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2020年1月 4日 (土)

トランプ大統領再選の障害となるかラストベルト地帯の製造業の雇用減

ドナルド・トランプ大統領の再選のための最重要政策はラストベルト(錆び付いた工場地帯)の製造業の雇用を拡大させることである。トランプ大統領は就任後、最初に手掛けたことは【TPP】(環太平洋経済連携協定)からの離脱である。【TPP】には自動車及びその部品の関税の撤廃が盛り込まれていたからだ。

米国の最大の製造業は【自動車産業】である。米国の現行の自動車の輸入関税は2.5%であるがこれを撤廃すれば日本やEUからの輸入車が増え、米国の自動車メーカーの生産台数が減少し、雇用の減少につながる。米国の新車生産台数の推移は2014年が1145万台、2015年が1193万台、2016年が1210万台と増え続けていたが2017年からは減少に転じ、2017年は前年比6.7%減の1124万台、2018年は前年比1.8%減の1109万5000台、2019年の1~10月は前年同期比で3.4%減である。米国の生産台数には米国内に生産拠点を持つ日本メーカー(トヨタ、日産、ホンダ、スバル)、ドイツメーカー(VW,,ダイムラー、BMW)、韓国メーカー(現代、起亜)の生産台数も含まれている。

2017年以降、米国市場では【SUV】の販売台数が乗用車の販売数を大きく上回り、その結果、乗用車主体のメーカーのGMやFCAは販売台数を大きく減らしている。その結果、GMはラストベルト地域内の3工場の閉鎖を決定し、フォードは乗用車の製造を停止することを公表した。米国で年間100万台以上販売している主要メーカー(GM,フォード、トヨタ、FCA、日産、現代・起亜)は軒並みに販売台数と生産台数を減らしている。米国市場で販売数を伸ばしているのは年間販売台数60万台のスバルや40万台のVWだけである。もっともスバルは販売数が伸びても増加分は日本から輸出しているため、VWは生産拠点はテネシー州にあるために【ラストベルト】地域の雇用増にはつながらない。

米国の【制裁関税】の発動の恩恵をもっと受けたのは鉄鋼業であるである。米国の2017年の鉄鋼生産量は8164万トンであったが、【制裁関税】によって輸入が前年比で12%減ったことから2018年の生産量は8660.7万トンと大幅に増えた。これは米国鉄鋼業の最大手【USスチール】が2015年から休止していた【ラストベルト】地域内のイリノイ州の高炉2基を2818年に再稼働させたことによって可能になった。長らく低迷していた鉄鋼業界は増産に沸いた。この傾向は2019年上半期の6月まで続いたが、7月以降は減産体制に逆戻りしている。【USスチール】は【ラストベルト】地域内のミシガン州の2基の高炉の休止を発表した。2基の高炉の生産量は毎月20~22.5万トンで全米の生産量の3%に該当する。

【石炭産業】も【制裁関税】の発動によって息を吹き返しかけたが石炭価格と天然ガス価格が2016年上半期には同じ水準になったことにより石炭の需要は激減してしまった。米国産石炭は9割以上が電力分野(火力発電所)で使用される。その他の大口需要先は鉄鋼業界である。火力発電所の燃料は2016年下半期から石炭から天然ガスに転換している。2酸化炭素の排出量が石炭より少ない天然ガスの価格が同じ水準であれば天然ガスが火力発電の燃料として使用されるのが当然の成り行きである。

2019年に【ラストベルト】地域内のミシガン州、ウィスコンシン州、オハイオ州、ペンシルベニア州の4州で自動車や鉄鋼、機械などの製造業で雇用が約5万人減った。苦境に追い込まれた石炭産業の労働組合【米国炭鉱労働者組合】は2016年の大統領選ではトランプ氏を支援したが今回は民主党候補者に鞍替えしようと民主党に働きかけているという。4つの州のうち2~3州でトランプ大統領が敗れればトランプ大統領の再選は絶望的になる。   (おわり)

 

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