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2018年8月

2018年8月30日 (木)

日銀のゼロ金利政策の犠牲になったスルガ銀行

1980年代後半から1990年代初頭に時期に発生したバブルが1991年弾けると日本の金融機関は90年代後半は膨大な不良債権の処理に追われた不良菜園の処理の過程で3つの長期信用銀行と北海道に営業基盤を置く都市銀行の北海道拓殖銀行が破綻した。
この金融危機を乗り切るために日銀は1999年2月から【ゼロ金利政策】を開始した。この政策は銀行にコストのかからない資金を提供する銀行救済措置策という側面と企業や個人の余剰資金を株式投資に目消させるという意図をが隠されていた。別の表現を採れば銀行に対して企業や個人に資金を貸し付けてその金利で銀行経営を賄うという旧来の銀行業務からの転換を銀行に強いるものであった。
1980年代の郵便局(ゆうちょ銀行)の貯蓄預金の利率は4.56%つまり100万円を預金すれば1年後には4万5600円の利息を手にすることができたが現在の利率は0.01%なので利息は100万の預金で1000円にしかならない。銀行の貸出利息は1980年代は5%を超えていたが現在は0%台であるから銀行は企業への貸し出し金利では利益を確保できないのである。
こうした【冬の時代】を迎えた地方銀行(全国64行)は1%以上の貸し付け利息を生み出すビジネスモデルの構築にシャカリキになった。地銀の中で目覚ましい実績を上げたのが静岡県沼津市に本社を置く【スルガ銀行】であった。【スルガ銀行】が着目したのは個人の【住宅ローン】であった。【住宅ローン】による融資はいくつかの融資の条件があるがこれを大幅に緩和して【スーパーホームローンワイド】と名付けて金融商品として売り出したがこれがヒット商品となり、2000年代の稼ぎ頭となった。この金融商品はいわば日本版【サブプライムローン】(リーマンショックの元凶)である。
儲かるとなれば模倣するのがビジネスの世界の常道で他の地銀も続々と【個人の住宅ローン】市場に参入してきたために旨味がなくなってしまった。そこで、【スルガ銀行】は2010年代に入ると貸付金利が3~4%の投資用不動産事業に活路を見出したのである。融資の対象となったのが【マンション】、【アパート】、【シェアハウス】である。【スルガ銀行】が一番力を注いだのが【シェアハウス】事業であった。
ところで、企業の経営状況を最も如実に反映するのが【経常利益】である。シェアハウス事業など投資用不動産事業で荒稼ぎした【スルガ銀行】の2015年の経常利益は534億円、16年が544億円で64の地銀中【経常利益ランキング】で15年、16年と連続して5位である。【スルガ銀行】の預金高は3兆8164億円で【預金量ランキング】の27位にも拘らず預金量4兆9579億円で15位の栃木県の【足利銀行】よりも【経常利益】において15年が144億円、16年が145億円上回っている。この数値は【スルガ銀行】の収益率が高かった証である。
ところが【好事魔多し】で【高い収益率】確保のためにリスクを積極的に取り入れた【シェアハウス事業】が【スルガ銀行】の【中興の祖】あるいは【地銀の異端児】と呼ばれていた創業家出身の岡野光喜会長を引責辞任に追い込んだ。
【スルガ銀行】が躓(つまづ)いた原因は【シェアハウス事業】の草分け的存在の女性専用のシェアハウス【かぼちゃの馬車】を運営する業績不振に陥った【スマートデイズ】への融資を17年10月に打ち切ったことに端を発している。融資停止の結果、【スマートデイズ】は【シェハウス】のオーナーへの賃料の支払いを18年1月に停止し、事実上破産した。
5月15日に【スマートデイズ】は東京地裁より【破産手続き開始】の決定を受けて正式に破産した。【スマートデイズ】の破産により【スルガ銀行】の不正融資疑惑が発覚し、【スルガ銀行】の株価は今年の1月には2500円台であったが6月28日の定時株主総会前後の株価は900円台、8月28日の前場終了時点の株価は626円にまで下落した。【スルガ銀行】のシェアハウス関連事業への融資残高は2050億円で400億円が焦げ付くリスクに晒されている。【スルガ銀行】の2019年3月期決算の純利益の予想は430億円であったが貸し倒れ引当金を約400億円積み増ししたことによって純利益は前期比50%減の210億円に下方修正された。
【スルガ銀行】のような不正融資は他行でも行われている可能性が高い。その原因は19年間もゼロ金利時代が続いているからだ。日銀は早急に【ゼロ金利政策】を改善すべきであろう。   (おわり)

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2018年8月28日 (火)

