カテゴリー「12国内経済」の記事

2019年5月21日 (火)

内需の低迷から脱出できない日本経済

内閣府は5月20日、2019年第1四半期(1~3月)のGDP速報値を発表した。物価の変動を除外した実質GDPの伸び率は直前の3カ月(2018年10~12月 2018年第4四半期)に比べて05%増となり、2018年第4四半期に続き、2期連続のプラスとなった。

実質GDPが0.5%増(年率換算で2.1%増)となった最大の要因は、【財貨・サービスの純輸出】(輸出―輸入)が前期比で0.4%増えたことによる。【輸出】は中国へのIT関連製品の輸出の大幅減少によって前期比で2.4%の減少となったが【輸入】が原油価格の暴落によって大幅に減少し、前期比で4.6%減となったために【純輸出】は前期比で0.4%増に転じたのである。【輸入】の減少によって【純輸出】がプラスになったという状況は歓迎すべき事態ではない。

【実質GDP】の0.5%増加の寄与度は個人消費(-0.3%)や民間の設備投資(ー0.1%)が減ったことにより【実質国内需要】(内需)は0.1%、【財貨・サービスの純輸出】は0・4%であった。GDPの5割を占める【個人消費】が低迷していることが日本の経済成長率の伸びが緩やかな原因なのである。

2012年12月の衆院選で自民党が政権復帰し、第2次安倍内閣が本格的に始動し始めたのが2013年4月からであった。3月に黒田東彦アジア開発銀行総裁が日本銀行総裁に就任して、日本は先進国と歩調を合わせるように金融緩和政策を採用し、円安・株高の状況が生まれ、【アベノミクス】と安倍内閣の経済政策は持て囃された。金融緩和政策により円安状況が生まれ、円高で業績が低迷していた日本の自動車産業を中心とする輸出主導型産業は息を吹き返した。

2013年以降の実質GDP成長率は13年が+2.6%、14年が消費税率3%引き上げの影響で成長率はー0.4%、15年が+1.3%、16年が0.9%、17年が1.9%、18年が+1.2%と推移している。円換算のGDPは、13年が507.3兆円、14年が518.2兆円、15年が533.0兆円、16年が536.8兆円、17年が547.4兆円、18年が549.0兆円である。円換算のGDPは円安になれば金額は大きくなり、円高になれば金額は減る。15年にGDOが15兆円も増えたのは円安によるものであり、18年が1.6兆円しか増えていないのは円高に振れたからである。

経済が成長を遂げて円熟期に入った先進国はGDP成長率が2%を超えれば経済状況は良好であると言われている。【アベノミクス】で2%を超えたのは13年だけである。17年は1.9%であるから合格点と見做していいであろう。

内需拡大の鍵を握っているのは【個人消費】であるが可処分所得が増えない限り、個人消費が増えることは望み薄である。【個人消費】拡大には【最低賃金】の地域格差の是正と非正規雇用者を減少させることが必要不可欠であろう。   (おわり)

| | コメント (0)

2019年4月 9日 (火)

