリで日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長の事情聴取を行ったと報じた。 .
昨年の12月10日は世界的な自動車メーカー【日産】の前代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)であったカルロス・ゴーンゴーン氏が【東京地検特捜部】によって金融証券取引法違反で起訴され、2015~17年分の役員報酬虚偽記載による【金融証券違反】で再逮捕された日であったことから、竹田会長の事情聴取はフランス政府の【意趣返し】と報じた日本の一部のメディアがあったが、竹田会長の事情聴取の日程は6月の時点で確定していたことが判明して【意趣返し説】は論拠を失った。
そもそも、竹田JOC会長の五輪招致贈賄疑惑が浮上した発端は、国際陸上競技連盟前会長のラミン・ディアク氏と息子のパパマッサタ氏が絡んだロシア選手らに対するドーピング隠蔽(いんぺい)工作のスキャンダルである。アフリカ西端の国セネガル出身のデイアク氏は永年、アフリカ陸上連盟の会長として君臨し、アフリカ諸国のIOC委員に強い影響力を持っている。それ故、ドーピング問題でもデイアク氏はロシアなどから依頼されて暗躍したのである。
フランスを拠点としていたディアク親子に汚職と資金洗浄の疑いがかけられ、仏検察が捜査に乗り出した。モナコにある国際陸連の本部を家宅捜索し、資料を押収。その過程でシンガポールのパパマッサタ氏が実質的に経営する【BT社(ブラック・タイデイングス社)】が浮上した。デイアク父子は有罪となり,デイアク氏は国際陸連会長を解任された。【BT社】に現在は解散している日本の五輪招致委員会(会長竹田恒和JOC会長)がコンサルティング料2億3000万円を支払っている。この料金の一部がIOC委員の買収費用に使われた疑惑が持たれているのである。
ディアク父子が絡んだ五輪招致金銭疑惑の前例がブラジルに存在する。「ブラジル連邦検察は2017年、リオデジャネイロ五輪招致を巡り、ブラジル・オリンピック委員会会長だったカルロス・ヌズマン氏らを起訴した。ヌズマン氏がブラジル企業からパパマッサタ氏の関連会社に200万ドル(約2億2千万円)を振り込む仲介をし、そのカネがIOC委員の買収に使われた疑いだった」。(朝日新聞デジタル1月28日配信記事より引用)
ヌズマン氏は有罪となり、BOC会長を辞任した。
フランス検察当局は竹田JOC会長に関する予備捜査を終えて裁判官である判事に捜査を委ねた。昨年の12月10日に竹田会長の事情聴取をしたのは予審判事である。これによって予審判事が捜査を継続し、予審判事が起訴の可否を判断する。フラジルの前例から判断すれば竹田会長が起訴され、有罪となる可能性は高い。
但し、竹田会長のフランス軽罪裁判所の判決が下りるのは、ブラジルの判決が下りたのがリオ五輪後であったように東京五輪終了後になるであろう。2020年の五輪会場を東京以外の都市に移転させるのは時間的に不可能であるからだ。   (おわり)

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