カテゴリー「13国際経済」の記事

2019年7月24日 (水)

日本政府の韓国に対する半導体の3種類の原材料製品の輸出規制は日本経済に甚大な被害をもたらすのか

日本政府は、7月1日に電撃的に半導体製造に不可欠な【フッ化ポリイミド】、【フォトレジスト】、【フッ化水素】と3種類の原材料の韓国への輸出の規制を強化発表した。虚を突かれた韓国政府は即座には対応策を打ち出すことが1週間後の7月8日になって文在寅大統領は「韓国企業の被害が実際に発生した場合、政府は必要な対抗措置をとる」と発言するの精一杯であった。できずに文在寅大統領が8日の発言にはインパクトがないと判断したのかさらに1週間後の15日にはソウルの大統領府の会合の中で文大統領は「結局は、日本経済により大きな被害が産まれることを警告しておく」という根拠のない強気な発言をした。

2010年以降、韓国経済の牽引役は【サムスン電子】と【ヒュンデ(現代)自動車】であったが2013年以降【現代自動車】の営業利益が減少を続けていることによって韓国経済は【サムスン電子】の片肺飛行である。【現代自動車】の2017年の売上高は前年比2.9%増の96兆3760億ウォン(約9兆8300億円)、【営業利益】は前年比12%減の4兆5750億ウォン(約4670億円)、2018年が【売上高】は前年比4.8%増の97兆2520億ウォン、営業利益は前年比35.4%減の2兆4220億ウォンと6年連続の減益である。それに対して【サムスン電子】の2017年の【売上高】は、前年比18.7%増の239兆6000億ウォン(約25兆4000億円)、【営業利益】は83.3%増の53兆6400億ウォン(約5兆7000億円)と史上最高であった。2018年の【売上高】は前年比1.7%増の243兆7700億ウォン、【営業利益】は9.8%増の58兆8900億ウォンと史上最高を更新した。

だが好事魔多しで韓国が最も得意とする半導体記憶素子DRAM型半導体が生産過剰に陥り、2018年の第4四半期(10~12月)から減益に転じていた。2019年第1四半期(1~3月)の【売上高】は前年同期比で13.5%減の52兆3900億ウォン(5兆2390億円)、【営業利益】は60.2%減の6兆2300億ウォン(約6230億円)、第2四半期(4~6月)は売上高はまだ公表されていないが、【営業利益】は56%減の6兆5000億ウォン(約6000億円)と大幅な減益が続き、さらにウォン安が進行している。2019年第1四半期は半導体の売り上げ高のシェア1位の座は米国の【インテル】が奪還した。【サムスン電子】の大幅な減益の原因は在庫過剰による半導体価格の急激な下落である。

日本の半導体関連素材の輸出規制強化により日本の素材メーカーの売上高が減少するという悪影響が表れることになる。今年の1~5月の韓国半導体メーカーが輸入した【フッ化ポリイミド】(スマホのディスプレイに用いる)の94%、【フォトレジスト】(半導体の基盤に塗る)の92%、【フッ化水素】(半導体の洗浄に使う)の44%が日本メーカーの製品である。この輸出総額は3.4億ドル(約360億円)で日本の輸出総額81.5兆円の0.0004%であるから日本経済に与える影響はほとんどない。

韓国の半導体の製造が一時的に停止すれば韓国からの半導体に依存している日本のメーカーは打撃を受けると懸念するメディアの報道があるが日本の半導体の輸入の約40%は台湾で、韓国は30%程度である。現在、半導体は在庫が積みあがっているので2~3カ月は何ら懸念する必要がない。韓国からの輸入が困難になれば半導体の輸入先を米国に切り替えればいいのである。あるいは生産量で世界2位の東芝メモリから調達するとい方法もある。中国経済の減速が続く限り、製品の8割を中国への輸出に依存している【サムスン電子】などの韓国の半導体メーカーは業績悪化が続くことになる。日本の輸出規制の強化で苦しむのは韓国であろう。   (おわり)