総裁選告示前に早くも出回っている組閣名簿の一部

8月25~26日に実施された【産経新聞】と【FNN】合同世論調査をはじめ【共同通信】、【日本経済新聞】、【読売新聞】の世論調査の結果が27日に報じられた。
9月20日に行われる自民党総裁選に関して【次期総裁にふさわしい人物は】という【産経新聞・FNN】の設問に対して安倍晋三首相と答えたのは38.9%、石破茂元幹事長と答えた回答は35.1%でその差は3.8ポイントという僅差であった。さらに指示の内容を党派別に分析すると、【自民党支持層】では安倍首相支持が66.4%、石破氏は21.6%、【公明党支持層】では安倍首相支持が41.9%、石破氏支持が25.6%で与党支持層では安倍首相が自民党の現職の総裁ということで当然のことながら安倍首相の指示が石破氏の支持を圧倒している。
野党の【立憲民主党支持層】では安倍首相支持が9.3%、石破氏支持が63.6%、支持政党なしという【無党派層】の間では安倍首相が17.9%、石破氏支持が42.9%であった。近年の参院選挙では無党派層の投票行動が選挙結果に大きな影響を及ぼしている。自民党の第3派閥【竹下派】の参院議員21人が石破氏支持に動いたのは無党派層に人気のない安倍首相では来年の参院選での勝利は覚束ないという危機感からである。
【産経新聞】以外の他のメディアの総裁選での支持率は、【共同通信】が安倍首相支持31%で石破氏支持が36.3%、石破氏支持が31.3%その差は5.0ポイント、【日本経済新聞】は安倍首相支持が39%、【石破氏支持】が31%でその差は8ポイント、【読売新聞】ガ【安倍首相支持】は42%、【石破氏支持】が36%でその差は6ポイントであった。
今回の世論調査を実施したマスコミ4社は安倍首相支持の色彩が強いが安倍首相支持と石破氏支持の差が一桁台というのは安倍首相側近達にとっては想定外の結果であったと思われる。
ところで、安倍首相支持の国会議員が70~80%と想定されていることから首相周辺には楽観ムード漂い、総裁選告示前に総裁選後の組閣で閣僚入りする議員の名前が早くも取り沙汰されている。これは石破氏周辺が意図的に流しているのかあるいは安倍首相周辺が首相の心中を推し量って意図的に情報をリークしているのかは定かではない。
組閣名簿の一部は以下の通り:【官房長官】下村博文(元文部科学相)l、【経済産業相】甘利明(元経済財政政策担当相)、【総務相】小渕優子(元経済産業相)、【外務大臣】岸信夫(前外務副大臣)。
官房長官候補の下村博文氏は安倍首相の側近筆頭である。加計学園がパーティ―券を200万円分を購入したが政治資金収支報告書には記載されていないと文春で報じられた。
経済産業大臣候補の甘利氏は安倍首相の信頼が厚い。経産相には過去2回就任している。URへの斡旋疑惑で責任を取って辞任。
総務大臣候補の小渕優子氏は入閣の条件は所属する竹下派が首相3選を支持することであったが衆院銀34人は自主投票になったことから入閣の確率は低くなった。経産相時代に政治資金収支報告書に1億以上の未記載の資金の存在が発覚し責任を取って辞任。
外務大臣候補の岸信夫氏は安倍首相の実弟である。生後すぐに母親の実家岸家の養子になった。養父は日米安保条約を締結した故岸信介首相の長男の信和氏である。岸氏が入閣したら副大臣を経験したとはいえその外交能力は未知数で公平な人事とは言い難い。
岸氏以外の3人の大臣経験者は政治資金問題でスキャンダルを起こしており自民党党内からも【スキャンダル】一層の人事と評判が悪い。   (おわり)

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2018年8月27日 (月)

