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2020年1月

2020年1月30日 (木)

潮目が変わった安倍首相後継争い

盤石と思われた安倍首相の自民党内の基盤に歪(ひずみ)が目立ちだした。その発端となったのが昨年11月8日の日本共産党の田村智子参院議員の参院予算員会での内閣総理大臣主催の【桜を見る会】の私物化疑惑の追及である。【桜を見る会】の安倍首相の私物化疑惑は昨年4月に東京新聞が報じ、5月には同党の宮本徹議員が国会で質問している。だがその時は他のマスメディアは後追い取材をしなかった。

【桜を見る会】の私物化疑惑の火消しに失敗したのは安倍首相のぶら下がり会見での説明が二転三転したからである。後処理を菅義偉官房長官に首相が委ねていれば問題は大きくならなかったかもしれない。だが安倍首相と菅官房長官の間にはこの時期には隙間風が吹いていたのである。NO2は黒子に徹すれば権力を維持できるが表に現れようとすればNO2はその座を失う可能性が極めて高い。

菅官房長官は【令和のおじさん】として国民の人気が高まるとポスト安倍の首相の座を狙いはじめ、無派閥議員を中心に派閥(菅グループ 衆院6、参院3)を結成し、昨年9月の内閣改造では腹心の管原一秀衆院議員(東京9区)を経産相に、無派閥の河井克行衆院議員(広島3区)を法相に入閣させた。しかし、管原経産相と河井法相は辞任に追い込まれた。

昨年9月に実施された日本経済新聞の世論調査での【次期首相にふさわしい人物】という設問に対する回答では小泉進次郎環境相が1位の20%、2位は安倍首相で16%、3位が石破茂元幹事長で15%であった。1位となった小泉環境相は内閣改造前(8月30日~9月1日)の調査の29%から9ポイント減らしている。小泉氏の政治手腕に疑問符を付けた回答者が約3分の1いたということであろう。

【選挙ドットコム】が11月9~10日に実施した世論調査の【次期首相にふさわしい人物】への回答は、電話調査では①石破氏27.40%、②安倍首相26.20%、小泉氏20.60%、④菅氏8.80%。同ネット調査では①安倍首相29.90%、②小泉氏24.40%、③石破氏22.20%、④菅氏10.00%であった。

12月の【日本経済新聞】の世論調査では、1位石破氏20%、2位小泉氏17%、3位安倍首相15%、4位河野太郎防衛相9%、5位菅氏5%、自民党支持層では1位安倍首相25%、2位石破氏17%、3位小泉氏16%、内閣不支持層では1位石破氏31%、小泉氏25%、野党支持層でも1位は石破氏で27%、2位は立憲民主党の枝野幸男代表の22%。

今年の1月25~26日の日本経済新聞の世論調査では1位石破氏25%、2位安倍首相17%、3位小泉氏11%であった。

安倍首相は【桜を見る会】私物化に疑惑とIR汚職問題抱え、小泉環境相は不倫のホテル代金の政治資金流用疑惑で苦境に立たされている。今後、世論の動向に敏感な無派閥議員を中心に自民党内でも石破氏支持が拡大する流れができかねない。   (おわり)

 

 

 

 

 

 

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2020年1月23日 (木)

秋元司衆院議員の再逮捕の真の狙いは中国半導体産業の台頭の阻止か

昨年の12月25日に東京地検特捜部に逮捕された元内閣府IR(統合型リゾート)担当副大臣秋元司衆院議員(48)(東京15区)が勾留期限の今年の1月14日に再逮捕された。再逮捕の容疑は、最初の逮捕時と同じ中国広東省深圳市に本社を置くインターネットくじ販売の【500ドットコム】からの収賄である。

政府はカジノを中心とする統合型リゾートの開業を成長戦略の一つとして捉え、2016年12月には【IR推進法】(カジノ法)を成立させた。この法律の誕生によって日本でのカジノ経営に興味を持つ外国企業が動き出した。その中にはカジノ経営の実績のない中国系企業の【500ドットコム】も含まれていた。【500】は2013年にはニューヨーク株式市場に上場したほどであるからかなりの売り上げがあったのであろうが中国政府がインターネットくじの販売の規制を強化したことから【500社】は赤字に転落し、2015年には中国IT関連企業の大手で国営の複合企業【精華紫光集団】が【500社】の筆頭株主となった。

