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2018年11月

2018年11月29日 (木)

ルノー・日産・三菱連合は継続できるのか

仏自動車大手【ルノー】のCEO(最高経営責任者)で【日産】・【三菱】の会長兼代表取締役のカルロス・ゴーン氏(64)が11月19日夕刻、【金融商品取引法違反】(有価証券報告書虚偽記載)容疑で東京地検特捜部に逮捕された。
ゴーン氏の逮捕を受けて【日産】は11月22日午後の臨時取締役会を開き、ゴーン氏の会長職と代表取締役を解任した。日産の子会社【三菱自動車】も26日の臨時取締役会でゴーン氏の会長職と代表取締役を解任した。
ゴーン氏の解任と司法の有罪、無罪の判断は無関係で、【日産】と【三菱】がゴーン氏に不正があったと判断したので解任は効力がある。
ゴーン氏の解任によって【ルノー】、【日産】、【三菱】の3社連合の関係の見直しが3社にとっては喫緊の課題となった。【ルノー】にとってはこの連合を解体させる選択肢はないであろう。【ルノー】の2017年の純益は51億1400万ユーロであったがその46%の23億5244万ユーロは【日産】の配当金であった。
2017年の販売台数は【ルノー】が376万台に対して【日産】は577万台と200万台の差がある。日産はEV(電気自動車)の技術は世界の最先端で技術的にも【ルノー】は既に始まっている技術の大革新時代に【日産】なしで対応できないのである。
【日産】にとって規模を追求する時代に入った自動車業界で世界400万台の販売力を持つ【ルノーグループ】(ルノー、ダチア、ラーダ、ルノーサムスン)との決別は得策ではない。
【ルノー】と【日産】は株を持ち合っている。【ルノー】は日産の株式を43.4%保有し、【日産】はルノー株を15%保有しているが、日産が保有しているルノー株にはフランス政府の策略によって【議決権】がない。現時点では【日産】は【ルノー】の子会社であるがその関係を反故にできる権限を【日産】は持っている。
【日産】は2015年に【ルノー】との「提携基本合意書」を見直して【ルノー】の合意なしに【日産】の取締役会の判断で【ルノー】の株式を買い増せるようにしたことがそれに該当する。
日本の会社法上、【日産】が【ルノー】の株式を10%買い増して現在の日産の【ルノー】に対する15%の出資比率を25%にすれば【ルノー】の保有する【日産】株式の議決権は消滅する。つまり【ルノー】は【日産】に対する影響力がなくなるのである。
この権限を入手したからこそ、自己保身のためにフランス政府の代弁者として【ルノー】の下に【日産】と【三菱】を完全統合する路線に舵を切ったゴーン会長に【日産】の4人の日本人取締役は反旗を翻したのである。それは【日産】をフランスの会社ではなく日本の会社として存続させるという選択でもあった。
今後、【ルノー】と【日産】との間でハードな交渉が続くことになる。連合を解消さするという選択は両社にとっては利益にはならない。妥協点は見いだせる可能性は高い。   (おわり)

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2018年11月28日 (水)

外国人材法施行前に悪徳企業を撲滅すべき

2019年4月から外国人材の受け入れを拡大するため新たな在留資格を設ける出入国管理法の改正案は、11月27日夜、衆議院本会議で一部修正のうえ可決され、参議院に送られた。
それを受けて【外国人材の受け入れを拡大するための法案】(出入国管理法の改正法案)は、28日から参議院で審議入りした。、
この法案を巡り、野党各党は廃案を目指すと息巻いているが最終的には今国会(第197回臨時会)の会期内(2018年10月24~12月10日)に成立すると思われる。
外国人が日本に居住して労働するには、【在留資格】が必要となる。日本はこれまで単純労働の分野で外国人の労働者を受け入れなかった。しかしながら2011年3月の【東日本大震災】、2016年4月の熊本地震、2018年9月の岡山県、広島県、愛媛県を中心とする台風の被害、北海道胆振地方東部の地震などの災害復旧に建設業界は深刻な人手不足に陥り、さらに東京五輪開催のための施設や道路建設が人手不足を助長してきた。
この建設、土木分野の作業員という単純労働者不足の解消のための特効薬として日本では新たに外国人労働者を受け入れる必要性が生じたのである。
これまで労働者不足を何とか凌いできたのは、【技能研修生】という実態は単純労働者でありながら労働者としては正式には認められていない月額10万円以下の収入しか得られない外国人の犠牲があったからである。外国人【技能研修生】の日本滞在期間は1~2年であるが2015~2022年度末の期間限定で【技能研修】の修了者を対象に【特定活動】という資格が与えられ、2~3年の在留期間の延長が認められるようになった。
現在、この資格を取得した4011人が日本で働いている。ところが雇用側の建築や土木会社は低賃金で雇用していた研修生が【特定活動】の資格を得て正式に労働者と認定され、給与の月額が日本人並みに跳ね上がったにも拘らず雇用企業は【賃金未払い】などの不法行為を行っていたのである。厚労省の発表によれば不法行為で摘発された企業が全国で518社でそのうち204社は【賃金未払い】で摘発され、行政指導を受けたという。
ところで、新たに外国人の単純労働者を受け入れるには新たな【在留資格】が必要となるために【外国人材法案】では二つの【在留資格】が創設される。その資格は【特定技能1号】と【特定技能2号】である。
【特定技能1号】は、一定の試験などを受けて、日本語や仕事の能力が、ある程度ある、と判断された場合に資格が与えられる。【在留期間】は、通算で5年間、家族を呼び寄せることは認めらない。
【特定技能2号】は、1号よりも、より高い能力が必要とされ、1号の人が試験に合格すれば、2号の資格を取得することができる。滞在期間は更新できるし、家族を呼び寄せることは可能である。
現時点で【特定活動】の資格者は【特定技能第1号】の資格が与えられる。
この法案は今後、参院で十分に審議を重ね、欠陥をなくす必要がある。
政府は来年4月からの【外国人材法】の施行を目指しているが、それ以前に【賃金不払い】などの不法行為を働く企業が暗躍しないように罰金や罰則を強化して【外国人労働者】を保護すべきであろう。   (おわり)

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2018年11月26日 (月)