対中追加関税の効き目なく苛立つトランプ大統領

中国の税関の総元締めともいうべき【海関総署】の2018年7月13日の発表によれば中国から米国への輸出総額は第1四半期(1~3月)が前年同期比14.8%増の999億ドル、第2四半期(4~6月)は前年同期比13.6%増の1179億ドルであった。
この数字から判断する限り3月23日に発動された鉄鋼・製品への25%、アルミニュウㇺ製品への10%の追加関税の効果は表れていない。もっとも米国の鉄鋼輸入量は2017年が3592万トンであるが中国からの輸入鉄鋼製品の占める割合は2.0%の78万トンで金額にして3億ドルであるから中国は追加関税の影響はそれほど受けないのであろう。
米国7月6日に中国製品340億ドル分に25%の追加関税を発動し、8月23日にはさらに中国製品140億ドル分に25%の追加関税を課した。しかし、3月末のドル/人民元の為替相場は1ドル=6.2人民元であったが8月26日の為替相場は1ドル=6.8人民元と人民元安となり、トランプ大統領は、8月22日にワシントンで【米中貿易戦争】の深刻化を避けるために2か月ぶりに再開された米中通商協議直前に「中國は完全に為替操作をしている。】と例のごとく激しく非難した。トランプ大統領の非難は、中国の輸入品に対して制裁関税を課しても人民元安が後押しして中国の輸出が一向に衰えない状況に苛立ちを覚えたからであろう。
米国は9月には制裁関税の第3弾として2000億ドル(約22兆円)相当の中国製品に追加関税を発動することになる可能性が高くなった。第3弾の制裁関税が発動されれば中国の輸出は減少するであろう。
7月6日に発動された340億ドル分の中国製品が米国の輸入に占める割合は7.22%にすぎなかったが8月23日に発動された第2弾は米国の輸入品全体に占める中国製品の比率は14.67%に上昇している。第3弾の比率は23.17%とさらに上昇するので中国の輸出量は9月の第3弾以降は確実に減少することになると思われる。
中国製品の輸入が減少することは廉価な中国製品が品薄となり、米国国民は値上がりした中国製品を購入することとなり、しわ寄せは米国の消費者に及ぶことになる。
ところで、米中通商協議で妥協点を見出すことは恐らく難しいであろう。現在、対中国の通商政策の実権を握っているのは対中国強硬派のロバート・ライトハイザー米国通商代表(USTR)とピーター・ナバロ国家通商会議(NTC)委員長と言われている。米中通商協議の米国側の担当者はライトハイザーUSTRで米国の主張を一方的に押し付ける交渉スタイルで知られているので米中通商協議が話し合いで解決する確率は非常に低い。そのために市場関係者の間でささやかれ始めた協議の着地点は【人民元】の切り上げ、つまり人民元高を実現することである。
1985年為替相場が固定制から変動相場制に移行した。これは【プラザ合意】と呼ばれているがこの結果、日本円は1ドル=230円から1ドル=120円と急激な円高となった。
米中通商協議は人民元高を中国に容認させることによって解決が図られるかもしれない。   (おわり)

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2018年8月26日 (日)

3選を目指し安倍首相自民党総裁選立候補正式に表明

9月7日公示、20日投開票の自民党総裁選挙を前に、安倍総理大臣は8月26日、視察先の鹿児島県で「【平成】の、その先の時代に向けて、新たな国造りを進めていく、その先頭に立つ決意だ」と述べ、3選を目指して立候補する考えを正式に表明した。
一方、石破茂・元幹事長(61 )は8月10日、国会内で記者会見し、9月の党総裁選に立候補する意向を正式に表明した。記者会見の中で石破氏は 森友・加計(かけ)学園問題をめぐる安倍政権の対応などを念頭に、【謙虚で正直で国民の思いに近い政治を目指す」と述べている。
今回の総裁選から新しい選挙方式を採用している。国会議員には1人一票が与えられ衆参合わせて自民党の国会議員は405人(衆議院283人、参議院122人)なので405票、地方党員全体には国会議員票と同等の405票が与えられ、投票総数は810票でその過半数の406票以上の票数を獲得した候補者が総裁に就任する。
国会議員票では安倍首相が現時点では圧倒的に有利で7割以上の票を獲得すると予測されている。安倍首相にとっての不安材料は、各種世論調査で【次の首相に相応しい人物】という設問では小泉進次郎衆院議員(神奈川11区)が安倍首相を上回っていることで、石破氏と小泉氏が協力することになれば石破氏が国会議員票で3割を超える票を獲得する可能性が出てくる。
現時点で石破氏を支持する議員数は石破氏自身が率いる派閥【水月会】の20人と第3派閥の【竹下派】の参議員21人と同派の衆議院議員34人のうちの一部の議員の合計約50人である。
国民的人気が高い小泉氏は今年の3月に会員30人の派閥横断の政策勉強会【2020年以降の経済社会構想会議】を立上げ小泉氏は会長代行に就任した。会員の所属する派閥の人数の内訳は総裁派閥【細田派】が7人、第2派閥【麻生派】が3人、【竹下派】が4人、【岸田派】が5人、【二階派】が4人、【谷垣グループ】が3人、【無派閥】が小泉氏を含めて4人である。
【政党助成金】が存在しなかった1993年以前の【派閥】は派閥が選挙資金の面倒をみていたことから派閥の所属議員に対する支配力は強固であったが現在は派閥の所属議員に対する支配力は弱体化している。それだけに若手に影響力を持っている小泉氏の動向に首相周辺は神経を尖らしている。
石破氏陣営は地方党員票の獲得に活路を見出そうとしているが地方党員の大半は自民党国会議員の後援会に組み込まれていることから石破氏を支持する国会議員数が圧倒的に少ないので党員票の獲得でも安倍首相が優位に立っている
。石破氏は今回の票数の出方次第で次の首相のへの道が開かれるのかあるいは閉ざされるのかが決まることになる。   (おわり)

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2018年8月25日 (土)