中国経済の減速の影響が日本の一部地域の経済に波及

財務省は4月8日、2019年2月の【国際収支統計】を公表した。【国際収支統計】とは日本銀行(日銀)の説明によれば「ある国が外国との間で行った財貨、サービス、証券などの各種取引の決済資金のなどを体系的に把握、記録した統計」である。【国際収支統計】の主な項目は、【経常収支】、【資本収支】及び【外貨増減】があり、【経常収支】は貿易収支、サービス収支、所得収支、経常移転収支で構成されている。  2019年2月の【国際収支統計】のうち【経常収支】に含まれる【貿易収支】は4892億円の黒字で前月より2893億円黒字幅が拡大した。【輸出】は6兆3070億円前月より1218億円の減少、【輸入】は5兆8178億円で前月より4112億円の減少。【サービス収支】は2366億円で前月より689億円増えて黒字幅が拡大。【第1次所得収支】は2兆9145億円で前月より621億円増えてこれもまた黒字幅が拡大した。【第2次所得収支】は635億円の赤字で赤字幅は縮小した。                                           【輸出】の減少の原因は金額にして【自動車】が前月比5.6%の減少、【鉄鋼】が13.8%のマイナス、【半導体等電子製品】が10.7%の減少したからである。【輸入】は原粗油は金額で前月比で11.2%の減少、石油製品が27.9%マイナス、医薬品が18.9%減少した。2月の輸出額が減少したにも拘らず【貿易収支が黒字】になった要因は、原油価格の下落によって【輸入額】が減少したためである。             今年に入っての対中国貿易収支は1月が輸出が9581億円と1兆円割れで、輸入は1兆8381億円で8799億4100万円の赤字、2月が輸出が1兆1397億6700万円、輸入が1兆2708億6400万円と1310億9700万円と昨年に比べて赤字額が大幅に減少している。ここにも中国経済の減速が浮かび上がっている。                                                     【日銀】は四半期(3カ月)ごとに全国支店長会議を開いている。4月8日に今年2回目の支店長会議が開かれ、その席上で【景気の動向】が議論されて、同日、【地域経済報告】(さくらリポート)が公表された。同リポートでは全国9地域のうち東北と北陸、九州・沖縄の3地域の【景気総括判断】が引き下げられた。景気判断の引き下げの理由は、工作機械や電子関連部品の海外の需要が減り、輸出や生産の減少の原因となっているからだ。                                                          今年1月の第1回目の【全国支店長会議】から海外の経済に対する認識が大きく変化した。1月の【さくらリポート】では米中貿易摩擦などの影響を「現時点では限定的」記していたが今回のリポートでは「輸出や生産に海外経済の減速がみられる」と明記された。中国政府は経済減速を放置するわけにはいかず各種の経済浮揚策を打ち出している。その効果が表れるの今年の下半期であろう。                日本は10月1日から消費税率が2%引き上げられる。それ以前に中国経済の減速が止めばと期待するばかりである。   (おわり)

 

 

 

| | コメント (0)

2019年3月27日 (水)

東南アジアの賃金上昇、訪日外国人の旺盛な購買意欲、円安が日本企業の国内回帰や国内の生産力増強を招いた

2012年11月16日に衆議院が解散された時点の円相場は1ドル=80円であったが約2年9カ月後の2015年8月12日の円相場は1ドル=125円で、45円の円安の状況が生まれた。この大幅な円安の時期に日本の家電メーカーの最大手の【パナソニック】(大阪府門真市)は家庭用【LED照明】を日本向けに輸出していた【パナソニック】のインドネシアの西ジャワ州の工場を閉鎖して三重県伊賀市の伊賀工場に全面移転した。円安の状況下では自社製品を輸入すれば利益が減るからである。【パナソニック】はインドネシアの東ジャワ州でも工場を稼働させているが西ジャワ州は首都ジャカルタの都市圏で物価が高く生産コストが東ジャワ工場より高いために閉鎖を決断したということになる。

その後、中国の労働者の人件費が高騰したことにより中国に進出していた日本企業はより人件費が廉価な東南アジア諸国に生産拠点を新たに設ける動きを加速させてきた。その動きと同時並行的に【訪日外国人客数】が急増して日本国内で日本の家電製品や日用雑貨品、化粧品などの売り上げ高が急増している。

【訪日外国人客数】は円安に方向転換した2013年が初の1000万人超えの1036.4万人、14年が1341.3万人、2015年が1973.7万人、2016年が2403.9万人、2017年が2869.1万人、2018年が3119.2万人と推移してきた。16年以降、【訪日外国人客数】の増加数に陰りが出てきているが訪日外国人の買い物金額は増え続けている。【訪日外国人】の購買意欲に対応するために関連する企業は日本国内の生産力増強のために工場の新設や既存の工場での生産力の増強がが相次いでいる、