ゴーン氏の会長職解任を巡り日産とルノー真逆の対応

東京地検特捜部は11月19日、【金融商品取締法違反】(有価証券報告書虚偽記載)の容疑で【日産】の代表取締役兼【ルノー】会長兼CEO(最高経営責任者)逮捕した。
この逮捕を受けて【日産】は22日午後開催した臨時取締役会でゴーン会長を解任したが、一方、【ルノー】は20日の臨時取締役会でゴーン氏の解任を見送っている。【日産】と【ルノー】のゴーン氏に対する対応の差が【日産】と【ルノー】の微妙な関係を象徴している。
IMF(国際通貨基金)の【World Economic Outlook】2018年版によれば【先進、国首脳会議】参加国の2017年の【失業率】は、日本が2..88%、ドイツ3.%、米国4.35%、英国4.43%、カナダ6.33%、フランス9.44%、イタリア11.26%とフランスの失業率はイタリアに次いで高い。さらに衝撃的なのはフランスの若年層労働者の失業率が20..4%という高率なことである。
フランスで失業率が跳ね上がったのは2008年秋の【リーマンショック】の影響である。2008年の失業率は7..4%であったが09年には9..08%に急上昇し、それ以降、失業率は上がり続け、2014年には10.28%と10%を超えた。2011年5月に就任したオラント大統領の最優先の内政の課題は【失業率】を下げることであった。失業率と雇用の増加は表裏一体の関係にあり雇用が増えれば失業率は下がるのである。
オラント大統領が就任以降、フランス政府は雇用を増やす施策を行ってきた。その代表例が収益性の高い事業所の閉鎖を回避し、雇用を確保することを目的とする2014年3月に成立した【フロランジュ法】である。
2013年にフランス北東部の町フロランジュで起きたルクセンブルグに本社を置く世界最大の鉄鋼メーカー【アルセロール・ミッタル】の製鉄所の閉鎖による従業員の大量解雇が法制定の契機となったことからこの名称が付けられた。この法律の主旨は雇用の安定と国内産業の保護を図るため、大企業に対して事業所を閉鎖する際に事前に売却先を探すことを義務付けたことと、その後、株式を2年以上保有する株主に2倍の議決権を与えるという規定を付け加えたことである。
だがフランス政府はこの法律を悪用した。先進国で最も雇用が多い産業は【自動車産業】】である。部品の数が数万点以上に及ぶからだ。フランス政府はフランス自動車メーカー大手の【ルノー】の株式を15%保有していたが、雇用者の多い【ルノー】への影響力を強めるために【フロランジュ法】の「2年以上株式を保有した株主に2倍の議決権を与える」という規定を付け加えるためにフランス政府は2015年にルノー株を新たに4..74%買い増しした。
フランス政府は2017年11月3日に買い増した4.74%の株式を1600億円で【ルノー】に売却している。フランス政府は保有する【ルノー】の株式の議決権が2倍の30%になったことによって【ルノー】への影響力を強めたのである。
フランス政府の行動に危機感を強めたのが【日産】である。【日産】はルノーの格式の15%を保有しているが議決権はない。それに対して【ルノー】は日産の株式の43..4%を保有し、【日産】はルノーの連結子会社になっているからだ。
【ルノー】の2017年の純益は51億1400万ユーロ(約6644億円)であるがこのうちの46%に該当する約3053億円は日産の利益を吸い上げたものである。【ルノー】は日産に対して弱みがある。
【日産】は今年に入って【日産】へのフランス政府の間接的な影響力を排除するために【ルノー】との提携契約の見直しを行った。見直しの内容は【出資比率引き上げの際の手続き】。日本の会社法では日産が【ルノー株】をさらに10%買い増しして既に保有している15%の株との合計で25%以上の出資比率にすれば【ルノー】の【日産】に対する議決権は喪失する。これまでの提携契約から【日産】が【ルノー】への出資比率を高める際には【ルノー取締役会】の承認を必要としていたが見直しによってこの条項を削除することで両者の間で合意が成立し、【日産取締役会】の決定のみで【ルノー株】の買い増しができるようになった。
【日産】にとって連携契約の見直しはゴーン氏を排除することが容易になったということを意味する。【日産】にとってはゴーン氏の歴史的使命は終焉したということなのであろう。   (おわり)


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2018年11月22日 (木)