【精華紫光集団】は中国屈指の工科系大学の【精華大学】の傘下にある。習近平国家主席は【精華大学】の卒業生である。2017年5月14~15日に現代版シルクロード経済圏構想【一帯一路】国際協力サミットフォーラムに親中派の大御所二階俊博自民党幹事長が国会議員団を率いて訪中し、フォーラムに参加している。二階氏は習国家主席と首脳会談を行い、その後、精華大学の名誉教授の称号を与えられている。

筆者の独断と偏見であるが【500社】が日本の政治家に働きかけを開始したのは日中首脳会談後である。秋元議員は二階派所属の議員で、内閣府IR担当副大臣に就任できたのは二階氏の強力な後押しがあったからであろう。秋元議員がIR担当副大臣に就任する3日前の2017年8月4日に【500社】は沖縄県那覇市でIR誘致のシンポジュウムを開催した。秋元議員は同社の最高経営責任者とともに基調講演を行っている。【500社】は2か月後に同社の日本法人を設立した。さらに12月には秋元議員は【500社】の中国広東省の本社を訪れ、隣接するマカオのカジノを視察している。同月、【IR整備法】が成立した。

ところで、中国は【半導体強国】を目指している。現在世界の半導体産業の売上高では韓国の【サムスン電子】と米国の【インテル】がしのぎを削っているが販売高ランキングでベストテン入りしている大半の企業は米国企業だ。但し、NAND型半導体メモリーの生産量では【東芝メモリ】が首位である。中国の半導体製造には東芝の元社員が協力していると言われているために米国は半導体製造では中国の台頭を警戒している。

【紫光集団】が日本でのカジノ経営に食指を動かしたのは日本の工業技術を盗用しようとする意図があると考えられている。日本のIT関連の製造メーカーの技術者をカジノで接待し、情報の漏えいを期待しているのであろう。

秋元議員の逮捕によってカジノ誘致から中国企業は一時撤退せざるを得なくなった。だが中国が簡単に諦めるとも思えない。   (おわり)

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2020年1月21日 (火)

イラン革命防衛隊クッズ部隊ソレイマニ司令官殺害にゴーサインを出したトランプ大統領の狙いは何か

イランの最精鋭部隊と言われるイラン革命防衛部隊クッズ部隊のガゼム・ソレイマニ司令官が2020年1月3日、イラクの首都バクダッドの国際空港で駐イラク米軍の無人機による攻撃で殺害された。

米NBCニュース(米国の3大ネットワークの一つNBC傘下)は1月14日、ソレイマニ司令官殺害の指令はドナルド・トランプ大統領が7カ月前に承認したと報じた。トランプ大統領は米国人の死者が出た場合には司令官殺害の指令を承認すると述べていたという。だが実際には死者が出る以前に殺害指令を承認していたことになる。

昨年の12月27日、イランの【クッズ部隊】の代理組織(クッズ部隊の支援を受けていた)で、イラクのシーア派武装組織の【カタイブ・ヒズボラ】(神の党旅団)がイラクのキルクーク近辺のイラク基地を攻撃し、少なくとも米国人1人を殺害し、米国兵4人を負傷させた。米軍が29日には報復に出て、イラクの3カ所とシリアの2カ所の【カタイブ・ヒズボラ】の拠点を攻撃した結果、【カタイブ・ヒズボラ】の戦闘員25人が死亡し、55人が負傷したとされる。報復ならばこれだけで十分なのに米軍は1月3日にイランの正規軍の司令官を殺害するという暴挙に出た。

イラン正規軍の司令官を殺害したということは米国とイランは戦争状態に突入したとイランから非難されても米国は弁明できないであろう。専門家によれば今回の駐イラン米軍の武力行使は法的にはいくつかの問題点があるとされる。

【国連憲章】の下では【他国への武力行使】は、国連安保理(安全保障理事会)が許可するか、それとも【自衛権の行使】以外は正当性を持たない。今回の武力行使は【安保理】の承認を得ていないから【自衛権の行使】の他は正当性を持たない。安保理の常任理事国の【中露】は今回の駐イラク米軍の【武力行使】を自衛権の行使とは認めていないし、他の常任理事国の英国もフランスも【自衛権の行使】とは是認していない。

さらに、駐イラク米軍は占領軍ではなく、イラクの脅威となっている【IS(イスラミック・ステイト)】に対抗するためにイラクの要請に基づいて米軍はイラクに駐留している。今回のソレイマニ司令官殺害に関してイラクは主権の侵害であると主張し、イラク議会は米軍を念頭に外国軍の撤退を議決した。米国憲法上でも疑義があるとされる。