沖縄県知事選の帰趨に安室奈美恵が影響を与える可能性

8月12日に死亡した翁長雄志沖縄県知事の死去に伴う沖縄県知事選挙が9月13日告示、9月30日投開票の日程で行われる。翁長氏を支持してきた県政与党や労働団体などでつくる「調整会議」(議長・照屋大河県議)は8月23日午後、那覇市内で選考委員会を開き、自由党幹事長で衆院議員4期生の玉城デニー氏(58)を擁立する方針を全会一致で決め、発表した。玉城氏は8月29日に立候補を正式に発表する予定である。立候補の正式発表が遅れるのは翁長知事を支援した保守系支持者との調整が必要であるからだ。
2014年11月に行われた前回の知事選挙で翁長氏は現職の仲井真弘多(ひろかず)知事に9万9744票の大差をつけて当選した。勝因は政権与党の一角を占める公明党が自主投票になったこと、翁長氏が自民党党員として沖縄最大の都市で大票田の【那覇市】の市議2期、那覇市選出の県議2期、那覇市長を14年間務め、那覇市の経済界にも影響力を持っていたために那覇市で現職に圧勝したこと、保守系の票約7万票が新人候補の下地幹雄氏に流れたことなどである。
一方、自民党沖縄県連は佐喜真淳宜野湾市長(54)を擁立し、知事選は佐喜真氏と玉城氏の事実上の保革一騎打ちとなる。
今回の選挙では翁長氏の後継者である玉城氏は大票田那覇市で大量得票は見込めないし、前回自主投票となった公明党が佐喜真氏を推薦候補としたことによって佐喜真候補の優位は動かない。
ただし、佐喜真氏陣営が恐れているのは沖縄のスパースターで歌手の安室奈美恵の存在である。9月16日に歌手活動を引退する安室は、存命中の翁長雄志知事から5月に県民栄誉賞を贈られた。翁長の急逝に接すると、安室奈美恵は以下のような追悼文を発表した。
安室の追悼文:「県民栄誉賞の授賞式でお会いした際には、お痩せになられた印象がありました。今思えばあの時も、体調が優れなかったにも関わらず、私を気遣ってくださり、優しい言葉をかけてくださいました。沖縄の事を考え、沖縄の為に尽くしてこられた翁長知事のご遺志がこの先も受け継がれ、これからも多くの人に愛される沖縄であることを願っております」
佐喜真陣営の関係者や沖縄県連関係者が危惧しているのはこの追悼文中の【翁長知事のご遺志がこの先も受け継がれ】の部分である。
安室奈美恵は引退前日の9月15日にラストライブを行うことが決定している。普天間基地を抱える宜野湾市の沖縄コンベンションセンター展示棟(5000人収容)で開催される音楽ライブに安室は出演し、翁長知事の遺志を継いで普天間基地の名護市辺野古への移転を阻止しようというメッセージをファンに贈れば対立候補佐喜真氏の地元宜野湾市民の票が玉城氏へ大量に流れかねない。
沖縄知事選は現時点では予断を許さない状況である。   (おわり)

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2018年8月23日 (木)

トランプ大統領にとって就任以来最悪の日となった18年8月21日

【2018年8月21日】はトランプ大統領にとって大統領就任以来最悪の日となったようだ。
この日、2016年の大統領選でトランプ陣営の選対本部長(16年3~8月)を務めたロビイスト兼弁護士のポール・マナフォート被告が脱税や銀行詐欺など8つの罪で、バージニア州アレクサンドリア連邦地裁陪審で有罪評決を受けた。
マナフォート被告はこれまでに親露派で国際刑事警察から国際手配されたウクライナのヴィクトル・ヤヌコーヴィチ元大統領やフィリピンのフェルディナンド・マルコス元大統領、コンゴ民主共和国の元独裁者モブツ・セセ・セコ元大統領、アンゴラ内戦の当事者の一人で反政府武装勢力アンゴラ全面独立民族同盟を指揮したジョナス・サヴィンビなどの独裁色の強い外国の指導者のためにロビー活動を行なっていたが、外国の政府または指導者の代理人としてロビー活動を行う者に義務付けられている外国代理人登録法に基づく司法省への登録を2017年6月2日時点で行なってなかったことが判明すると同月27日に過去に遡る形で司法省へ登録を行なった。
トランプ大統領は、みずからの選挙対策本部の元幹部ポール・マナフォート被告が連邦地裁陪審で詐欺などの罪で有罪の評決を言い渡されたことについても「魔女狩りだ」とツイッターに書き込み、ロシア疑惑をめぐる捜査を非難している。
同日、ロシア疑惑の捜査を進めるロバート・ムラー特別捜査官のもう1つの成果もマスメディアで派手に報じられた。トランプ大統領の元個人弁護士でロシア疑惑の重要人物のマイケル・コーエン被告(51)が21日、司法取引に応じ、ニューヨーク連邦地裁でトランプ氏の指示で不倫疑惑を隠蔽するため2人の女性に口止め料を払ったと証言した。2人の女婿とは元ポルノ女優のストーミー・ダニエルズさんと米誌【プレーボーイ】の元モデル、カレン・マクドゥーガルさんで、ダニエルズさんには13万ドル、マクドゥーガルさんには15万ドル支払っている。
コーエン被告の証言に対してトランプ大統領は22日、例によってツイッターに「コーエンは司法取引のために話をでっちあげている」としてうその証言をしていると批判した。トランプ大統領は口止め料支払いの指示をしたとは認め難いので当然のことながらコーエン被告の証言を否定したのだ。
米有力週刊誌【ニューズウィーク】は8月23日午後、【トランプ「最悪の日」にわかったこと:探せばまだまだボロは出そうだ】と題する記事を配信した。記事の中で筆者ビル・パウエル氏は「トランプにできることは、弾劾を避けるためにありったけの声を張り上げて「魔女狩りだ!」と叫ぶことだけ」と記した上でトランプ大統領のこれまでの経歴に関して「これは(2人の女性に口止め料を支払ったこととマナフォート被告のウクライナ絡みの脱税)トランプの抱える弱みだ。濁った水をたたえた深く広い「トランプ湖」で釣りをすれば、必ず獲物がかかる。ニューヨークでの不動産取引、カジノ経営、テレビ出演、そして政界進出と、トランプの長い経歴には、訴訟絡みの詳細な記録が残っている。彼が渡り歩いてきたのはいずれも清廉潔白とは言い難い業界だ。トランプは米金融界の最大手クラスの投資銀行を敵に回し、誰もが尻込みするような国々で自身の名を冠した大規模な不動産開発をやってきた。その過程では、ロシア、ウクライナ、中国など腐敗にまみれた国々からも資金を集めてきた。」と述べている。
8月21日に起こったことは中間選挙に影響が及ぶことは間違いない。政権与党共和党が中間選挙の結果米議会両院で過半数割れを起こせばトランプ大統領は任期半ばで【レイムダック(死に体)】状態に陥ることになる。   (おわり)