【コーセー】(化粧品)は群馬県伊勢崎市の既存の工場内に新生産棟を稼働させ、中国の生産子会社を売却した。新生産棟ではスキンケア製品(化粧水や乳液)とコーセーの催告救貧ブランドの【コスメタリー】の製品を生産する。伊勢崎工場は本社機能を持ち、製品開発の拠点となるマザー工場となる。                                                      【ネスレ日本】(食品)は兵庫県姫路市の既存工場内にヒット商品のチョコレート菓子【キットカット】の新工場を17年8月に稼働させた。【東レ】は滋賀県大津市に紙おむつ用の不織布を開発する拠点17年10月に新設している。【ホンダ】は17年10月に二輪車の【スーパーカブ】を熊本県の大津町の工場で生産を再開させた。2016年4月の熊本地震で大津工場の一部が被害を受けたために一時的に中国で生産していたがそれを移管したのである。

【キャノン】は宮崎県高鍋町にデジタルカメラ用の新工場を建設し、19年中に稼働させる予定である。【資生堂】は栃木県大田原市と福岡県久留米市に新工場を建設し、19年と21年に稼働させる予定。

昨年の第3四半期から中国経済の減速が顕著になってきた。その影響で訪日中国人の増加率が鈍化してきたのが目立つ。さらに悪材料として中国政府は昨年末から中国人の海外での商品の代理購入を禁止する措置を講じ出した。今年から中国人の日本での買い物金額は減少することになることは確実であろう。もっともインターネット―通販が普及しているので売上高は減らないかもしれない。但し、企業の積極策が裏目に出る可能性はなきにしもあらずである。   (おわり)

 

 

 

| | コメント (0)

2019年2月 6日 (水)

国内回帰を始めた日本の化粧品、日用品製造業

経済のグローバル化の波に飲み込まれて生産拠点を海外に移転して日本の製造業界であったが2013年の安倍内閣による【大胆な金融緩和策】により円安が進行し、それに伴い中国、韓国を中心とする【訪日外国人旅行者数】が急増し、日本旅行の土産品として日本製の日用品や化粧品の需要が飛躍的に増大した。
内需拡大策の一環として【ビジット・ジャパン】と銘打った訪日外国人の誘客キャンペーンが始まったのは2003年4月からである。この年の【訪日外国人旅行者数】は521.1万人であったがそれ以降、【訪日外国人旅行者数】は順調に増えている。だが、その間、09年と11年には外国人旅行者数はリーマンショックと東日本大震災の影響で前年より150万人以上減っている。
【訪日外国人旅行者】が初めて1000万人を超えたのが2013年で1036万3000人、2000万人を超えたのが2016年で2403万9000人であった。2018年には3119万1000人と3000万人を突破した。
【訪日外国人旅行者数】を国別にみると2003年には145万9000人で韓国人が1位、中国人は44万8000人で3位にすぎなかったが、18年には中国人の訪日旅行者数は838万人にまで膨れ上がり、韓国人は2位で753万9000人であった
【訪日外国人旅行者数】の急増は当然のことながら旅行消費額の増大という形に反映され、2018年の訪日外国人旅行者の旅行消費額は4.5兆円と日本の名目GDPの0.8%を超えている。旅行消費額が一番多かったのが中国人で1.5兆円で全体の3分の一を占める。
2017年の政府観光庁の【訪日外国人消費動向調査】によれば【旅行消費額】の中で1位は【土産品代】で全体の37%を占めている。日本旅行の土産物として人気が高いのが①医薬品・健康グッズ・トイレタリ―(身嗜みのための製品、ボディケア、スキンケア、ヘアケア商品など)で53%の旅行者が購入、平均購入額は16570円、②【化粧品・香水】46.2%、平均購入金額は28614円、③が菓子類や飲料、酒類などの食品類。
中国人の①の購入率は78.7%と平均を大きく上回り、一人当たりの平均購入額も48153円と平均より19500円多い。②の購入率は73.1%、一人当たりの平均購入額は26495円でこれも約10000万円多い。
こうした調査結果と好調な売上高の増加を踏まえて化粧品大手の【資生堂】や日用品大手の【ライオン】、【花王】などが国内の生産力増強に投資をし始めたのである。
化粧品製造国内最大手の【資生堂】は、栃木県太田原市と福岡県久留米市に土地を購入済みで、大田原工場は2019年、久留米工場は2021年に稼働予定。
紙おむつなどの衛生用品の大手で、ベビーケア、ヘルスケア関連ではアジア首位の【ユニ・チャーム】は福岡県京都(みやこ)郡苅田町に【紙おむつ】製造の新工場を2018年夏に稼働させる予定であったが建築工事が遅れている模様。
歯ブラシや歯磨き粉などの【オーラルケア(口腔の手入れ)】商品に強い日用品大手の【ライオン】は香川県坂出市の100%子会社【ライオン・ケミカル】工場の敷地内に歯磨き粉の新工場を2021年から稼働させる予定。
家庭用品国内最大手、化粧品国内2位の【花王】は既存の神奈川県小田原市の小田原工場の洗顔料の生産能力を倍増させる。
上記の企業が日本国内で数百億円の投資を決断したのは中国や東南アジアの女性には【日本製】(日本国内で製造された製品)に対する信頼度が高く、越境の電子商取引の取引額が経産省の調査では2018年には1.6兆円に達している。スポーツ用品世界トップの【アディダス】がスポーツウェアの縫製をクレームが多発していた中国製からドイツ国内に移転した前例に倣ったと思われる。
不況時にも消費が安定している化粧品や日用品製造業の国内回帰は日本経済にとって歓迎すべき事態であろう。
   (おわり)


