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2019年6月 7日 (金)

【FCA】(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)ルノーとの統合案を白紙に戻す

5月27日、イタリア最大の自動車メーカー【フィアット】と米国のビッグスリーの一角を占める【クライスラー】を傘下に持つ持ち株会社【FCA】は、フランス政府が筆頭株主であるフランスの大手自動車メーカー【ルノー】の取締役会に株式比率が一対一の対等統合(合併)を提案する文書を送付したと発表した。

世界の自動車メーカーを震撼させたこの報道は世界を駆け巡った。というのはこの対等合併が成功すれば世界販売台数1560万台の巨大な自動メーカーが誕生するからである。【ルノー】はその傘下にルーマニアのメーカー【ダチア】とロシアの【ラーダ】を有し、2018年の世界販売台数は388万台である。それに対して合併を提案した【FCA】の2018年の世界販売台数は484万台である。両社が合併すれば販売台数870万台のドイツの【VW】(販売台数1083万台)、【トヨタ】(1059万台)に次ぐ世界第3位の自動車メーカーが誕生する。さらに【ルノー】は【日産】と【三菱】と連合を組んでいるので【ルノー・日産・三菱】連合の2018年の世界販売台数は1076万台であったことから【新会社・日産・三菱】の販売台数は1560万台というとてつもない巨大自動車連合が誕生することになり、世界の自動車業界の地図を塗り替える可能性が高まったのである。

この【FCA】の合併案に危機感を抱いたのがフランス政府である。株式比率一対一の新会社が誕生すればフランス政府の新会社への影響力は著しく弱まるのである。フランス政府は【ルノー】の株式を15%所有しているがフランス政府は強引に法律を改正してフランス政府が保有するルノー株式の議決権を2倍にし、同じく15%の【ルノー】株式を持つ日産の議決権をゼロにした。つまりフラン政府は日産の株式から議決権を奪い取ってフランス政府のモノにして【ルノー】をフランス政府の完全管理下に置いたということになる。フランス政府はこの現状を維持したかったのである。

新会社ではフランス政府の株式保有率は半減して7.5%となり、それに伴い30%あった議決権も7.5%と大幅に減少する。このような合併案を了承しては【ルノー】をフランス政府はコントロールできなくなるのでフランス政府は合併案を阻止しようと【FCA】に難題を持ち掛けたのである。フランス政府が【FCA】に要求した事項は①「長期的にルノー出身者を合併新会社の要職に就けること、②運営上の新会社にはフランス政府からの役員の派遣を認めること」であったという。フランス政府の干渉が強すぎることに嫌気がさした【FCA】は合併案を白紙に戻してしまった。世界を震撼させた合併騒動は10日間で呆気なく幕を下ろした。

フランス政府の不条理な介入を目の当たりにして【日産】は【ルノー】との関係を見直す選択をすることになるであろう。【日産】は【ルノー】との間で【改定アライアンス基本合意書】(RAMA)を作成している。【RAMA】はフランス政府が【日産】に不当な介入をした場合には【日産】が【ルノー】株式の買い増しをすることを容認している。日産が【ルノー】株を買い増しして【日産】の【ルノー】株式の保有比率が25%を超えれば、日本の【会社法】の規定により【ルノー】の保有する日産株式の議決権は消滅する。【日産】は【ルノー】議決権を奪う行動に打って出る可能性が高まったことになる。

【日産】は今後、フランス政府との消耗戦に突入することになるであろう。   (おわり)

 

 

 

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