トランプ大統領は何故イラン正規軍の司令官の殺害という暴挙に出たのであろうか。トランプ大統領の決断は全て大統領選での再選を念頭に置いている。現在の米国の負債額は2019年度会計年度末の時点で2400兆円である。今後も負債額は膨らんでいくであろう。2020年度の長期米国債の利払い額は3900億ドルで1ドル=109円として42兆5100億円となる。長期国債の金利は現時点では低下して2%程度であるが安全資産なので外国人投資家には人気がある。新興国からの金融緩和でだぶついた資金を呼び込むためには米国は株価高を人為的に維持しなければならないのである。現在の世界的な株価高は【経済回復なき株高】と表現されている。米国の実体経済は【ダウ平均株価29000ドル】に見合う状態とは言い難い。

トランプ大統領は株価が上がり難い状態になると米中貿易戦争やソレイマニ司令官などという株価の大幅下落要因を人為的に作り出して株価を乱高下させている。イランの軍事力は米軍との本格的な戦争に耐えられるものではなく、イランができる武力による報復は死者が出ないように小型ミサイルを発射するとか【カタイブ・ヒズボラ】などを唆して騒乱を引き起こすことであろう。   (おらり)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2020年1月18日 (土)

辛うじて前年を上回った2019年の訪日外国人旅行客数

【政府観光局】(JNTO)は1月17日、2019年通年の【訪日外国人旅行客数】(訪日外客数)を発表したが前年比2.2%増の3188万2100人であった。オリンピックイヤーの今年の【訪日外客数】の目標を政府は4000万人としていたが目標達成は微妙になってきた。世界経済が減速傾向にあり、米・イランの緊張関係も緩和される見通しが立っていないからである。

2019年の【訪日外客数】の伸び率が鈍化した最大の原因は、韓国人訪日旅客数の激減である。2018年の韓国人旅客数は753万8952人であったが2019年には概数558万4600人と約195万4300人前年より減少している。韓国人旅客数の大幅減の主たる要因は日韓関係の悪化であるが韓国経済の悪化も要因の一つに挙げるべきであろう。21世紀に入っての韓国経済の急成長の推進役は【サムスン電子】と【現代自動車】であったが【サムスン電子】のスマホの中国市場での占有率は数年前までは17%を占めていたが昨年は1%にまで急降下し、【現代自動車グループ】も中国市場では昨年の工場出荷台数が100万7900台と前年の118万0500台より17万2600台減っている。スマホでも自動車でも中国製品の品質が向上して中国での韓国製品の需要が減退したのである。

韓国人旅客数の大幅減少にもかかわらず、2019年の【訪日外客数】が3188万2100人で前年を69万0200人上回ったのは韓国以外の【訪日外客数】の多い他の19市場で全て外客数が前年より増えたからである。増加数の【ベスト3】は①中国 121万4300人、②米国 19万7500人、③タイ18万4800人である。その他10万人を超えたのは台湾(13万3400人)、フィリピン(10万9000人)、ベトナム10万6000人である。

【訪日外客数】の地域別シェアは【東アジア】(中国、韓国、台湾、香港)が2018年の73.4%から2019年は70.1%に下がった。【東南アジア+インド】(タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン。ベトナム)が11.2%から12.6%へ上昇、【豪・欧米】も11.6%から13%へ上昇した。

【東アジア】の台湾(人口2359万人)と香港(749万人)からの訪日旅客数の増加は今後、多くは期待できない.。というのは台湾の昨年の訪日旅客数は489万人、香港は229万人と人口比で【訪日旅客数】の比率が異常に高いからだ。

今後、誘客に力を入れるべき地域は経済発展が見込め【東南アジア】の中でも人口の多いフィリピン(1億0660万人)、インドネシア(2億6418万人)、ベトナム(9458万人)であろう。   (おわり)

 

 

 

 

 

 

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2020年1月 7日 (火)

アベノミクスの失速を暗示する2年連続の税収が予算案の想定税収額を下回る可能性が高まる

2020年の予算案は2年連続で100兆円を超える102兆6580億円と史上最高額になった。歳入(収入)の1位は【消費税】、【所得税】、【法人税】などで構成される【税収】で、その額は前年度予算よりも1兆0180億円増えて63兆5130億円である。永年、税収の1位の座を占めていたのは【所得税】であったが、2020年から税収1位の座は【消費税】が占めることになる。2020年度予算案では【消費税】は21兆7190億円で2019年の補正予算後の税収より3兆3330億円増え、【所得税】は19兆5290億円で前年比で4650億円の増加、税収第3位の【法人税】は前年より3500億円増の12兆0650億円である。