 

 

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2019年7月10日 (水)

電動自動車の開発を加速されるトヨタ連合

【トヨタ】は6月7日、【トヨタのチャレンジーEVの普及を目指して】と題する記者会見を開いた。その会見の趣旨は車両電動化の取り組みを説明することで解説役を務めたのはトヨタの最高技術責任者で副社長の寺師茂樹氏である。

寺師副社長は「トヨタがハイブリットカー開発で20年以上にわたり蓄積してきた【モーター】、【バッテリー】、【パワーコントロールユニット】の3点を車両電動化の【核心技術】と位置付け、【核心技術】にエンジンや充電器、FCスタックなどの固有ユニットを組み合わせることによってハイブリットカー、EV(電気自動車)、FCV(燃料電池車)といった種々の電動化車両が誕生するというトヨタの法則」を披露した。

さらに、寺師氏は「電動車と【自動運転】や【コネクテイッド】(インターネットと繋がる)などの先端技術を融合させることで【MaaS】(Mobility  as a Service サービスとしての移動)といった次世代モビリティが生まれるが、電動車が【MaaS】の新しいビジネスモデルの鍵となる」と解説した。

この記者会見の前日の6月6日には【トヨタ】と【スバル】は「中・大型乗用車専用のBEV(バッテリー電気自動車)のプラットフォームとCセグメントSUVモデルBEVを共同開発することで合意した」と発表している。

【トヨタ】は資本・業務提携をしている【マツダ】(トヨタが第2位の株主)とトヨタ系列の部品メーカー【デンソー】とBEV開発専門会社【EVCAスピリット】(寺師茂樹代表取締役プレジデント)を立ち上げており、この会社にトヨタグループの【ダイハツ】と【日野】さらに【スズキ】が参加の意向を表明している。

【トヨタ】は【スバル】株式の16.77%を保有し、米国ではトヨタはスバルにハイブリットシステム・THS-Ⅱを供給しており、スバルは2018年に販売を開始したPHEV【クロスレック】にTHS-Ⅱを搭載している。

【トヨタ】は日系自動車メーカー5社と連携してBEVの開発に本格的に乗り出したのである。しかも電動車の発売時期を5年前倒しして2025年に中国市場を皮切りにグローバル市場に投入すると発表した、当初の販売計画ではハイブリッドカーとPHVの販売台数を450万台以上、EVとFCVは100万台以上、電動車の販売台数の目標は550万台以上である。世界の主要自動車市場では環境対策が強く求めれているために【トヨタ】としても電動車の発売を前倒しせざるを得なかったのである。【トヨタ】にとっても電動車の販売は社運を賭けた戦いとなる。(おわり)

 

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2019年6月30日 (日)

米中貿易戦争トランプ大統領の譲歩により一時休戦

6月28~29日に大阪で開催された【G20首脳会議】の期間中の6月29日に米国のドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席の1時間強の首脳会談後の記者会見でトランプ大統領は「当面は中国製品の関税引き上げを見送る。ファーウェイに米国製品を売ることを認めていきたい。」と述べた。この発言は中国に対して譲歩をしたことを意味する。。

習近平国家主席の【G20首脳会議】への出席は【G20首脳会議】開催直前まで公表されなかった。来年の大統領選挙に向けた実績作りに焦るトランプ大統領の弱みを中国は巧みに利用したとも言える。

昨年の7月以来、米国は3度にわたり総額2500億ドルの課税引き上げを実施してきた。それに対して中國も報復関税でそれに応じていた。トランプ大統領は【G20首脳会議】開催前には中国からの譲歩を引き出すために新たな3000億ドルの中国製品に対する関税引き上げを明言していたが第4弾の関税引き上げは期限を明白にすることもなく先送りされた。第4弾の関税引き上げに関しては米国経済界の反対も根強かったという事情にトランプ大統領も配慮したのであろう。