ルノー・日産統合計画阻止に動いた一部の日産自動車日本人幹部

1999年6月以降20年間、ヨーロッパを代表する自動車メーカーの一つであるフランスの【ルノー】の上席副社長や最高経営責任者(CEO)の地位を維持しながら【日産】のカリスマ経営者として君臨してきたカルロス・ゴーン会長が11月19日夕刻、東京地検特捜部によって【金融商品取引法違反】(有価証券報告書虚偽記載違反)の容疑で逮捕された。近々、会長職を解任される見通しである。
2017年世界の新車販売台数2位の【ルノー・・日産・三菱連合】のトップ逮捕のニュースは驚きもって世界中に配信された。
約2兆円1000億円に及ぶ膨大な負債を抱えて経営難に陥っていた【日産】に救いの手を差し伸べたのは【ルノー】で1999年3月に【ルノー】は日産の株式の36.8%を取得し、それに対して日産は【ルノー】の株式の15%を取得したがフランスの国内法によって【日産】保有のルノー株には議決権が与えられていない。要するに【日産】は【ルノー】の経営には関与できないのである。2017年3月31日の時点で【ルノー】は【日産】の株式の43.4%を保有し、【日産】はルノーの連結子会社である。しかも【ルノー】の筆頭株主は19.74%を保有する【フランス政府】である。
ゴーン氏は【日産再建】のために日産の不採算な5つの工場を閉鎖し社員2万1000人を解雇整理し、外注費用を過酷なまでに削減した。まさに【コストカッター】として辣腕を揮ったのである。
だがゴーン氏の手法は1981~2001年までの21年間、世界を代表する電機メーカー・米国の【GE】(ゼネラル・エレクトリック)の最高経営責任者を務めたジャック・ウェルチ氏の手法の2番煎じである。
ウェルチ氏は社員の整理解雇と部品の外注によって【GE】の財務内容を改善し、再建した結果、【20世紀最高の経営者】という尊称を奉られていたが氏が【経営の神様】として最も高く評価していたのは経営手法が対極にある終身雇用に経営の最高の価値を置く横河電機の美川英二元社長である。
ところで、【日産】㋨2018年3月期(2017年4月~2018年3月)の純益は7468億9200億円、【ルノー】の2017年通期の純益は6486億6400億円(51億1400ユーロ)であった。そのうちの2400億前後の利益は【日産】が稼ぎだした。資本的には【ルノー】が【日産】の親会社であるが、業績的には【日産】が【ルノー】の親会社の立場である。【ルノー】と【日産】の歪な関係を解消しなければ【ルノー】にも【日産】にも未来はない。
日本とEUは自由貿易協定の一種である【日・EU・EPA】(日欧経済連携協定を締結して2019年3月下旬には発効する予定である。この協定が発効すれば日本の自動車メーカーの欧州への輸出関税は現行の10%から0%、部品の3~4%の輸出関税も0%となる。当然、日本のトヨタや【ホンダ】はEUでの販売台数は伸びることになる。
2017年のEUでのトヨタの販売台数は前年比13%増の67万7779台、、【日産】は3%増の56万2356台。EUでは2018年9月から排ガス規制が改正されて対応が一番遅れているVWの今年9月の月間販売台数は前月比で50%減、他の欧州メーカーも駆け込み需要の影響でいずれも販売台数は2桁台のマイナスであった。唯一【トヨタ】だけは3.6%減の1桁台、【日産】は42.8%減である。
2016年の当選以来、人気が下降しているマクロン大統領は【ルノー】のEU域内での業績回復を強く望んでいる。先進国では自動車産業の雇用が最大であるからだ。だが【ルノー】は環境規制に対応するための開発費の資金調達に苦心している模様でマクロン大統領はゴーン氏に【ルノー】と【日産】と【三菱】の統合を働きかけ、苦渋の決断としてゴーン氏も3社の統合に舵を切ろうとしていると思われている。自己保身と【日産】の社内留保の1兆2000億円を召し上げようとしていると言われている。
これに対しに【日産】が消滅することを危惧した西川(さいさいかわ)日産社長派は東京地検特捜部にゴーン氏の不正の事実をリークし、統合計画を阻止しようとしたのである。
この事案は日本とフランスの深刻な国際問題に発展する可能性がある。   (おわり)

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2018年11月20日 (火)

中間選挙と同時に行われた36州知事選で民主党知事7人増える

r中間選挙と同時に36の州知事選挙が行われたが接戦となった【フロリダ州】で票の再集計が行われた結果、共和党新人のロン・デサンティス氏が民主党の新人アンドリュー・ギラム氏を破り、当選したので36州の知事選は全て決着した。
改選されたのは50州のうちの36州で、改選前は【共和党】の知事は26人、【民主党】の知事は9人(カリフォルニア州、コロラド州、コネチカット州、ハワイ州、ニューヨーク州、ペンシルベニア州、ロードアイランド州、ワシントン州、ウィスコンシン州)、無所属がアラスカ州知事1人であった。非改選の州は、デラウェア州、インディアナ州、ルイジアナ州、ミシシッピ州、ミズーリ州、モンタナ州、ニュージャージー州、ノースカロライナ州、ノースダコタ州、オレゴン州、ユタ州、バージニア州、ウェストバージニア州の14州である。
【共和党】は今回の選挙で、26州のうちイリノイ州、カンザス州、ミシガン州、メイン州、ネバダ州、ニューメキシコ州の6州を民主党に明け渡して20州を死守した。、【民主党】は改選前の9州を維持した上に共和党から6州を奪い、さらに無所属の知事からアラスカ州を奪取し、7人の民主党知事を新たに誕生させた。この結果、【共和党】の知事は27人、【民主党】の知事は23人となり、2年後のトランプ大統領の再選に暗雲が立ち込めたことになる。
というのは、アメリカでは州知事は絶大な権限を付与されている。州知事には外交権と連邦政府軍を指揮する権限はないが、州予算の編成権と執行権、、教育改革、死刑執行の署名など、大統領と同等の権限と仕事を州レベルで実行している。
過去の多くの大統領が州知事経験者であるのは決して偶然ではない。実例を挙げれば1981年1月に就任した第40代ロナルド・レーガン大統領から現在のトランプ大統領までの6人の大統領の中で第40代大統領のレーガン氏や42代大統領のビル・クリントン氏、第43代大統領のジョージ・W・ブッシュ氏の3人が州知事出身であった。
トランプ大統領にとって不安材料なのが知事は有権者登録の規則などの行政権限を使って、敵対する党の支持層の登録を阻害することが事実上可能なことである。2020年の国勢調査に基づく10年ごとの下院選挙区の区割り変更でも、知事は多くの州で区割り案に拒否権を発動でき、所属政党に有利な区割りを促すことも可能だ。つまり米国の州知事はやろうと思えば意図的に現職大統領の再選を阻止するための措置を講じることが可能ということになる。
トランプ大統領のコアな支持層はかつて製造業で栄え、現在は衰退している【ラストベルト地帯】(錆び付いた工業地帯)に数多く在住している。改選前は【ラストベル地帯】に含まれている州の民主党の知事はペンシルべニア州だけであったが、今回の選挙でラストベルト地帯の6つの州のうちイリノイ州、ミシガン州、ウイスコンシン州が民主党の知事となった。6つの州のうち4つの州が民主党の知事である。トランプ大統領が重視していたフロリダ州は接戦の末にやっと共和党が勝利を収めたことを考えればトランプ大統領は残りの2年間で業績を上げなければ再選は覚束なくなるであろう。   (おわり)

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2018年11月19日 (月)