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年11月19日 (月)

深刻な人手不足を反映する19年春卒業の大学生の就職内定率

文部科学省と厚生労働省はバブル崩壊後の新卒大学生の就職が困難となった【就職氷河期(1993~2005年)】と呼ばれた時代に突入して4年目の1996年に大学卒業予定者の【就職内定率】の調査を開始した。両省は11月16日に公表した【大学等卒業予定者の就職内定状況調査】によれば、2019年春に卒業予定の大学生の就職内定率が10月1日時点で77.0%と前年同期より1.8ポイント上昇し、過去最高となったと発表した。上昇は3年連続。文科省は「景気回復が続き企業の採用意欲が高まっており、求人数も増えていることが要因」としている。
【就職内定率】とは就職希望者に占める内定取得者の割合である。
調査を開始した初年度の1996年と翌年の【就職内定率】は69.9%であった。消費税率が2%上がり5%となったのは97年4月1日からであるがその影響が日本経済に顕著に表れ出したのは98年以降である。消費税率2%アップの影響が大学生の就職戦線に表れ出したのは99年からで実体経済と就職内定率には1年間のタイムラグが見て取れる。
日本経済のバブルは1986~1991年であるがその間バブルの恩恵を被った銀行、不動産、建設、自動車や電機などの製造業界は大量の大学の新卒者を雇用したがバブル崩壊後の92年から3年間は各業界は新卒の採用を極端に手控えている。だが企業の将来を考えれば新しい人材の採用を長期間抑えるわけにはいかず、98年には【就職内定率】は前年比で2.7%増の73.6%に上がった。
しかし、翌99年には消費増税の影響が顕在化し、99年の名目GDPは2年間で24兆4909億円減少し、企業業績が悪化した結果、99年の【就職内定率】は前年比で6.1%減の67.5%となった。それ以降は60%台前半で推移し、2004年には60.2%にまで下落した。
しかしながら、05年以降は米国の住宅バブルの好景気に支えられて日本の自動車や電機産業などの輸出主導型産業の業績が好調でリーマーンショックの影響を受けながらも09年の【就職内定率】は69.9%にまで回復した。だが11年には東日本大震災が起こりーマンショックの影響が本格化したこともあって、11年の【就職内定率】は過去最低の57.6%となった。
それ以降、就職活動解禁日の変更のあった15年を除いて【就職内定率】は上昇を続け、昨年は史上最高の77%にまで上昇した。内定率の上昇は人手不足を反映していることを意味する。
【日本経済新聞】がまとめた主要企業952社の大学院卒を含む19年春の大学卒業予定者の内定者数は、10月1日時点で【製造業】が430社で前年比4.1%増の4万1035人、【非製造業】】が522社で前年比0.1%増の7万9164人である。
製造業の業種別の内定者数は【紙・パルプ】が前年比15..8%減の208人、【医薬品】が8.5%減の986人、鉄鋼が5..3%減の1242人、【石油が11.9%増の300人、【窯業】が25.6%増の461人、【印刷】が14.4%増の605人。
【非製造業】の【銀行】が前年比16.1%減の10006人、【【保険】が12.9%減の4162人、【空運】21.9%増の1660人、レジャ―】が20.4%増の136人である。
前年の内定者数を下回っている業種は学生に人気がないということであろうし、さらに言えば短期的な企業の業績見通しが明るくないということであろう。
前年の内定者数を上回っている業種は学生に人気があり、ここ数年の企業業績が住宅・マンション建設の好調さや訪日外国人数の増加で好調ということなのである。   (おわり)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年11月14日 (水)

