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2019年5月 8日 (水)

追加関税率引き上げを米中貿易協議の取引材料に使うトランプ大統領

昨年7月6日に米国は、米国が中国から輸入する500億ドル分の製品に対して輸入関税を25%に引き上げ、それに対して中国は米国からの輸入品に関して25%の報復関税を課した。いわゆる【米中貿易戦争】の開始である。米中貿易戦争の勃発によって甚大な被害を被ったのが米国の大豆生産農家であった。中国は米国産大豆の最大の輸入国であるが輸入価格が高騰した米国産大豆の代替品として中国はブラジル産やアルゼンチン産大豆を輸入した。最大の輸出先を失った米国の大豆農家は壊滅的な打撃を受け、破産したり、経営難に陥った大豆農家が続出した。大豆農家は2016年の大統領選挙でトランプ大統領誕生の原動力となった中西部の州(ラストベルトと呼ばれる寂れた工業地帯と重なる)に多く、大豆農家の没落は2020年のトランプ大統領再選に影を落とし始めたのである。

2018年12月3日に【G20首脳会議】がアルゼンチンの首都ブェノスアイレスで開かれたがそれに先立つ12月1日にトランプ大統領と習近平国家主席による米中首脳会談が行われ、貿易摩擦解消に向けた協議を行うことで合意した。その結果、2019年1月1日から実施されるとしていた米国の中国に対する2000億ドル分(5745品目)の制裁関税(2018年9月から課された10%の関税)の税率の25%への引き上げが3月1日まで先送りされた。この米中首脳会談の内容についてホワイトは同日、「強制的な技術移転、知的財産権の保護、非関税障壁(中国の国有企業の優遇措置など)などの5分野の構造改革に関する交渉を直ちに開始する」と発表した。中国側の声明ではこれに触れていない。さらにホワイトハウスの声明はこの5分野の交渉が90日以内に合意に達しなければ制裁関税を25%に引き上げると言及している。

米中貿易協議の閣僚級会合が2月21日からワシントンで始まった。出席者は米国側がムニューシン財務長官とライトハイザー米国通商代表部「USTR」代表、中国側は劉鶴副首相。この会合で交渉は合意に達しなかったがかなり進展したことが窺われる。中国は3月に開かれた年1回の中国の国会とも言われる【全国人民代表大会】(全人代)で外資系企業へ技術移転を強要することを禁じる【外商投資法】を成立させた。これを受けて米国は制裁関税の25%への引き上げの実施を再び先送りした。

その後、4月中の合意を目指して米中閣僚級会合で協議が続いたが制裁関税の撤廃時期と規模で米中間の主張の溝が埋まらず協議が5月9日から再開する。協議再開を前にトランプ大統領は「5月10日に制裁関税を25%に引き上げる」とツイッターに投稿して物議を醸した。

トランプ大統領は最大の懸念材料であった自身のロシア疑惑の決着がついたことで余裕が出て米中貿易協議の合意を急がなくなったのであろう。中国に難題を持ちかけて米国の要求を強要しようとしているのである。来年の6月頃までに米国側の主張が受け入れられる状況が生まれれば合意してもいいとトランプ大統領は考えているのであろう。それが大統領選でトランプ大統領にとって有利に働くからだ。   (おわり)

 

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