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2018年8月21日 (火)

トランプ大統領が仕掛けた米中貿易戦争裏目に出る

世界の2大自動車市場である中國と米国の2017年の新車販売台数は【中国】が前年比3%増の2887万9000台、【米国】が前年比1.8%減の1723万0436台であった、米国最大の自動車メーカーの【GM】の中国での新車販売台数は前年比3.2%増の404万台、米国での新車販売台数は前年比1.4%減の299万9605台で販売台数で100万台以上の差がついたので【GM】にとって主力市場は本国米国ではなく中国に移ったことを示している。【GM】の中国での販売台数は2010年以降2桁台の伸びを示してきたが昨年は3.2%の伸びなので今後EVが市場に投入されるまで中国での販売台数の大幅の伸びは【GM】と言えども期待薄であろう。
米国の3大メーカの一つ【フォード】の昨年の米国での販売台数は前年比0.9%減の257万5200台、【クライスラー】の販売台数は前年比9.2%減の205万9376台で米国メーカーは全社米国市場で前年割れした。
今年の1~7月の米国の新車販売台数は前年同期比1.2%増の998万1174台である。今後、米国の自動車市場が発展することはあまり望めないことから米国の3大メーカーにとってアメリカ市場は設備投資の対象ではなくなってしまったようである。
トランプ大統領がいくらツイッターで【米国で車を作れ】と呟いても経済合理性に照らして米国自動車市場が縮小傾向にある以上米国へ投資する自動車メーカーは当面存在しないであろう。
日本の3大メーカーの【トヨタ】、【日産】、【ホンダ】の2017年の中国新車販売台数は【トヨタ】が前年比6.3%増の129万0000台、【日産】が12.2%増の151万9714台、【ホンダ】が前年比15.5%増の144万1307台であった。今年の1~7月の累計販売台数は【トヨタ】が前年比10.2%増の80万7400台、【日産】が前年比9.5%増の82万7302台、【ホンダ】が前年同期比6.6%減の71万5060台。【ホンダ】の販売減の理由は売れ筋のSUV【CR-V】のリコールで販売できなかったためである。
ところで、年々、日本を訪れる一般の中国人の数が増加の一途を辿り、昨年は700万人を超え、今年は800万人を超える可能性が高まっている。その結果、反日感情が薄れ、【日本車】購入に抵抗感が薄れている。政治的リスクはあるが日本の3大自動車メーカーは今後も販売台数が伸びると判断して中國への投資を決断したのである。
【日産】は生産能力を3割引き上げるために【武漢】に1000億円の投資をする。【トヨタ】は天津市と広州市の中国メーカーとの合弁工場内に約12万台の生産能力を持つ新工場を1000億円を投じて建設する。【トヨタ】の中国国内での生産能力は116万台である。【ホンダ】も500億円程度の投資を中国で行う。
米中貿易戦争の影響を現時点では【GM】受けていないが【フォード】と【クライスラー】は受けている。【フォード】の2018年1~6月の新車販売台数は前年同期比で25%減の40万0443台である。【フォード】と【クライスラー】2社の2018年1~7月の販売台数は125万8700台で昨年同期の155万4200台と比較すると約30万台減っている。
自動車産業に限ればトランプ大統領の願とは裏腹に貿易戦争は現時点では中国には有利に展開している。   (おわり)