深刻な人手不足を反映する19年春卒業の大学生の就職内定率

文部科学省と厚生労働省はバブル崩壊後の新卒大学生の就職が困難となった【就職氷河期(1993~2005年)】と呼ばれた時代に突入して4年目の1996年に大学卒業予定者の【就職内定率】の調査を開始した。両省は11月16日に公表した【大学等卒業予定者の就職内定状況調査】によれば、2019年春に卒業予定の大学生の就職内定率が10月1日時点で77.0%と前年同期より1.8ポイント上昇し、過去最高となったと発表した。上昇は3年連続。文科省は「景気回復が続き企業の採用意欲が高まっており、求人数も増えていることが要因」としている。
【就職内定率】とは就職希望者に占める内定取得者の割合である。
調査を開始した初年度の1996年と翌年の【就職内定率】は69.9%であった。消費税率が2%上がり5%となったのは97年4月1日からであるがその影響が日本経済に顕著に表れ出したのは98年以降である。消費税率2%アップの影響が大学生の就職戦線に表れ出したのは99年からで実体経済と就職内定率には1年間のタイムラグが見て取れる。
日本経済のバブルは1986~1991年であるがその間バブルの恩恵を被った銀行、不動産、建設、自動車や電機などの製造業界は大量の大学の新卒者を雇用したがバブル崩壊後の92年から3年間は各業界は新卒の採用を極端に手控えている。だが企業の将来を考えれば新しい人材の採用を長期間抑えるわけにはいかず、98年には【就職内定率】は前年比で2.7%増の73.6%に上がった。
しかし、翌99年には消費増税の影響が顕在化し、99年の名目GDPは2年間で24兆4909億円減少し、企業業績が悪化した結果、99年の【就職内定率】は前年比で6.1%減の67.5%となった。それ以降は60%台前半で推移し、2004年には60.2%にまで下落した。
しかしながら、05年以降は米国の住宅バブルの好景気に支えられて日本の自動車や電機産業などの輸出主導型産業の業績が好調でリーマーンショックの影響を受けながらも09年の【就職内定率】は69.9%にまで回復した。だが11年には東日本大震災が起こりーマンショックの影響が本格化したこともあって、11年の【就職内定率】は過去最低の57.6%となった。
それ以降、就職活動解禁日の変更のあった15年を除いて【就職内定率】は上昇を続け、昨年は史上最高の77%にまで上昇した。内定率の上昇は人手不足を反映していることを意味する。
【日本経済新聞】がまとめた主要企業952社の大学院卒を含む19年春の大学卒業予定者の内定者数は、10月1日時点で【製造業】が430社で前年比4.1%増の4万1035人、【非製造業】】が522社で前年比0.1%増の7万9164人である。
製造業の業種別の内定者数は【紙・パルプ】が前年比15..8%減の208人、【医薬品】が8.5%減の986人、鉄鋼が5..3%減の1242人、【石油が11.9%増の300人、【窯業】が25.6%増の461人、【印刷】が14.4%増の605人。
【非製造業】の【銀行】が前年比16.1%減の10006人、【【保険】が12.9%減の4162人、【空運】21.9%増の1660人、レジャ―】が20.4%増の136人である。
前年の内定者数を下回っている業種は学生に人気がないということであろうし、さらに言えば短期的な企業の業績見通しが明るくないということであろう。
前年の内定者数を上回っている業種は学生に人気があり、ここ数年の企業業績が住宅・マンション建設の好調さや訪日外国人数の増加で好調ということなのである。   (おわり)

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2018年11月17日 (土)

幼児保育無償化で負担増となる内閣府案に市長会反発

自民党は2017年衆院選における選挙公約の項目の一つ【経済再生】の【人づくり革命】の中で「2020年度までに、3歳から5歳まですべての子供たち、低所得世帯の0歳から2歳児の幼稚園や保育園などの費用を無償化します。また、待機児童解消に向けて、「子育て安心プラン」を前倒しし、2020年度までに32万人分の保育の受け皿整備を進めます。」と記していた。
【幼児保育無償化】は2019年10月から始まるが【全国市長会】は11月14日、【幼児保育無償化】に関する会合を開いた。この会合で内閣府は消費増税で地方も収入が増えることから、私立保育所・幼稚園の運営費は国が2分の1、都道府県と市町村が各4分の1、公立保育所・幼稚園は市町村が全額という今の負担割合を無償化後も維持する案などを示した。
【全国市長会】とは全国809市の市長が加盟する連合組織で、市長間の連絡協調を図り、市政の円滑な運営と進展により地方自治の興隆繁栄に寄与することを目的とする。
ところで、政府は昨年秋の衆院選の際、【幼児保育無償化】の中身の詳細を決めずに選挙戦を闘い自民党は勝利した。2009年の第45回衆院選で民主党が政権を獲得するために【子ども手当】の給付を選挙戦の公約に掲げ、財源を示さずに闘い、政権獲得後その【つけ】を払わされた。
【幼児保育無償化】の財源は消費税の増税分を充てるので問題はないが無償化の費用の負担割合に関しては今後一波乱も二波乱もありそうである。
というのは菅義偉官房長官は6月6日と8月30日に市町村に対して「無償化については全額国費で負担するので、市町村には迷惑をかけない」と説明しているからだ。市町村側は【無償化】の費用は全額国の負担ということで安心していたところ菅官房長官のお膝元の【内閣府】が市町村側に負担を求めてきたからだ。
もっとも【内閣府】とすれば全額国費負担で決まってしまえば【内閣府】は政治家の圧力の前には無力であることを露呈し、存在価値を国民から問われかねないので菅官房長官の了解を得た上で市町村側の負担を求めたとも考えられる。最終的には全顎国費負担で落ち着くということであろうか。
それにしても日本の地方自治とは名ばかりで地方自治体は実質的には国の出先機関と化していると国民から批判されても弁解の余地はないかもしれない。【地方創生】を言葉だけで終わらせないためには現今の【地方交付税交付金】制度を廃止して消費税の地方への分配割合を多くして財政的に地方自治体の裁量権を高めるべきであろう。消費税は【地方】が稼ぎ出した税金だからだ。
日本国憲法では【地方自治権】が認められていながら日本の地方自治の実態は悲しむべき状態にある。   (おわり)

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2018年11月15日 (木)