中国が米中貿易戦争の長期化を決断したのは来年の米大統領選挙の民主党の指名候補選での勝利が最有力視されているバイデン前副大統領の今年の5月初旬の「中国人は悪い人たちではなく、競争相手でもない」という発言が発端とされる。中国はトランプ大統領の再選を何としても阻止するためにバイデン氏に資金提供などの水面下での協力に血道を上げると思われる。トランプ大統領に敗れたヒラリー・クリントン氏を水面下で応援したように。

自由主義国の政治的指導者は【民意】を最重要視せざるを得ないが一党独裁国家の中国は民意をさほど気にする必要はない。そうした国情の違いが今回の首脳会では色濃く反映されたのである。

トランプ大統領は中国製品に対する関税引き上げに関して「関税を負担するのは中国である」と虚言を発信し続けていた。関税を負担するのは輸入された中国製品を購入した米国民である。次期大統領選挙では米国民の見識が問われることになる。   (おわり)

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2019年6月12日 (水)

水面下で継続していたルノーとFCAの統合協議

フランス政府が筆頭株主でフランス自動車メーカー大手【ルノー】と欧米自動車メーカー大手の【FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)】の統合協議は6月7日、【FCA】が協議打ち切りを宣言したことによって統合協議は終了したと思われたいた。だが、これは【ルノー】と【FCA】がそれぞれ統合協議の主導権を握ろうとする駆け引きであることがフランのルメール経済・財政相の発言で判明した。

この統合案が【FCA】から【ルノー】に提案された際に欧米のマスメディアは【弱者連合】と揶揄している。【ルノー】の昨年の世界販売台数は388万台であるが主力市場の欧州市場での販売台数は164万1156台、そのうち【ルノー】ブランドの販売台数は前年比3.9%減の110万5778台、傘下のルーマニアのメーカーの低価格車【ダチア】ブランドの販売台数が52万8249台、残りの7139台は一昨年に買収したばかりのロシアメーカー【ラーダ】ブランドであった。

世界の2大市場である米国と中国市場での販売台数は【ルノー】自体が詳細を発表しないので定かでないが米国では5000台にも満たず、中国はアジア太平洋地区の販売台数に含まれ、推測であるが5万台にも満たないと思われる。

一方、【FCA】の世界販売台数は484万台とルノーを96万台上回っているが乗用車部門では苦戦を強いられている。【フィアット】の本拠地・欧州市場での販売台数は102万102万1311台で【フィアット】ブランドの販売台数は71万1285台、クライスラーの【ジープブランド】が16万台。【クライスラー】の本拠地米国では【フィアット】ブランドはほとんど売れず米国から撤退する計画が持ち上がっている。【クライスラー】の昨年販売台数は前年比8.5%増の223万5204台であったがこれは【ジープ】とSUVの【ラム】の販売が好調であったことによる。今年の1~5月の累計販売では前年同期比で2.5%減の89万台である。【クライスラー】の乗用車は米国以外では売れないので【クライスラー】の乗用車販売は米国に限定することになる。

今後、何らかの大改革をしない限り「ルノー】も【FCA】も単独では生き延びられないのである。そうした状況に追い込まれているからこそ統合を行わざるを得ない。しかし、統合に関しては自社に有利は統合条件を引き出すために駆け引きをしている。

問題は【ルノー】と提携している【日産】である。昨年は米国での販売不振が原因で昨年の純利益は前年比で47%減の1100億円台となった。今年度は1~5月の販売台数は米国と中国でともに前年度割れを起こしている。統合話が持ち上がったのは日産の利益に【FCA】が目を付けたのである。今後、自動車産業は【CASE】と呼ばれている技術革新時代に突入する。【CASE】とは【Connected】(インタートと常時繋がる)、【Autonomous】(自動運転)、【Shared】(シェアリング、共有と共用)、【Electric】(電動化)の頭文字をつないだものである。