日本経済の再生には男女と正規・非正規の賃金格差の是正が鍵

内閣府が11月14日に発表した今年の第3四半期(7月~9月)の【GDP】(国内総生産)速報値は、物価の変動を除いた実質の伸び率が第2四半期(4~7月)と比べてマイナス0.3%、年率に換算してマイナス1.2%となり、2四も期ぶりにマイナスに転じた。台風や地震などの相次いだ自然災害の影響などで個人消費や輸出が振るわず、景気が再び足踏みした形である。
今年の第1四半期(!~3月)のGDP成長率は、2015年の第4四半期(!0~12月)以来のマイナス成長で前期比年率換算で0.9%のマイナス成長率であった。その原因も個人消費の不振と輸出が減少したことによる。第2四半期(4~6月)のGDP成長率は1.9%の伸びである。
GDPの算出に必要な主な項目をみると【輸出】は、北海道胆振地方東部で9月6日未明に発生した地震や、25年ぶりの強い勢力で9月4日に日本に上陸し、近畿地方を中心に甚大な被害を齎した台風21号の影響で関西空港が一時閉鎖されるなど相次いだ自然災害で、自動車などを中心に振るわずマイナス1.8%と落ち込んだ。輸出のマイナスは5四半期期ぶりである。さらに統計上は「輸出」に含まれる外国人観光客による消費が、災害の影響で低調だったことも響いた。
日本のGDPに占める割合が最も大きい【個人消費】も相次ぐ自然災害で外食を摂る人や旅行に出かける人が減ったことなどから、マイナス0.1%となった。
企業の「設備投資」も自然災害で、設備の納入が滞った影響で、マイナス0.2%と8四半期期ぶりに減少している。さらに【公共投資】もマイナス1.9%の大幅な減少となった。
大胆な【金融緩和】、【財政出動】、【規制緩和】を3本の柱とする【アベノミクス】と政府が命名した安倍内閣の経済政策が開始以来5年以上が経過したがその成果は大企業や都市部には現れたが地方は取り残されたままである。【金融政策】(金融緩和)だけでは一国の経済再生は無理があるということなのであろう。地方在住の人々の可処分所得が増えない限りは【個人消費】は増えないのである。
日本経済を蝕んでいる要因の一つは、地方自治体や企業が非正規の職員や従業員の採用を多用していることだ。非正規の【職員や従業員】の年収は男性では100万円~199万円が38.8%、100万未満が26.9%と合計で65.7%を占めている。
女性の場合、正規の職員と従業員でも年収が200~299万円が28.1%、非正規の職員と従業員の年収は100~199万円が38.8%である。
正規と非正規の賃金格差、男女の賃金格差の是正に政府がメスを入れない限り日本経済の再生は絵空事に終わる可能性が高い。今後必要なことは金融政策ではなくて労働政策の改善なのであろう。   (おわり)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年11月13日 (火)