トランプ政権輸入車への関税を当面先送りか

中間選挙で民主党が下院の過半数を制した事実が早くもトランプ政権の政策への抑止力としての効果を発揮し出したようである。
米【ブルームバーグ通信】は11月14日午前、【U.S. Said to Hold Off on Trump’s Car Tariffs After Trade Meeting(米国、トレードミーテイングの後、トランプの自動車関税引き下げ)】と題する下記の記事を配信した。
「この問題に精通している二人の関係者によれば、国家安全保障への影響に関する報告書の改訂について、最高幹部が重視しているため、トランプ政権は自動車輸入に新たな関税を課すことになっている。
ドナルド・トランプ大統領は、ホワイトハウスで、自動車輸入の影響に関する商務省の調査草案の草案について議論するため、火曜日に最高貿易顧問と会談した。会談が公表されなかったことで匿名を条件に話した人々は、同政権は関税を執行する準備ができておらず、報告書はさらに変更される可能性があると述べた。」。
米国では1940年以来、共和党は【自由貿易】を支持する政党、民主党は【保護貿易】を支持する政党というレッテルを貼られてきた。しかし、経済のグローバル化によって米国の主要産業であった自動車などの製造業は疲弊し、製造業のブルーカラーの支持政党は従来の民主党から古き良き時代の米国の繁栄を懐かしむ保守政党【共和党】へと変化した。
【民主党】は労働組合に基盤を置く労働者の政党であったが製造業の崩壊によって失業したり、転職を余儀なくされたブルーカラーに見限られた、その象徴が2016年の大統領選においてかつての民主党の票田であった【ラストベルト地帯】(錆び付いた工業地帯)を形成する【イリノイ州】、【インディアナ州】、【ミシガン州】、【オハイオ州】、【ペンシルベニア州】、【ウイスコンシン州】でトランプ大統領候補は民主党のヒラリー・クリントン候補を破った。これら諸州の勝利がトランプ大統領誕生の原動力となった。
中間選挙で野党民主党が与党共和党に勝利するには政策の対立軸を明確にすることである。共和党はトランプ大統領が【保護貿易】政策を推進している以上、共和党の伝統的な主張【自由貿易】を反故にせざるを得なかった。
一方、民主党の伝統的な主張は【保護貿易】であったが中間選挙で勝利するためには従来とは真逆な主張【自由貿易】に舵を切らざるを得ない必要性が生じ、7月中旬から【自由貿易】に政策を転換した。
今や民主党の支持者は大学卒の都市部かその郊外に住む自由貿易や資本の移動の自由の恩恵を受けている人たちやトランプ大統領の女性蔑視の発言に反発している女性たちである。ある世論調査の結果によれば民主党支持者や民主党シンパ㋨63%は【自由貿易】を支持している。それに対して【共和党】支持者では【自由貿易】を支持しているのは41%にすぎないt。
トランプ大統領最大の関心事は2020年の大統領選挙で再選されることである。【保護貿易】の象徴の【関税】を課すことをトランプ大統領が断念したとは考え難いが、民主党との対立を一時的に避けるためと米国の自動車産業へ輸入車への関税の影響が「吉と出るか凶と出るか」を見極めるためにトランプ大統領は輸入自動車への高率関税の決定を先送りしたのであろう。   (おわり)

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2018年11月14日 (水)

日本経済の再生には男女と正規・非正規の賃金格差の是正が鍵

内閣府が11月14日に発表した今年の第3四半期(7月~9月)の【GDP】(国内総生産)速報値は、物価の変動を除いた実質の伸び率が第2四半期(4~7月)と比べてマイナス0.3%、年率に換算してマイナス1.2%となり、2四も期ぶりにマイナスに転じた。台風や地震などの相次いだ自然災害の影響などで個人消費や輸出が振るわず、景気が再び足踏みした形である。
今年の第1四半期(!~3月)のGDP成長率は、2015年の第4四半期(!0~12月)以来のマイナス成長で前期比年率換算で0.9%のマイナス成長率であった。その原因も個人消費の不振と輸出が減少したことによる。第2四半期(4~6月)のGDP成長率は1.9%の伸びである。
GDPの算出に必要な主な項目をみると【輸出】は、北海道胆振地方東部で9月6日未明に発生した地震や、25年ぶりの強い勢力で9月4日に日本に上陸し、近畿地方を中心に甚大な被害を齎した台風21号の影響で関西空港が一時閉鎖されるなど相次いだ自然災害で、自動車などを中心に振るわずマイナス1.8%と落ち込んだ。輸出のマイナスは5四半期期ぶりである。さらに統計上は「輸出」に含まれる外国人観光客による消費が、災害の影響で低調だったことも響いた。
日本のGDPに占める割合が最も大きい【個人消費】も相次ぐ自然災害で外食を摂る人や旅行に出かける人が減ったことなどから、マイナス0.1%となった。
企業の「設備投資」も自然災害で、設備の納入が滞った影響で、マイナス0.2%と8四半期期ぶりに減少している。さらに【公共投資】もマイナス1.9%の大幅な減少となった。
大胆な【金融緩和】、【財政出動】、【規制緩和】を3本の柱とする【アベノミクス】と政府が命名した安倍内閣の経済政策が開始以来5年以上が経過したがその成果は大企業や都市部には現れたが地方は取り残されたままである。【金融政策】(金融緩和)だけでは一国の経済再生は無理があるということなのであろう。地方在住の人々の可処分所得が増えない限りは【個人消費】は増えないのである。
日本経済を蝕んでいる要因の一つは、地方自治体や企業が非正規の職員や従業員の採用を多用していることだ。非正規の【職員や従業員】の年収は男性では100万円~199万円が38.8%、100万未満が26.9%と合計で65.7%を占めている。
女性の場合、正規の職員と従業員でも年収が200~299万円が28.1%、非正規の職員と従業員の年収は100~199万円が38.8%である。
正規と非正規の賃金格差、男女の賃金格差の是正に政府がメスを入れない限り日本経済の再生は絵空事に終わる可能性が高い。今後必要なことは金融政策ではなくて労働政策の改善なのであろう。   (おわり)

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2018年11月13日 (火)