この技術革新の費用を捻出できない【ルノー】と【FCA】は言葉は悪いが【日産】に集(たか)ろうとしているのだ。もし【日産】が今年度米中での販売の減少で赤字に転落したらこの統合話はどうなるのであろうか。   (おわり)

 

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2019年6月10日 (月)

具体的な成果がなかった20か国財務大臣・中央銀行総裁会議

福岡市で6月8~9日に開かれた【G20財務大臣・中央銀行総裁会議】の終了後に【共同声明】が発表された。声明の冒頭部分の今年度の下半期の世界経済成長の見通しについて「世界経済の成長は、足元で安定化の兆しを示しており、総じて、本年度の後半及び2020年に向けて、緩やかに上向く見通しである。この回復は緩和的な金融環境が継続すること、幾つかの国々で景気刺激策の効果が発現すること、一時的要因が解消することによってもたらされる。しかしながら、成長は低位であり続けており、リスクは依然として下方に傾いている。何よりも、貿易と地政を巡る緊張は増大してきた。これらのリスクに対処し続けるとともに更なる行動をとる用意がある。」と曖昧な表現を多用して世界の株式市場への負の影響を回避している。

福岡市が【G20財務大臣・中央銀行総裁会議】の会場に選ばれたのは地方都市の中で福岡市のここ10年ほどの経済発展が目覚ましいことと麻生財務大臣の地元であることから麻生大臣の引退の花道を用意したという意味合いが強いのでであろう。

現在、世界の関心事は【米中貿易戦争】の行方である。この世界最大の懸案事項の解決の一翼を【財務大臣・中央銀行総裁会議】が担うがその役割りは脇役であり、主役は6月下旬に大阪で開催される【G20首脳会合】で、その真打を務めるのは米中貿易戦争の当事国の最高権力者ドナルド・トランプ大統領と習近平国家主席である。そうした観点に立てば【G20財務大臣・中央銀行総裁会議】で具体的な合意が形成されなかったことは予定の行動であったのであろう。

現時点でトランプ大統領も習近平国家主席も【G20首脳会合】に出席の予定であるが米中首脳会談が行われる予定はない。米中首脳会談が開かれたとしても貿易戦争が終結する可能性は極めて低い。米中貿易戦争が長期化した場合、中国の経済の減速は一層顕著になり、中国経済と表裏一体の関係にある日本経済も経済成長率がマイナスになるリスクが高まる。

中国国内で生産された製品は米国に輸出すれば25%の追加関税を課されるが中国企業が中国国外で生産した製品には25%の関税は課されない。この盲点を利用するために中国企業は輸出品の生産拠点を隣国のべトナムやその他の東南アジア諸国に移転を開始している。中国に進出している約4割の米国企業も米国への輸出品に限って東南アジアなどに生産拠点を移している。中国からまだ生産拠点を移動させていない米国企業の4割も中国を離れる予定であるという。

米中貿易戦争が終結しない限り中国は失業率が上昇し、個人消費が減少し、中国の経済成長率は目標に届かなくなる可能性が極めて高くなる。中国では天候不順による品不足と高率の輸入関税の影響で食料品(野菜、果物、豚肉など)の価格が高騰し、一般庶民の食料品購買意欲が低下している。

一方、米国では中国への農産物の輸出が激減したことにより、トランプ大統領誕生の原動力になった米国中西部の農家は大打撃を受けトランプ大統領への支持が揺らいでいる。米国は米国産の中国への自動車輸出が激減し、米国メーカーの中国産の自動車は不買運動という非関税障壁に阻まれて販売台数を激減させ、米国の経常収支を悪化させている。だが現在は【米中貿易交渉】の着地点は模索中である。   (おわり)

 

 

 

 

 

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2019年6月 7日 (金)

【FCA】(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)ルノーとの統合案を白紙に戻す

5月27日、イタリア最大の自動車メーカー【フィアット】と米国のビッグスリーの一角を占める【クライスラー】を傘下に持つ持ち株会社【FCA】は、フランス政府が筆頭株主であるフランスの大手自動車メーカー【ルノー】の取締役会に株式比率が一対一の対等統合(合併)を提案する文書を送付したと発表した。