日本の製造業は品質検査不正に歯止めをかけられないのか

2017年秋に入って【日産自動車】の複数の工場で無資格者が完成車検査を行っていた事実が発覚。その後、【監督官庁】の国土交通省の通達を受けて自動車メーカー各社が社内チェックを行った結果、【SUBARU(スバル)】(旧社名富士重工)でも同様の不正が確認された。
さらに、公的規格あるいは顧客の仕様を満たさない製品を、製品検査の結果の改竄や捏造などによって「仕様を満たしたもの」として出荷していた神戸製鋼所。これらの事件の余波はいまも続いている。
但し、これらの不正は30年以上も前から行われており、これらの不正によってリコール(無料修理)は起こっていないという事実がある。つまり、製品の品質に問題があったわけではない。
自動車メーカーの【完成車検査】は戦後間もない1951年(昭和26年)に制定された【道路運送車両法】で定められた検査を公的機関が行わずにメーカー自身が行っていた。【完成車検査】は法律が施行された当初から形骸化していたのである。
現在、日本の自動車メーカーの自動車組み立てラインの全工程で綿密な検査が実施されており、完成時の検査に合格しないような不良車は事実上存在しない。【完成車検査】は無意味なのかもしれない。
【日産】と【スバル】ではこの完成検査を無資格者が行い、有資格者の検査合格印を無資格者が捺印していたことが問題となった。完成車検査の資格者の認定はこれまた各メーカーが行っている。この代理捺印が問題とされるとしたら自動車メーカーが各社が有資格者の養成に積極的に取り組まなかったことであろう。
同じ不正でも問題なのは、車の性能届け出値に関する【燃費不正問題】であろう。【三菱自動車】が行った【燃費不正】は、新型車の届け出燃費を改竄・粉飾によってよく見せた不正である。
今年の8月には【マツダ】,【スズキ】、【ヤマハ発動機】の【排出ガス抜き取り検査の不正】が発覚した。【燃費不正】と【排出ガス不正】はメーカーが責任をもって根絶すべき問題である。
2017年10月に発覚した神戸製鋼所をきっかけに三菱マテリアル、東レなどと続いた日本企業の品質管理データ改ざん問題は、弁護士らによる社外調査委員会の調査により事件の核心が解明されてきた。事件の原因は品質に関する現場の過信と、サラリーマンなら従わざるを得ない社内の生産至上主義や永年にわたる悪しき慣習にあったとされる。
【川崎製鋼】や【三菱マテリアル】、【東レ】といった【素材メーカー】には共通項として「受注の獲得と納期の達成を至上命題とする風土」があり、長期間の部品メーカーとの取引を通じて「仕様を逸脱しても一定程度なら安全性の問題はないため出荷しても構わない」という誤った考え方が醸成されていったのである。
品質管理データの改竄を撲滅するには経営トップの【強い意思】が必要である。そして経営とトップの「データの改竄をしない」という意思を生産現場に徹底させる努力を怠ってはならない。   (おわり)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年10月27日 (土)