日本の製造業は品質検査不正に歯止めをかけられないのか

2017年秋に入って【日産自動車】の複数の工場で無資格者が完成車検査を行っていた事実が発覚。その後、【監督官庁】の国土交通省の通達を受けて自動車メーカー各社が社内チェックを行った結果、【SUBARU(スバル)】(旧社名富士重工)でも同様の不正が確認された。
さらに、公的規格あるいは顧客の仕様を満たさない製品を、製品検査の結果の改竄や捏造などによって「仕様を満たしたもの」として出荷していた神戸製鋼所。これらの事件の余波はいまも続いている。
但し、これらの不正は30年以上も前から行われており、これらの不正によってリコール(無料修理)は起こっていないという事実がある。つまり、製品の品質に問題があったわけではない。
自動車メーカーの【完成車検査】は戦後間もない1951年(昭和26年)に制定された【道路運送車両法】で定められた検査を公的機関が行わずにメーカー自身が行っていた。【完成車検査】は法律が施行された当初から形骸化していたのである。
現在、日本の自動車メーカーの自動車組み立てラインの全工程で綿密な検査が実施されており、完成時の検査に合格しないような不良車は事実上存在しない。【完成車検査】は無意味なのかもしれない。
【日産】と【スバル】ではこの完成検査を無資格者が行い、有資格者の検査合格印を無資格者が捺印していたことが問題となった。完成車検査の資格者の認定はこれまた各メーカーが行っている。この代理捺印が問題とされるとしたら自動車メーカーが各社が有資格者の養成に積極的に取り組まなかったことであろう。
同じ不正でも問題なのは、車の性能届け出値に関する【燃費不正問題】であろう。【三菱自動車】が行った【燃費不正】は、新型車の届け出燃費を改竄・粉飾によってよく見せた不正である。
今年の8月には【マツダ】,【スズキ】、【ヤマハ発動機】の【排出ガス抜き取り検査の不正】が発覚した。【燃費不正】と【排出ガス不正】はメーカーが責任をもって根絶すべき問題である。
2017年10月に発覚した神戸製鋼所をきっかけに三菱マテリアル、東レなどと続いた日本企業の品質管理データ改ざん問題は、弁護士らによる社外調査委員会の調査により事件の核心が解明されてきた。事件の原因は品質に関する現場の過信と、サラリーマンなら従わざるを得ない社内の生産至上主義や永年にわたる悪しき慣習にあったとされる。
【川崎製鋼】や【三菱マテリアル】、【東レ】といった【素材メーカー】には共通項として「受注の獲得と納期の達成を至上命題とする風土」があり、長期間の部品メーカーとの取引を通じて「仕様を逸脱しても一定程度なら安全性の問題はないため出荷しても構わない」という誤った考え方が醸成されていったのである。
品質管理データの改竄を撲滅するには経営トップの【強い意思】が必要である。そして経営とトップの「データの改竄をしない」という意思を生産現場に徹底させる努力を怠ってはならない。   (おわり)

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2018年11月11日 (日)

曲がり角に来た外国人技能実習生制度

【法務省】によれば2017年12月末時点での日本在留の外国人実習生は27万4233人で、その数は茨城県の県庁所在地の水戸市(27万0289人 2018年10月1日)に匹敵するまでに増え、【外国人実習生】が日本の生産、加工、サービスの現場を支えている。
ところで、【外国人実習生制度】は1982年の「出入国管理及び難民認定法改正」によって【企業単独型】による外国人研修生の受け入れに端を発している。
経済のグローバル化の波が日本にも押し寄せ、日本企業が安価な労働力を求めて発展途上国に進出する際に現地従業員を採用しても研修の場がないために一時的に日本国内の工場などで研修を行うケースが大半であった。この場合研修が終了すれば研修生は帰国していた。
この流れが激変したのがバブル崩壊の前年の1990年に【団体管理型】による外国人研究生の受け入れを開始し、1993年に2年間の【研修・技能実習の在留】を認める【技能実習制度】を施行してからである。
日本は1995年に円高不況を克服すると日本経済は未曽有の好景気【バブル経済】を迎え、3K(汚い、危険、きつい)と呼ばれる職場である製造業は若年労働者に敬遠され、深刻な人手不足に陥った。産業界は人手不足解消のための苦肉の策として【外国人労働者受け入れ】を政府に要請した。
しかしながら1990年代前半という時期には【外国人労働者の受け入れ】は多くの国民の理解を得られなかった。そこで政府が産業界と国民の相克の矛盾の解消のために考え出した便法が【外国人技能実習制度】であった。【外国人労働者】は労働者でありながら労働者ではないという奇妙な存在になったということになる。
この制度の欠陥を巧みに利用したのが日本の暴力団であり、外国人犯罪組織であった、【外国人実習生】はこれらの組織の搾取の対象とされたのである。
【外国人実習生】を受け入れている企業の中には【実習生】は労働者ではないから労働に対する正当な対価を支払う意思のない企業が多く、その結果、賃金の未払いや最低賃金以下の支払いという不正行為に手を染めている。
一方、【技能研修生】という名目で来日した外国人労働者の大半は出稼ぎである。そのために賃金を契約通りに受け入れ企業が支払わなければその対抗措置として【失踪】という手段に訴えることになる。失踪を手引きするブローカーが存在するからだ。
【外国人技能実習生】の失踪件数は年々増え続けている。2011年は1000人弱であったが、12年には2005人、13年が3566人、14年が4867人、15年が5803人、2016年には前年を下回って508人、17年は7089人である。これはもう社会問題である。
政府も失踪した不法在留外国人の増加を看過しえなくなって2017年11月に新たな【実習制度】が施工され、【外国人技能実習機構】が創設された。この機構は実習生の受け入れ機関の審査や認可の厳格化、受け入れ機関の不正行為によって苦しむ実習生の保護などを行う。
日本は今後、アジアの国家として生きていかなければならない。そのためには日本に【技能実習生】を送り出している中国、ベトナム、インドネシア、カンボジア、ミャンマーなどの東アジアと東南アジアの国民の信頼を失ってはならないのである。   (おわり)

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2018年11月 8日 (木)