ところで、第2次安倍内閣が実際に政権運営を始めたのは2013年からであるが2013年の日本の経済成長率は大胆な金融緩和の効果が出て前年比0.5%増の2.00%、14年が消費税導入の影響で0.38%に急落、15年は円安効果で輸出が回復して成長率は1.22%と上昇した。16年は経済成長率0.61%と再び下落し、17年は1.94%と前年比で1.33ポイント上昇したが18年は米中貿易戦争の影響で輸出が減少した結果、経済成長率は1ポイント以上下がった。19年も輸出が回復せず0.90%であった。経済が成熟した先進国では【経済成長率】が2%を超えていれば経済状況は良好な状態と言われている。

2019年の当初予算の税収見込み額は62兆4950億円であったが実際の税収額は60兆3654億円で税収は見込み額よりも2兆0296億円少なかった。財務省は昨年過ちを犯していながら今年の税収見込み額を昨年の見込み額よりも1兆0180億円多い63兆5130億円と強気の予測をしている。強気の税収増の理由として【所得税】に関しては給与所得増で19年より4650億円の増収となり、【法人税】に関しては輸出の回復で3500億円の増収となると予測している。財務省の強気の根拠は2020年の日本の実質GDPが1.40%伸びると予測しているからだという。だが、【日本経済研究センター】が昨年12月初旬に36人のエコノミストから聞き取り調査を行い35人からの回答をまとめた調査結果の【実質GDP】の伸びの平均値は0.49%であった。

財務省はアベノミクスの行き詰まりを立場上認められないために強気というべきか現実の世界と日本の経済状況を無視した予測を立てているのであろう。【米中貿易戦争】の終結の見込みが立たない以上日本の輸出が2020年に改善されるとは多くのエコノミストは想定していないことは明白である。今年の税収も昨年と同様に見込み額を2~3兆円下回る可能性が高い。   (おわり)

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2020年1月 6日 (月)

化けの皮がはがれた中国の経済成長率の数値

中国の著名なマクロ経済学者で、中国人民大学国際通貨研究所理事兼副所長の向松祚教授は2019年1月20日、中国上海市で開かれた経済フォーラムで、2018年1月から2019年1月まで続いている中国経済の減速の具体的な数値について国内経済研究機関の内部資料では2018年の中国の【国民総生産】(GDP),の成長率が1.67%であると述べて世界の経済学者の注目を集めた。

中国の国家統計局が発表する経済成長率の数値に関しては従来から西側経済学者の間では疑問符が付いていた。毎年公表される経済成長率の目標値と国家統計局が発表するその年の成長率が毎年ほぼ一致していたからである。中国の経済成長率の統計の取り方は地方政府が集計したデータを基に国家統計局が集計する。地方政府のトップは共産党の党員で、実績を上げて共産党中央委員会の政治局員への昇進を熱望しているために、設定された【経済成長率】以上の数字を国家統計局に報告することが常態化している。

100年に一度と言われた金融危機【リーマンショック】が起こったのが2008年9月であるがその前年の07年は米国の景気は住宅バブルに沸いていた。米国への輸出の増大によって中国の2007年の【経済成長率】は史上最高の14.25%であった。【リーマンショック】が起きたために08年の経済成長率は9.65%、09年は9.40%と下落しているが下落幅が4%台に収まったのは膨大な金額の財政出動の効果であった。

2010年には中国の【経済成長率】は10.56%と前年比で1.16%上昇して中国経済は持ち直すかと思われたが2011年からは【経済成長率】の下落に歯止めがかからなくなった。2011年の【経済成長率】は9.50%、12年が7.90%、13年が7.80%、14年が7.30%である。15年には6.90%と6%台に突入し、16年が6.73%、17年が6.76%、18年が6.56%、19年は1~10月間の【経済成長率】は6.14%である。19年の【経済成長率】の目標値は【6.50%~6.0%】で、かろうじて目標値はクリアーできそうである。だが中国の【経済成長率】は捏造されている可能性が極めて高い。

向教授は2019年の国家統計局が発表する【経済成長率】は6.0%を超える可能性が高いが計算してみると計算が合わないと不信感を抱いている。中国経済の減速は米中貿易戦争の勃発によって加速したというのが世界の経済専門家の見立てであるが中国経済の減速は【リーマンショック】後から起こっている。経済の減速を隠蔽するために中国の地方政府は債券を発行して財政出動の原資を調達し、何とか経済の減速を凌いできたのであるがそれも限界に達したというのが真相なのであろう。