マツダはトヨタの傘下に入るのか

日本の製造業を代表する【自動車産業】の主戦場は現時点では米国である。米国で【住宅バブル】が弾けた2008年の米国新車販売台数は1324万2701台であった。同年9月に住宅バブルが弾けて100年に1度と言われる金融危機【リーマンショック】が起こっている。【リーマンショック】の影響が顕著になったのは翌年の2009年で、米国の新車販売台数は前年比21.2%減の1042万9553台である。
【リーマンショック】の影響を最も受けたのは信用力の低いにも拘らず住宅ローンで住宅を購入した低所得者層で、中所得者層で住宅を購入しなかった人たちには住宅などの資産価値が下がった程度の損害を受けただけであったから2010年の新車販売台数は前年比10.3%増の1158万8783台、11年が1277万8171台、12年が1449万1873台、13年が1560万0199台、14年が1652万2000台、15年が1747万9469台と6年連続で高い伸びを示した。
16年は伸びが鈍化したが1755万0351台と過去最高の販売台数であった。2017年の新車販売台数は1723万0436台で16年を下回ったので米国の自動車の需要は最盛期を過ぎたのかもしれない。2018年1~9月の販売台数は前年比0.9%減であるから今年の新車販売台数は1700万台に届かいない可能性が出てきた。
2017年の日本メーカーの米国販売台数は、①【トヨタ】234万4518台、②ホンダ164万1429台、③【日産】159万3464台、④【スバル】64万7956台、⑤【マツダ】28万9470台、⑥【三菱】10万3686台で、合計は671万0229台であった。日本車の米国市場のシェアは約39%である。
【日本車】の日本での新車販売台数の最高は【バブル最盛期】の1990年の約777万台で、それ以降、販売台数は減少傾向にあり、2017年の新車販売台数は523万4166台台で最盛期より254万台減っている。
2017年のメーカー別の販売台数は、①【トヨタ】155万6301台(シェア45.9%)、②【日産40万8560台(12.0%)、③【ホンダ38万1835台(11.3%)、④【マツダ】16万2274台(5.0%)、⑤【スバル】12万1989台(4.3%)、⑥【スズキ】10万9580台(3.2%)、⑦【レクサス】4万5605台(1.3%)、⑧【三菱】3万5984台(1.1%)、⑨【ダイハツ】2万8067台(0.8%)。
日本では【レクサス】ブランドを含めたトヨタ車と【トヨタグループ】のダイハツのシェアは48%で他のメーカーを圧倒している。しかしながら日本のどのメーカーも日本の市場だけでは企業として生き延びられない。
日本メーカーの中で企業存続のための対応に腐心しているのが【マツダ】である。世界販売台数は2014年が137万5064台、15年が153万4000台、16年が155万9123台、17年が158万3638台と増え続けているが円相場の動向によって利益が安定しない。
【自動車産業】は100年ぶりの【CASE】(つながる車、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる100年に一度の次世代技術革新期に入ったと言われている。これに対応するには膨大な研究開発費を投じなければならない。【マツダ】一社だけではこの研究開発費を捻出できない。
それ故に【マツダ】は2015年5月から【トヨタと】との提携関係に入った。生産と開発を中心に協業分野を増し、17年8月には資本提携関係を結び、米国アラバマ州での工場の共同建設や電気自動車(EV)や【Conected Car】(つながる車)といった次世代技術の共同開発など具体的な協業項目を決めた。
【日本経済新聞】が10月23日に報じたように【トヨタ】と【マツダ】の販売金融の一体化が実現すれば両社の提携関係は一層深化し、事実上【マツダ】は【トヨタ】の傘下に入ることになり、その結果、【トヨタ】はドイツのVWを抜いて販売台数で世界一の座に復帰することになる。   (おわり)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年10月19日 (金)

虚偽の情報を流し米中対立を煽るトランプ大統領

中国の2017年の対米輸出額(米国の中国からの輸入額)は5050億ドル6000万ドルに対して米国の中国向け輸出額は1304億ドルで輸出額から輸入額を引いた対中国【貿易黒字額】は1304億ドル―5050億6000万ドル=-746億4000万ドル(約41兆2100億円)であった。つまり日本円に換算して約41兆2100億円の赤字ということである。
だがこの赤字額は不正確である。というのは中国からの輸出額というのは中国内で製造された製品を中国から輸出した場合の総額であって、この中には米国企業が中国内の生産拠点で製造した製品も含まれているからである。中国は原材料を輸入して製品を組み立てて輸出しているケースが大半である。中国企業の製品の場合は輸出の取り分は輸出額の3分の1程度と試算されている。
極端な例を挙げれば中国で生産された米アップル社の【iPod】(携帯型デジタル音楽プレイヤー)の300ドルの機種の場合、製造コストは150ドルで、製造は日本、中国、台湾、シンガポールが担当し、中国の取り分はわずか6ドルとされている。それ故に米国の対中貿易赤字の41兆2100億円というのは事実ではない。
さらにトランプ大統領は、中国が2001年に【WTO】(世界貿易機構)に加盟して以降、米国は製造業で300万人の雇用を失った主張しているがこれも事実ではない。
米国の製造業の労働者の数は1979年にほぼ2000万人に達した後、5回を数える景気後退のたびに労働者は急減し、回復することはなかった。2016年12月時点の工場労働者数は1230万人で、800万人分近くの職が失われたことになる。
米国の製造業は,繊維や家電分野は労働コストの低い他国に譲り、ITを中心としたハイテク産業に力を注ぎ、宇宙工学や医薬品などの製造業にシフトしている。その結果、米製造業はオートメ化と上述のような産業構造の変革により効率化と利益率を向上させている。トランプ大統領が主張するようなラストベルト地帯の復権は望み薄であろう。
ところで、トランプ大統領は、貿易赤字の大きい国や地域の中国(貿易赤字第1位)メキシコ(同2位)、日本(同3位)、EUに圧力をかけて有利な貿易協定を締結しようとしている。
とりあえずメキシコとの【NAFTA】(北米自由貿易協定)の再交渉では米国の思惑通りに事が運んだ。メキシコの対米輸出額は2017年には3140億ドルでメキシコのGDP1兆1510億5000万ドルの27.28%に相当する。それに対して米国のメキシコへの輸出額は2430億ドルで米国のGDPの1.3%にしか相当しない。メキシコの輸出額の大半はメキシコに生産拠点を持つ米国や、日本、ドイツの自動車メーカーの自動車輸出代金である。メキシコにとって米国との関係は無視できないので最終的には米国の要求を飲まざるを得なかったということになる。
一方、中国の対米輸出額は2017年の中国のGDPの4.2%に相当するが年間GDPの成長率が6%台を維持している中国(中国の統計であるから信憑性は不確かである)にとって8カ月程度で稼ぎ出せる程度の額である。米国が圧力をかけても中国は動じない、というより米国の要求を飲めば習近平国家主席は国民の支持を失い、失脚の憂き目にあう可能性が高いので米国の要求に応じることはない。
【米中貿易戦争】は米国が中国の面子を立てて譲歩しない限り解決しない。貿易戦争が長引けば不利益を被るのは物価が高となる米国国民である。   (おわり)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年10月18日 (木)