対日貿易赤字に関して悪意のある主張を繰り返すトランプ大統領

トランプ大統領は11月7日、ホワイトハウスで記者会見を開き、中間選挙の結果、北朝鮮核政策、中国政策、【対日貿易政策】などに関する質疑応答の中で例によってトランプ節をさ炸裂させた。
【対日貿易政策】について、「どのように交渉するのか」という記者の質問に対してトランプ大統領は「安倍晋三首相は最も親しい仲にある一人だ。だが日本は米国を貿易面で不公平に扱っているといつも伝えている。日本に対しては1千億ドル(約11兆3000億円)に近い貿易赤字を抱えている。大量の自動車を低い関税で輸出している。日本は米メーカーの車を輸入せず、仮に輸入する場合でも莫大な関税がかかる。日本を批判するつもりはない。日本にこれを許してきた米政府関係者に責任がある。」と応じた。
トランプ大統領の発言には2つの事実誤飲がある。事実誤認というよりも意図的に事実を歪曲しているというべきかもしれない。一つ目は米国の対日貿易赤字が1000億ドル(11兆3000億円 2018年11月6日のドル/円為替相場換算)近いという指摘である。
日本の【財務省】の貿易統計によれば1988年~2017年の30年間で日本の【対米貿易黒字】(米国の対日貿易赤字)がトランプ大統領が主張するような1000億ドルを超えたことはない。米国経済が住宅バブルの恩恵で活況を呈していた2006年と2007年には米国の対日貿易赤字は8兆円を超えていたが10兆円には達していなかった。
ところが2008年9月に発生した【リーマンショック】の影響で2009年の対日貿易赤字は3兆円台前半にまで急減した。その後、貿易赤字は拡大したが2013年~17年の貿易赤字は6~7兆円台である。
【米国商務省経済分析局】のデーターでも1999年~2017年の19年間で対日貿易赤字が1000億ドルを超えた年はない。トランプ大統領の主張に近いのが2006年の900億ドル超えである、この年のドル/円為替相場は1ドル=116円30銭であるから約11兆円になる。直近の2017年の対日貿易赤字額は688億ドル(7兆5680億円)である。11年前の数字を引用するとは公平ではない。トランプ大統領のこの発言は熱烈なトランプ大統領支持者向けのリップサービスなのであろう。
2つ目は「日本は米国車を輸入する場合でも莫大な関税がかかる」という発言であるが日本の自動車の輸入関税は【ゼロ】であるから偽の情報を大統領自ら【関税には無関心な】トランプの支持者に流したことになる。要するに日本からの輸入自動車に高い関税を課する言い訳を米国民にしているのである。
日米貿易交渉の落としどころは米国製の高価な武器を購入することを条件に日本の輸出自動車の関税を現行の2.5%に止め置くことであろう。付録として日本の自動車メーカーが米国での生産能力を増強するという条件が加わる。   (おわり)

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2018年11月 7日 (水)

米中間選挙の結果米議会ねじれ状態に陥る

11月6日に実施された米国議会の【中間選挙】は上院100議席のうち35議席(改選議席34と空席1)と下院の435議席(改選前共和党235議席、民主党193議席、空席7議席)すべてが改選され、日本時間の11月7日午前8時から開票が進んでいる。
米国【ABCテレビ】は日本時間午後5時半過ぎに、議会【下院】について、事前の情勢取材に基づく分析結果や投票所の出口調査の結果などから野党・民主党が過半数の議席を獲得することが確実となり、下院で8年ぶりに多数派を奪還する見通しだと伝えた。
【AP通信】は、これまでのところ【下院】では、共和党は191人、民主党は210人の候補者の当選が確実になったと伝えている。民主党は前回選挙より26議席増やし、共和党は26議席減らした。残る議席は34議席で下院の過半数は218議席記であるから民主党は今後、8議席を獲得すれば8年ぶりに下院の主導権を奪還することになる。
一方、議会【上院】では、改選されない議席(42議席)も合わせて共和党が51議席、民主党が43議席(非改選議席23議席)を獲得することが確実となり、引き続き共和党が多数派を維持する見通しになったと伝えた。
選挙結果によって米議会は上院は共和党が主導権を握り、下院は民主党が主導権を握るという【ねじれ現象】が生まれた。トランプ大統領はこれまでのように強引に選挙公約の実現に邁進することはできなくなるであろう。
しかしながら面妖な性格の持ち主のトランプ大統領の今後の政権運営を予測することは不可能である。これまで以上に移民に反発する共和党のコアな支持者向けに強硬な言動を繰り返す可能性は否定できない。
民主党が【下院の過半数】を制した要因は、トランプ大統領の虚実を交えた居丈高な言動に女性と、比較的高収入で教育水準の高い都市郊外の住民の反発を招いたことであろう。ある意味では下院選では米国の良識が蘇ったことになる。
民主党は北東部から南部にかけてと中西部全域で共和党を破ったがこの地域は【ラストベルト地帯】(錆び付いた工業地帯、衰退した製造業の象徴)と【コーンベルト地帯】(米国の穀倉地帯)が入り乱れている地域である。トランプ大統領が仕掛けた【米中貿易戦争】の一部の製造業(鉄鋼やアルミ製造業)を除いて悪影響を最も被った地域でもある。少なくとも下院選ではトランプ大統領はこの地域では【レッドカード】を突き付けられたことになる。
トランプ大統領は、中間選挙の趨勢が判明した日本時間の7日午後1時すぎ、みずからのツイッターに「今夜、すばらしい成功を収めた。皆さん、ありがとう」と投稿し、議会下院で野党・民主党が多数派を奪還することが確実になったものの、弱みを他人に晒すことを極度に嫌うトランプ大統領は強気の姿勢を崩さなかった。
トランプ大統領が今後、どのような政権運営を行うかは誰にもわからない。もしかしたらトランプ大統領本人にも決断を下す瞬間まで解らないのかもしれない。   (おわり)