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2018年8月20日 (月)

米中間選挙で民主党下院の過半数掌握の可能性高まる

米国では行政府のトップである大統領の任期は4年であることから【大統領選挙】は4年ごとに実施される。それに対して立法府の上・下両院の議員の任期は上院議員が6年、下院議員が2年である。上院議員の定数は100、下院議員の定数は435である。
下院議員の任期は2年であることから米国議会選挙は2年ごとに行われ、下院議員選では435人が再選され、下院議員選挙に合わせて施行される上院議員選挙は任期が6年であることから2年ごとの会員議員選挙に合わせてその3分の1の33人が改選される。 
4年ごとに実施される大統領選挙の2年後には米国議会議員選挙が行われ、その2年後には大統領選選挙が行われるので大統領選挙と大統領選挙の中間の選挙ということから中間選挙と呼ばれる。今年の11月6日に実施される【中間選挙】(米国議会選)では435の下院全議席と上院33議席(総議席は100)が改選され、トランプ政権の政策の是非が国民に審判される。
【中間選挙】まで3カ月を切ったことから米国のマスメディアは最近、中間選挙に言及する記事をネット上でも配信する機会が多い。米国最大のテレビ、ラジオのネットワークを有する放送局の【CBS】(Columbia Broadcasting System)(正式名称はコロンビア放送)は8月19日、世論調査に基づいた中間選挙での下院議会選挙の民主党の予想獲得議席に関する記事を配信した。【世論調査】は【CBS】の依頼を受けて【ユーガブ】画8月10~16日の7日間、登録有権者4989人を対象に実施した。
現時点で選挙を行えば【民主党】は過半数の218議席を4議席上回る222議席を獲得する。6月に【世論調査】を実施した時点では【民主党】の予想獲得議席は219議席であったから3議席増えたことになる。【7月6日】から始まった【米中貿易戦争】の影響が【政権与党】共和党への逆風の原因と思われる。
トランプ大統領は対中国貿易赤字の削減を目的として中国製品に新たな関税を課した。それに対して中国も米国製品に報復関税を課することとなった。米国から輸入する自動車の報復関税は25%である。7月1日から始まった中国の輸入関税率は10%下がって15%となったが報復関税が25%上乗せされることになったことから米国から輸入される乗用車には40%の輸入関税が課されることになり、一番の被害を受けることになったのはドイツの高級車メーカーの【BMW】や【ダイムラー・ベンツ】(ブランド名メルセデス・ベンツ)と米国のGMやフォードであった。
【BMW】は昨年、米国サウスカロライナ州の工場から中国へ10万台輸出したが関税が40%となったため、トヨタのレクサスに価格的に対抗できなくなり、中国向けの輸出車製造工場を新たに米国以外に建設する必要性に迫られる可能性が出てきた。トランプ大統領の【自動車は米国で作れ】という願いは水泡に帰す事態になりかねない・。
トランプ大統領は女性に不人気で女性の支持率は30%、不支持率は39%である。今回の中間選挙の投票先を決定する要因の一つはトランプ大統領と明言する回答が多かった。トランプ大統領の支持率は【法人減税】で上向いているが財源の手当てはできていない。中間選挙で民主党が過半数を確保することになれば米国の政策は大きく変化することになる。   (おわり)

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2018年8月11日 (土)