世界の自動車メーカーを震撼させたこの報道は世界を駆け巡った。というのはこの対等合併が成功すれば世界販売台数1560万台の巨大な自動メーカーが誕生するからである。【ルノー】はその傘下にルーマニアのメーカー【ダチア】とロシアの【ラーダ】を有し、2018年の世界販売台数は388万台である。それに対して合併を提案した【FCA】の2018年の世界販売台数は484万台である。両社が合併すれば販売台数870万台のドイツの【VW】(販売台数1083万台)、【トヨタ】(1059万台)に次ぐ世界第3位の自動車メーカーが誕生する。さらに【ルノー】は【日産】と【三菱】と連合を組んでいるので【ルノー・日産・三菱】連合の2018年の世界販売台数は1076万台であったことから【新会社・日産・三菱】の販売台数は1560万台というとてつもない巨大自動車連合が誕生することになり、世界の自動車業界の地図を塗り替える可能性が高まったのである。

この【FCA】の合併案に危機感を抱いたのがフランス政府である。株式比率一対一の新会社が誕生すればフランス政府の新会社への影響力は著しく弱まるのである。フランス政府は【ルノー】の株式を15%所有しているがフランス政府は強引に法律を改正してフランス政府が保有するルノー株式の議決権を2倍にし、同じく15%の【ルノー】株式を持つ日産の議決権をゼロにした。つまりフラン政府は日産の株式から議決権を奪い取ってフランス政府のモノにして【ルノー】をフランス政府の完全管理下に置いたということになる。フランス政府はこの現状を維持したかったのである。

新会社ではフランス政府の株式保有率は半減して7.5%となり、それに伴い30%あった議決権も7.5%と大幅に減少する。このような合併案を了承しては【ルノー】をフランス政府はコントロールできなくなるのでフランス政府は合併案を阻止しようと【FCA】に難題を持ち掛けたのである。フランス政府が【FCA】に要求した事項は①「長期的にルノー出身者を合併新会社の要職に就けること、②運営上の新会社にはフランス政府からの役員の派遣を認めること」であったという。フランス政府の干渉が強すぎることに嫌気がさした【FCA】は合併案を白紙に戻してしまった。世界を震撼させた合併騒動は10日間で呆気なく幕を下ろした。

フランス政府の不条理な介入を目の当たりにして【日産】は【ルノー】との関係を見直す選択をすることになるであろう。【日産】は【ルノー】との間で【改定アライアンス基本合意書】(RAMA)を作成している。【RAMA】はフランス政府が【日産】に不当な介入をした場合には【日産】が【ルノー】株式の買い増しをすることを容認している。日産が【ルノー】株を買い増しして【日産】の【ルノー】株式の保有比率が25%を超えれば、日本の【会社法】の規定により【ルノー】の保有する日産株式の議決権は消滅する。【日産】は【ルノー】議決権を奪う行動に打って出る可能性が高まったことになる。

【日産】は今後、フランス政府との消耗戦に突入することになるであろう。   (おわり)

 

 

 

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2019年6月 5日 (水)

FCAとルノーの統合協議開始をフランス政府は容認するのか

米国の自動車メーカーの【クライスラー】を傘下に持つ【FCA】(フィアット・クライスラー・オートモビールズ)(登記上の本社、オランダ・アムスレルダム)は5月27日、一対一の株式比率による両社の事業統合を提案する、法的拘束力を持たない、意向表明書をルノー取締役会の送付したと発表した。

【FCA】は欧米市場を主力市場とするメーカーで、2017年の世界販売台数は474万台、そのうち北米(カナダとメキシコを含む)では前年比7.2%減の240万1000台、欧州及び中東は136万5000台であった。2018年の世界販売台数は前年比2.2%増の484万台出、北米市場は前年比5.1%増の253万4000台、欧州・中東・アフリカ市場で前年比4%減の142万8000台であった。