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企業主導型保育所の運営には企業側の熱意が必要

大都市で深刻な社会問題と化している【待機児童数の削減】の目玉政策として政府が打ち出した【企業主導型保育所】が2016年度から始まった。2016年と2017年の2年間で企業が費用を負担して5万9703人(16年2万284人、17年3万9419人)の受け皿を作った。入所する児童の選定は自治体ではなく企業が行えることと、一定の基準さえ満たせば、国から認可保育所並みの助成金を受け取れる。そのために助成金目当ての【企業主導型保育所】の開設ブームが全国に広がったが、既に入居児童数の定員割れや短期間での保育所の閉鎖も目立ち始めている。
2016年度と17年度に開設された施設数は全国で2597施設で、施設の形態は【住宅地型】、【駅等近接型】、【事業所内設置型】、【大型施設型】、その他に分けられる。最も多いのは【住宅地型】である。
都道府県別の施設設置数は、【北海道】が168、そのうちの約70%の115施設が札幌市に集中している。東北地方では【青森県】が13、【岩手県】が全国で二番目に少ない9、【宮城県】が72でそのうち東北最大の都市【仙台市】に70%の施設が集積している。【秋田県】が全国で4番目に少ない11、【山形県】が22、【福島県】が33である。
【札幌市】と【仙台市】の事例は日本の人口動態の現況を如実に表している。地方の市町村の過疎化が進み、地域の主要都市に人口が集中している。
北関東では【茨城県】が43、【栃木県】と【群馬県】が22、【埼玉県】が80.首都圏では【東京都】が全国一の273,23の特別区の中では待機児童数が全国一の【世田谷区】が一番多い22である。【千葉県】が87、【神奈川県】が147。首都圏で開設された施設数は509施設で全国2597施設の19.4%である。
甲信越地方では【山梨県】が19、【長野県】が25、【新潟県】が24.東海地方では【静岡県】が76、【愛知県】が147、【岐阜県】が45、、【三重県】が28。北陸地方では【富山県】が全国で三番目に少ない10、【石川県】が13、【福井県】が全国一少ない6。
近畿地方では【大阪府】が全国で2番目に多い259、【大阪市】はそのうち50%を超える131でこれまで財政難のために保育園の整備が遅れていたことの証でもある。【滋賀県】が18、【京都府】が38、【兵庫県】が146、【奈良県】が27、【和歌山県】が14である。
中国地方では日本海側の【鳥取県】が16、【島根県】が12と少なく、瀬戸内海に面している【広島県】が59、【岡山県】38、【山口県】が31と多い。
四国地方では瀬戸内海に面している【愛媛県】が35、【香川県】29、太平洋側の【高知県】が10、【徳島県】が17.
九州地方では発展が著しい【福岡市】を抱える【福岡県】が223と全国3位である。【佐賀県】が19、【長崎県】が16、【大分県】が28、【熊本県】が42、【宮崎県】が12、【鹿児島県】が53である。
全国一貧しい【沖縄県】は共稼ぎ世帯が多く、出生率が高いことから保育所の需要が多いこともあって66である。
ところで、筆者の住む栃木県宇都宮市は日本最大級の内陸型工業団地【清原工業団地】が存在することから財政は豊かである。そのために【保育園】の整備にも予算を割いてきた。今回の【企業主導型保育所】事業の助成金を活用して6か所の施設が開設された。事業主体は【ホンダ】の子会社【ホンダ開発】、【トヨタ】の100%子会社のデベロッパー【トヨタウッドユーホーム】、信号機の大手【日本信号】、医療事務資格試験の大手【ニチイ学館】など運営費の調達に不安のない企業である。
施設開設後間もなく問題を起こしている【保育】は二の次で【助成金目当ての】の新規参入の事業者を排除するために助成金交付の基準を厳しくすべきであろう。   (おわり)

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2018年11月 5日 (月)

TPP11年内発効確定

【オーストラリア】が10月31日に参加国11カ国の自由貿易協定・【環太平洋経済連携協定11】(TPP11)を批准したことにより、協定発効に必要な参加国の過半数を超える6カ国が国内手続きを完了したため【TPP11】は60日後の12月30日に発効することが確定した。
参加国は、【日本】(米ドル換算の2017年の名目GDPは4兆8732億ドル、【カナダ】(名目GDP1兆6530億4000万ドル)、【オーストラリア】(1兆3795億5000万ドル)、【メキシコ】(1兆1510億5000万ドル)、【シンガポール】(3239億ドル)、【マレーシア】(3123億9000万ドル)、【チリ】(2769億9000万ドル)、【ベトナム】(2203億8000万ドル)、【ペルー】(2142億5000万ドル)、【ニュージーランド】(2013億9000万ドル)、【ブルネイ】(121億3000万ドル)。
参加11カ国の【名目GDP】の総額は10兆6182億7000万ドルで世界のGDPの総額【79兆9440億5000万ドルの約13.。2%に該当する新たな大経済圏が誕生する。
日本にとって【TPP11】参加の最大のメリットは輸出と輸入の【関税の削減】である。【TPP11】の発効1年目の関税の削減率はさほどではないが5年目以降は関税の削減の効果が顕著になる。
輸出の関税削減効果が際立つのは日本にとってはチリ、オーストラリ、メキシコ、マレーシア、ベトナムの5カ国である。
輸出品の中で関税削減の恩恵を受けるのは農水産品、食料品、アルコール、繊維製品、履物、輸送用機械及びその部品などである。
日本の4つの自動車メーカー(日産、ホンダ、トヨタ、マツダ)は【NAFTA】(北米自由貿易協定)に参加しているメキシコに生産拠点を設けている。2017年の日本メーカーのメキシコでの生産台数及びメキシコから米国への輸出台数は、【日産】が生産台数82万9262台、輸出台数46万8563台、【ホンダ】が生産台数20万8857台、輸出台数18万7177台、【トヨタ】が15万1062台と14万8136台、【マツダ】が14万1774台と147933台。メキシコでの日本メーカーの2017年の生産台数は133万台、輸出台数は95万台であった。
メキシコで生産された自動車の部品の62.5%以上が【NAFTA】域内で生産された部品が使用されていれば米国への輸出関税はゼロである。今回の【TPP11】の発効によって日本からメキシコの日本メーカーに輸出される自動車部品の関税が引き下げられるので日本メーカーの生産コストは下がる。
日本の輸入関税の削減に寄与するのはべトマムとニュージーランドで、輸入品で価格が下がる製品は農水産品、食料品、アルコール、繊維製品、履物、プラスチック、ゴム製品などである。
ベトナムから輸入品の関税は平均で1年目は3.6%から1%に引き下げられる。ニュージーランドは7.8%から5.2%に引き下げられる。
日本の農業界には【TPP11】への参加によって将来的にはビジネスチャンスが生まれることになる。   (おわり)

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