日本は日米新通商協議で拙速に合意すべきでない

茂木経済再生担当大臣とライトハイザー通商代表という日米の閣僚級による日米間の新たな【通商協議(FFR)】の初日の協議は、ワシントンで日本時間の8月10日朝6時ごろまで、およそ2時間半にわたって行われたが事務レネベルでの事前調整はほとんど行われていないので今回の協議は日本側の閣僚級交渉担当者の茂木敏充経済再生担当相と米国側の閣僚級交渉担当者の米通商代表部「UTSR)のライトハイザー代表の顔見世という様相を帯びていた。
日本では9月の自民党総裁選挙後にならない限り、新たな閣僚級交渉協議担当者が決まらないので現時点の通商協議では具体的内容に踏み込めないのである。
ところで、トランプ大統領が最も気にしている【貿易赤字】であるが2017年の米国の【貿易赤字額】は前年比12.1%増の5660億ドル(約62兆円)で9年ぶりに高い水準であった。【対日赤字額】は688億ドル(約7..6兆円)で日本はメキシコに次いで3番目の対米貿易黒字国である。その黒字の8割強は自動車関連だ。
2017年の自動車の対米輸出台数は174万台、現地生産台数は377万台。日本メーカの米国での雇用人数は150万人である。2017年のドイツの対米輸出台数が49万台であるからいかに日本車が米国で売れているかの証にもなる。米国車の日本での販売台数は約1万5000台であるから米国政府は本音では日本での米国車の販売台数が伸びることは期待していないであろう。
米国は輸入自動車に対して25%の関税を課することを日米通商協議での恫喝の材料として日本の輸入量が多い【牛肉】、【豚肉】、【トウモロコシ】の関税引き下げを日本政府に迫ると思われる。
7月6日に中国は米国の輸出品に対して報復関税の25%を課したことによって【米中貿易戦争】が勃発した。その影響は米国の大豆が中国で売れなくなった。25%の関税が上乗せされてはブラジル産やアルゼンチン産大豆に価格の面で太刀打ちできないからだ。中国で売れなくなった大豆の一部を【EU】が買い取る提案をしたことによって【米・EU】の貿易摩擦は一次的に回避された。
米国産豚肉の最大の輸入国の【メキシコ】は6月に米国産豚肉に20%の報復関税をかけると宣言した。このため【メキシコ】では米国産豚肉輸入量が激減して米国産豚肉の価格は下落している。世界最大の牛肉輸出国の米国産牛肉も中国では輸入量が減っている。
2017年の米国の牛肉輸出量は125万3000トンで、そのうちの24%の30万1559トンは日本が輸入、メキシコは19%の23万7972トン輸入した。現時点で米国との貿易量が多い国の中で米国に対して報復措置を実施していないのは日本だけである。
米国は日本との2国間交渉によってFTA(自由貿易協定)を締結することを目論んでいる。FTAは米国の理不尽な要求を日本に押し付け易いからだ。それに対して日本は年内発効を視野に入れて米国をTPP11に参加させることを目論んでいる。アメリカに理不尽や要求をさせないためだ。
トランプ政権は中間選挙前に【FFR】の成果を上げるために日本側に強硬に譲歩を迫ることになるであろう。日本側は時間稼ぎをすることである。中間選挙の結果によってはFFRは中断するかもしれないからだ。   (おわり)


米国では米中貿易戦争の勃発によって自動車産業にも農業生産者の間にも不安感が広がっている。現時点で米国産の大豆は最大の輸出相手国の中国への輸出量が激減している。
ライトハイザー通商代表はこれまで、日本とのFTA=自由貿易協定に意欲を示していて、今回の協議の中でも2国間の交渉を重視する立場を改めて強調している。
これに対して茂木経済再生担当相は、アメリカに多くの国が参加するTPPに復帰することを求め、双方の意見の違いが浮かび上がる結果となった。

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2018年8月 9日 (木)

翁長沖縄県知事死去選挙戦へ

沖縄県の謝花(じゃはな)喜一郎副知事は8月8日夕刻記者会見を開き、沖縄県は、ことし4月すい臓がんの手術を受け治療にあたってきた翁長雄志(67)知事について、8月7日から意識が混濁する状態になったとして、当面、副知事が職務を代理することになったと発表した。
地元紙の【琉球新報】は8日、関係者の話として「病状の回復の目途が立たないので翁長知事は辞職する」と報じたが、謝花副知事は辞職の話は聞いていないと述べている。
テレビなどの翁長知事の映像を見ると容貌がやせ衰え、楽観視できない病状であると素人目にも映った。翁長知事の病状の回復が望まれていたが謝花副知事の会見後に翁長知事は死去した。知事という権力の座に座り続けるために地方自治体の首長(知事)の権力を逸脱した勝ち目のない戦いを国に対して挑んだ結果、心労が重なり、不帰の人となった。
沖縄県知事選は11月1日告示、11月18日投開票という選挙日程が決まっていたが翁長知事が死亡したことによって選挙は公職選挙法の規定により50日以内に実施される。
沖縄駐留の米海兵隊の普天間基地の名護市辺野古への移設工事が開始されたことにより自民党沖縄県連は知事選では絶対に負けられない立場に追い込まれた。自民党沖縄県連は当初予定されていた11月18日投開票の知事選に向けて候補者を擁立する準備を進めてきた。知事選の【候補者選考委員会】(国場幸一委員長)を立上げ、候補者の選定作業に入っていたが7月5日、【候補者選定委員会】は佐喜真淳宜野湾市長(53)に出馬要請する方針を全会一致で決めたと発表した。
自民沖縄県連の要請を受けて佐喜真宜野湾市長は7月27日、知事選の立候補を正式に表明した。但し、知事選の部外者からみれば【候補者選定委員会】の国場幸一委員長の存在が気にかかる。国場氏は沖縄県の大手建設会社【国場組(こくばぐみ)】の会長で、【国場組】は普天間基地の移設工事の受注業者である。【普天間基地移設工事】はあからさまな利益誘導型の公共工事であることを示している。
一歩、沖縄県政の与党を形成している革新勢力(沖縄社会大衆党、共産党、社民党など)は早急に翁長前知事の後継候補の選定作業に入らなければならない。故翁長知事の政治経歴の出発点は県都那覇市の市議会議員でその後、県議会議員、那覇市長を経て知事に就任した。那覇市長時代までは一貫して自民党の党員であった。翁長氏は縄知事選に立候補した時点で選挙戦に勝利するために革新勢力と手を握ったのである。
翁長知事を知事に押し上げたのは自民党員時代の翁長氏の後援会員と反米・米軍基地反対派の沖縄県の革新勢力であった。知事選で翁長知事陣営は自民党色を薄めるために【オール沖縄】という言葉を造った。今回の知事選で革新勢力が候補者に擁立した人物が【オール沖縄】を名乗ることは難しい。   (おわり)