一方、統合の提案を受けた【ルノー】(ルーマニアのメーカー・ダチアとロシアのラーダを含む)の2017年の世界販売台数は、前年比8.5%増の376万台であったがロシアメーカーの【ラーダ】を傘下に収めた結果の販売増で【ルノー】の自体の販売が増えたわけではない。2018年の世界販売台数は前年比3.2%増の388万台であったがこれも【ラーダ】の販売台数が前年比で18.5%増えたことが主たる原因である。

【FCA】は【ルノー】に対して具体的には完全な合併によって合計販売台数870万台となる世界第3位の自動車メーカーとなることを提案した。販売台数870万台は【VWグループ】(ドイツ)の1083万台、【トヨタ】(ダイハツと日野を含む)の1059万4000台に次いで3位となる。自動車メーカー単体では【VW】の2017年の世界販売台数は623万台、【トヨタ】は938万台であるから【VW】は【トヨタ】の壁を超えるのはかなり難しい。しかも【VW】は中国で400万台を販売しているが中国メーカーとの合弁会社なのでその利益は折半となり、純益の面でも【トヨタ】超えは難しい。規模を追うメリットは当然存在するがその反面デメリットも大きいのである。

【FCA】の提案は株式の一対一の合併であることから新会社が設立された時点で【ルノー】の株式を15%保有するフランス政府の株式は新会社では株式保有比率は7.5%となり、フランス政府の議決権も半減する。【日産】は15%のルノー株式を保有しているが議決権が付与されていないので【ルノー】の経営に関与できず【日産】にとっては大きな不満の種であった。新会社では【日産】に7.5%の議決権が与えられるという。

フランス政府は新会社では議決権は7.5%しか与えられないので従来のような影響力を行使できないし、配当も半減する。そのような条件をフランス政府が受け入れられるのかは非常に疑問である。【ルノー】は6月4日の取締役会議で【FCA】と協議を開始するか否かの決定をする予定であったとされるが決定を先送りした。フランス政府との協議が難航しているであろうことは容易に推測がつく。民営化された企業に対してフランス政府がいつまでも影響力を行使し続けるのは国際的には非常識であろう。   (おわり)

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2019年6月 4日 (火)

販売台数拡大の【つけ】は大きかった日産自動車

【日産自動車】は1990年代後半には有利子負債2兆円を抱えていたことから自主再建は困難と判断して1999年フランスの大手自動車メーカー【ルノー】の傘下に入った。この年の【日産】の世界販売台数は253万台で改革が始まった2000年の世界販売台数は263万3000台と10万台増えた。ライバルの【トヨタ】の20世紀末の2000年の世界販売台数は338万2800台であったからその差は75万台であった。

【トヨタ】はその後、順調に販売台数を伸ばし、米国の住宅バブルのピークの2007年には世界販売台数(海外622万9300台、国内169万2200台)は842万万9000台となり、400万台に届かなかった【日産】に大きな差をつけた。リーマンショックの影響が顕著になった2009年の【トヨタ】の販売台数は697万9500台でリーマンショック前後の販売台数の落差は146万台となった。それに対して【日産】の2007年の世界販売台数は358万5000台、2009年は351万5000台であるからトヨタに比較すれば販売台数減は軽微であった。但し【日産】も主力市場の米国では07年の106万8000台から09年には77万台と29万8000台という大激減に見舞われた。

日産にとっての主力市場の一つ米国市場の立て直しが急務となり、販売台数の増加を図るために値引きの原資となる系列の販売会社への販売促進費(販売奨励金)を増額し、車両を大量に購入するタクシー会社やレンターカー会社への売り込み(フリート販売)合戦に参戦した。その結果、2009年の77万台から2017年には159万台と販売台数は2倍以上となった。