来年10月の消費税率2%アップは景気減速の要因になるのか

消費税率の10%への引き上げは安倍内閣によって2度先送りされてきた。財務省が主張する財政健全化の観点から来年10月の消費税率の10%への引き上げの3度目の先送りは難しい状況であったが、安倍晋三首相は、10月15日の臨時閣議で、消費税率を予定どおり引き上げる考えを示したうえで、消費の冷え込みを抑える対策などに万全を期すよう、関係閣僚に指示しした。
政権交代選挙となった2009年8月の第45回衆院選挙の選挙公約には民主党は消費税の引き上げを掲げていなかった。民主党は政権を獲得したものの経験不足と官僚の協力を拒否したために政権運営に行き詰まり、財務省の協力得る代わりに消費税率の引き上げを決定せざるを得なかった。
2012年12月の第46回衆院選挙で民主党は大敗し、政権担当わずか3年2か月で下野することになった。自民党が政権復帰後、再登板した安倍首相は民主党政権が約束した2014年4月1日からの消費税率8%への引き上げを実行した。
その際、財務省の安倍首相に対する説明は経済成長率を鈍化させない策を講じるので経済成長率の落ち込みは一時的なものでさほど深刻にはならないと説明していた。財務省の説明を信じて安倍首相は消費税率8%への引き上げを決断したとされる。
ところが2014年4月に消費税が5%から8%へ上がった際、増税前に盛り上がった駆け込み需要の反動で自動車や家電製品などを中心に販売が落ち込み、個人消費の冷え込みを招いた結果、財務省の事前の説明の経済成長の鈍化を極力回避するといった説明にも拘らず、増税直後の4月から6月までの第2四半期のGDPはマイナス1.8%に転落。東日本大震災の影響で景気が悪化した2011年年の1月から3月の第1四半期のGDPの落ち込みをを超える大幅なマイナスを記録した。この時のGDPの落ち込みの体験から安倍首相の財務省への不信感は抜きがたいものになったと言われている。
この苦い体験から安倍首相は、16日午前、首相官邸で、「対策に万全を期すために、きのう閣議決定を行った。先に3%引き上げた際の経験を生かしていきたい」と述べ、4年前の2014年に、消費税率を8%に引き上げた際の、消費の冷え込みを繰り返さないために、来年度や再来年度の予算案で万全の措置を講じる考えを強調した。
来年の消費税の2%引き上げは4年前の消費税率3%引き上げの際ほど消費の落ち込みは招かないであろう、というのは食料品に関して【軽減税率】を適用するので税率は現行の8%を維持するからである。
さらに【TPP11】の協定が2019年1月から発効する見通しであるし、【日・EU経済連携協定(EPA】も19年中に発効予定であるから食料品などの輸入関税が引き下げられ、物価が下がるからである。   (おわり)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