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2018年10月19日 (金)

虚偽の情報を流し米中対立を煽るトランプ大統領

中国の2017年の対米輸出額(米国の中国からの輸入額)は5050億ドル6000万ドルに対して米国の中国向け輸出額は1304億ドルで輸出額から輸入額を引いた対中国【貿易黒字額】は1304億ドル―5050億6000万ドル=-746億4000万ドル(約41兆2100億円)であった。つまり日本円に換算して約41兆2100億円の赤字ということである。
だがこの赤字額は不正確である。というのは中国からの輸出額というのは中国内で製造された製品を中国から輸出した場合の総額であって、この中には米国企業が中国内の生産拠点で製造した製品も含まれているからである。中国は原材料を輸入して製品を組み立てて輸出しているケースが大半である。中国企業の製品の場合は輸出の取り分は輸出額の3分の1程度と試算されている。
極端な例を挙げれば中国で生産された米アップル社の【iPod】(携帯型デジタル音楽プレイヤー)の300ドルの機種の場合、製造コストは150ドルで、製造は日本、中国、台湾、シンガポールが担当し、中国の取り分はわずか6ドルとされている。それ故に米国の対中貿易赤字の41兆2100億円というのは事実ではない。
さらにトランプ大統領は、中国が2001年に【WTO】(世界貿易機構)に加盟して以降、米国は製造業で300万人の雇用を失った主張しているがこれも事実ではない。
米国の製造業の労働者の数は1979年にほぼ2000万人に達した後、5回を数える景気後退のたびに労働者は急減し、回復することはなかった。2016年12月時点の工場労働者数は1230万人で、800万人分近くの職が失われたことになる。
米国の製造業は,繊維や家電分野は労働コストの低い他国に譲り、ITを中心としたハイテク産業に力を注ぎ、宇宙工学や医薬品などの製造業にシフトしている。その結果、米製造業はオートメ化と上述のような産業構造の変革により効率化と利益率を向上させている。トランプ大統領が主張するようなラストベルト地帯の復権は望み薄であろう。
ところで、トランプ大統領は、貿易赤字の大きい国や地域の中国(貿易赤字第1位)メキシコ(同2位)、日本(同3位)、EUに圧力をかけて有利な貿易協定を締結しようとしている。
とりあえずメキシコとの【NAFTA】(北米自由貿易協定)の再交渉では米国の思惑通りに事が運んだ。メキシコの対米輸出額は2017年には3140億ドルでメキシコのGDP1兆1510億5000万ドルの27.28%に相当する。それに対して米国のメキシコへの輸出額は2430億ドルで米国のGDPの1.3%にしか相当しない。メキシコの輸出額の大半はメキシコに生産拠点を持つ米国や、日本、ドイツの自動車メーカーの自動車輸出代金である。メキシコにとって米国との関係は無視できないので最終的には米国の要求を飲まざるを得なかったということになる。
一方、中国の対米輸出額は2017年の中国のGDPの4.2%に相当するが年間GDPの成長率が6%台を維持している中国(中国の統計であるから信憑性は不確かである)にとって8カ月程度で稼ぎ出せる程度の額である。米国が圧力をかけても中国は動じない、というより米国の要求を飲めば習近平国家主席は国民の支持を失い、失脚の憂き目にあう可能性が高いので米国の要求に応じることはない。
【米中貿易戦争】は米国が中国の面子を立てて譲歩しない限り解決しない。貿易戦争が長引けば不利益を被るのは物価が高となる米国国民である。   (おわり)

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