だが「好事魔多し」で【販売奨励金】の急増とフリート販売は【日産】の純益を著しく低下させる結果となった。【フリート販売】は販売増の特効薬であるがその副作用も大きい。タクシー会社などに納車した車両は1年後には購入代金と同額で買い戻すというのが業界の常識と言われている。結局買い戻した車両は中古車となり、それを売却することによって最終的には赤字の取引になる。これを多用して販売台数1位の座を約30年間維持してきたGMも昨年、過酷な条件を突き付けられるフリート販売から足を洗った。

2017年の【日産】の世界販売台数は577万台と過去最高となり、2017年の売上高は11兆9512億円純利益は7469億円となったが米国の減税と円安の恩恵を被った面もある。2018年の決算では【販売奨励金】を減額したことなどから世界販売台数は551万6000台と前年比25万4000台の減少となり、売上高は前年比で8770億円減の11兆5742億円となった。さらに悲惨だったのは純利益が前年比57.5%減の3182億となったことである。

【日産】も【トヨタ】を見習って純益を犠牲にしてまでの販売増を追い求めないことである。【トヨタ】の2018年の世界販売台数は954万台で、【日産】とは400万台の差がついている。純益では約1兆9000億円の開きができた。グループ販売台数ではドイツの【VW】が世界一であるが単体ではトヨタは【VW]】を320万台引き離し、純利益でも【トヨタ】は【VW】の追従を許さない。

【日産】は販売台数増の罠から抜け出すべきなのである。   (おわり)

 

 

 

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2019年5月27日 (月)

ルノーは欧米連合【FCA(フィアット・クライスラー・オートモビールズ)】の統合の提案を受け入れるのか

【日本経済新聞】が2015年7月に買収した英国の日刊有力経済紙【FT(フィナンシャル・タイムズ)】は5月25日、欧米連合の自動車グループ【FCA】(フィアット・クライスラー・オートモビールズ)がフランスの大手自動車メーカーで販売台数世界2位の自動車グループ【ルノー・日産・三菱連合】の盟主【ルノー】に統合を提案したと報じた。

【FCA】は、2014年に設立された登記上の本社をオランダのアムステルダムに置く持ち株会社で、傘下にイタリアの自動車メーカー【フィアット】、米国の【クライスラー】、イタリアの高級車メーカー【アルファロメオ】や【マセラッティ】を持つ。2014年通期の世界販売台数は461万台、設立当時の5年計画で2018年には世界販売台数700万台を目標に掲げていたが2018年の販売台数は484万台,で目標を大幅に下回った。目標未達の要因の一つは中国での販売不振である。中国市場での2018年の販売台数の目標は85万台であったが実際には販売台数は前年比で17.4%減の22万台にしか過ぎなかった。

【FCA】の2018年通期の売上高は14兆3640億円、純利益は約4500億円であった。これでは研究開発費や投資の資金が不足することになる。【FCA】は生き残るためには規模の拡大が必要不可欠と判断して【ルノー・日産・三菱連合】に統合を提案したのであろう。

統合を持ち掛けられた【ルノー・日産・三菱連合】の2018年の世界販売台数は、【ルノー】が前年比3.2%増の388万台、【日産】が2.8%減の565万台、【三菱】が18.4%増の122万台で1075万台で【VW】とは8万台の差で世界販売台数2位となった。【日産】は販売台数の目標必達のため米国市場では系列のディーラーに【販売奨励金】という名目で値引きの原資を提供していた。18年には【販売奨励金】の額を減らしたために販売台数が減ったのである。

【日産】の2018年通期の販売台数の減少は純利益の減少と直結し、2018年通期の【純利益】は前年比57.3%減の3182億円となった。【日産】の大幅な減益は【日産】の株式の43%を保有する【ルノー】にも伝播し、【ルノー】の2018年通期の純地益は前年比36.6%減の4312億円となった。

【日産】の今年1~4月の米国販売台数は前年比で4万2000台減少し、中国の同期の販売台数は昨年比で0.9%という微増で通年では減少に転じる可能性を否定できない。【日産】の販売台数が2年連続で減少すれば【ルノー・日産・三菱連合】の世界販売台数第2位の地位も危うくなる。