中国の経済研究機関の担当者は2019年は中国の10の省の【経済成長率】はマイナスとなったと述べている。2019年には国営企業のデフォルト(債務不履行)が話題に上るようになっている。今年の【経済成長率】は更なる下げ圧力がかかることになると思われる。   (おわり)

 

 

 

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2020年1月 4日 (土)

トランプ大統領再選の障害となるかラストベルト地帯の製造業の雇用減

ドナルド・トランプ大統領の再選のための最重要政策はラストベルト(錆び付いた工場地帯)の製造業の雇用を拡大させることである。トランプ大統領は就任後、最初に手掛けたことは【TPP】(環太平洋経済連携協定)からの離脱である。【TPP】には自動車及びその部品の関税の撤廃が盛り込まれていたからだ。

米国の最大の製造業は【自動車産業】である。米国の現行の自動車の輸入関税は2.5%であるがこれを撤廃すれば日本やEUからの輸入車が増え、米国の自動車メーカーの生産台数が減少し、雇用の減少につながる。米国の新車生産台数の推移は2014年が1145万台、2015年が1193万台、2016年が1210万台と増え続けていたが2017年からは減少に転じ、2017年は前年比6.7%減の1124万台、2018年は前年比1.8%減の1109万5000台、2019年の1~10月は前年同期比で3.4%減である。米国の生産台数には米国内に生産拠点を持つ日本メーカー(トヨタ、日産、ホンダ、スバル)、ドイツメーカー(VW,,ダイムラー、BMW)、韓国メーカー(現代、起亜)の生産台数も含まれている。

2017年以降、米国市場では【SUV】の販売台数が乗用車の販売数を大きく上回り、その結果、乗用車主体のメーカーのGMやFCAは販売台数を大きく減らしている。その結果、GMはラストベルト地域内の3工場の閉鎖を決定し、フォードは乗用車の製造を停止することを公表した。米国で年間100万台以上販売している主要メーカー(GM,フォード、トヨタ、FCA、日産、現代・起亜)は軒並みに販売台数と生産台数を減らしている。米国市場で販売数を伸ばしているのは年間販売台数60万台のスバルや40万台のVWだけである。もっともスバルは販売数が伸びても増加分は日本から輸出しているため、VWは生産拠点はテネシー州にあるために【ラストベルト】地域の雇用増にはつながらない。

米国の【制裁関税】の発動の恩恵をもっと受けたのは鉄鋼業であるである。米国の2017年の鉄鋼生産量は8164万トンであったが、【制裁関税】によって輸入が前年比で12%減ったことから2018年の生産量は8660.7万トンと大幅に増えた。これは米国鉄鋼業の最大手【USスチール】が2015年から休止していた【ラストベルト】地域内のイリノイ州の高炉2基を2818年に再稼働させたことによって可能になった。長らく低迷していた鉄鋼業界は増産に沸いた。この傾向は2019年上半期の6月まで続いたが、7月以降は減産体制に逆戻りしている。【USスチール】は【ラストベルト】地域内のミシガン州の2基の高炉の休止を発表した。2基の高炉の生産量は毎月20~22.5万トンで全米の生産量の3%に該当する。

【石炭産業】も【制裁関税】の発動によって息を吹き返しかけたが石炭価格と天然ガス価格が2016年上半期には同じ水準になったことにより石炭の需要は激減してしまった。米国産石炭は9割以上が電力分野(火力発電所)で使用される。その他の大口需要先は鉄鋼業界である。火力発電所の燃料は2016年下半期から石炭から天然ガスに転換している。2酸化炭素の排出量が石炭より少ない天然ガスの価格が同じ水準であれば天然ガスが火力発電の燃料として使用されるのが当然の成り行きである。

2019年に【ラストベルト】地域内のミシガン州、ウィスコンシン州、オハイオ州、ペンシルベニア州の4州で自動車や鉄鋼、機械などの製造業で雇用が約5万人減った。苦境に追い込まれた石炭産業の労働組合【米国炭鉱労働者組合】は2016年の大統領選ではトランプ氏を支援したが今回は民主党候補者に鞍替えしようと民主党に働きかけているという。4つの州のうち2~3州でトランプ大統領が敗れればトランプ大統領の再選は絶望的になる。   (おわり)

 

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