【ルノー】が【FCA】の提案を受け入れても米国市場で昨年253万台を販売した【FCA】と149万台を販売した【日産】は競合することになる。競合の結果社とも販売台数を減らすリスクさえある。統合が成功した2つの例と言われる【FCA】と【ルノー・日産連合】の統合が成功するという保証はどこにもない。【ルノー】と【日産】の関係が微妙な時期であるから提案の受け入れは先送りすべきではなかろうか。   (おわり)

 

 

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2019年4月23日 (火)

ルノー・日産統合に向け本性を現したルノーのスナール会長

フランス自動車メーカー大手のルノーの会長兼CEO(経営最高責任者)の退任を受けてルノー会長に就任したフランスのタイヤメーカー大手のミシュランのCEOのジャンドミニク・スナール氏は交渉のプロという評価を得ている。ルノーのスナール会長は就任以来、ルノー・日産の統合文団には極力触れず、ルノー、日産、三菱自動車の三者協議を優先してきた.だがそうした協調路線をスナール会長はかなぐり捨てて【ルノー・日産の統合】を今年度中に実現する方針に切り替え、そうした提案を4月中旬に日産に申し入れたとマスコミは報じた。

日産傘下の三菱自動車を含めた【ルノー・日産・三菱連合】の世界販売台数は2017年が前年の996万台から1060万8366台と約65万台増えてVWグループに次いで世界2位に躍り出た。2018年はさらに販売台数を15万台伸ばし、1075万6875台で2年連続でVWに次いで世界2位となった。しかし、数を追及する戦略はかつてトヨタが陥ったような弊害を伴う。販売台数を意識するあまり他のメーカーとの値引き合戦に巻き込まれ、利益率を落とすのである。昨年(2018年4月1日~2019年3月31日)の決算内容がまだ公表されていないので2018年3月期(2017年4月~2018年3月)の決算内容を利用するとトヨタの純利益は2兆4000億円で純利益率は8,3%、それに対して【日産】純利益は7462億円で純益率は4.8%である。マスコミが話題にする自動車メーカーグループの世界販売台数はあまり意味がない。

自動車メーカーの単体の販売台数で比較すると2017年の世界販売台数のトップ8は①【トヨタ】934万台、②【GM】797万台、③【VW】623万台、④【日産】581万台、⑤【ホンダ】522万台、⑥【フォード】491万台、⑦【現代】451万台、⑧【ルノー】376万台である。2018年のトヨタの販売台数は過去最高の954万台で中国での販売台数が前年比で19万台増えたことが販売増の原因である。日産は米国での販売減の影響で前年比4.5%減の548万6900台であった。

ルノーの手のひら返しの提案は筆頭株主のフランス政府の意向が色濃く反映されていると考えるべきであろう。フランスは2019年3月時点での【失業率】は8.82%で日本の2月の失業率2.3%に比べればかなり高い。さらにフランスで問題なのは若年労働者層(15~24歳)の失業率が20%を超えているということである。それを解消する一助としてマクロン大統領はルノー・日産の統合を強く望んでいるのである。マクロン大統領はEU首脳の中ではEU離脱を模索する英国に対して最も強硬な姿勢を示し、英国の合意なき離脱を望んでいるフシがある。

英国が合意なき離脱に踏み切れば英国に進出している日産とトヨタは生産拠点をEU域内に移さざるを得ない。その際、日産がルノーの支配下に入れば日産はフランス国内に生産拠点を移すことになるであろう。それに伴い部品メーカーもフランスに移転し、数万単位の雇用が新たに生まれることになる。マクロン大統領の目論見通りにいくかどうかは【G20サミット首脳会議】に出席のため6月下旬に来日するマクロン大統領と安倍首相との日仏首脳会談の結果次第となる可能性が浮上してきた。   (おわり)

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