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2018年8月 6日 (月)

EUとの貿易摩擦でトランプ大統領方向転換

米国のトランプ大統領は7月25日、米国の要請によって訪米した【EU】(欧州連合)のジャン・クロード・ユンケル欧州委員長(ルクセンブルグの首相経験者)と会談し、EUが米国の大豆、シェールガス由来の天然ガスの輸入を増やすと明言したことを評価し、予定外の共同声明発表を行い、「関税・貿易障壁・補助金の3つのゼロを目指すことに向けて協力する」ことで合意したと発表した。
【EU】が米国に手を差し伸べた大豆と天然ガス輸入の拡大は【EUとの貿易摩擦】㋨落としどころを探っていたトランプ政権にとって渡りに船であった。米国は世界最大の大豆生産国であり、ブラジルに次ぐ世界第2位の大豆輸出国で昨年の大豆輸出量は5620万トンで世界の大豆輸出量に占める割合は37.8%である。
米国の大豆輸出の最大の相手国は中国で中国の大豆輸入量の34.8%を占めている。7月6日に中国の米国産大豆への報復関税が25%上乗せされたことによって7月6日以降、米国産大豆は中国の税関を通らなくなって、転売先を探すような状況に陥っていたのである。最大の輸出先中国が輸入を拒否するような状況であるから米国産大豆は値下げして輸出する事態に追い込まれるのは必定であろう。
そこに【EU】は注目したことになる。これまで【EU】㋨大豆輸入先はブラジルとアルゼンチンが主力であった。中国は米国産大豆の輸入量を激減させてその不足分をブラジル産で補うことになるであろう。EUへのブラジル産大豆の輸出量は8月以降は減少すると思われる。【EU】は不足分を値下がりした米国産大豆で補うことになる。トランプ大統領は中間選挙前に米国の大豆農家の反発を回避する必要性から【EU】との貿易摩擦の一次的な先送りに応じたことになる。
ところで、自動車製品以外の工業製品の追加関税(鉄鋼製品25%とアルミ製品10%)は3つのゼロ協議中は凍結されることになる。【自動車】が例外扱いになったのは米国側の事情である。現行の米国の輸入乗用車への関税は2.5%であるが米国の自動車メーカーが得意とするピックアップトラック(SUVを含む小型トラック)の輸入関税は25%という高率の関税を課して米国メーカーを保護している。小型トラックの関税が乗用車並みの2.5%あるいはそれ以下となれば米国自動車メーカーは日本とドイツメーカーに蹂躙されて消滅してしまうかもしれないのである。
【補助金ゼロ】は現実的に難しい。各国とも自国の産業を保護するため補助金を交付している。日本では【農業】への補助金が特に知られているが米国でも農業への補助金は膨大な金額に達している。米国の与党共和党の強力な支持基盤は中西部の農業従事者である。中間選挙前に補助金ゼロにトランプ大統領は動けけないというのが現実である。今回の米・EUの共同声明は【貿易摩擦】を先送りしたことにすぎない。。   (おわり)

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2018年8月 3日 (金)

トヨタ2019年3月期第1四半期の純益過去最高の6573億円

【トヨタ】は8月3日、2019年3月期決算(2018年4月1日~2019年3月31日)の第1四半期(2018年4~6月)の連結決算(アメリカ会計基準)を発表した。
【第1四半期】の純益は前年同期比7%増の6573億円で過去最高。純益を押し上げた要因は【トヨタ】が得意とする原価の徹底したコストダウンとアジア(特に中国)と欧州での販売増である。
【中国】での販売台数は2017年1~6月の販売台数は62万4100台、1~3月に販売台数は29万6000台であったから2017年の4~6月の販売台数は32万8100台。2018年の1~3月の販売台数は32万1900台で、1~6月の販売台数は68万台。2018年4~6月の販売台数は32万8100台であるから昨年より3万台販売台数が増えたことになる。
【EU】圏内の販売台数は、主要国のドイツで昨年比で約2000台増、フランスで約5000台増、イギリスでは約2000台、イタリアでは約1900台昨年より増えたので約1万900台昨年比で増えた。
【トヨタ】の2019年3月期通期の見通しは、米中貿易戦争の影響を現時点では想定不能であることと米国が日本などに自動車関税を課すのか予測がつかないので慎重を期して【減益】である。
日本車に貿易関税が課された場合の損失を【トヨタ】は4700億円と算出している。第1四半期の為替相場を1ドル=106円で算定していたが9月に米国の政策金利が引き上げられると市場は予測しているので米国の政策金利が0.25%引き上げられて2.25%になる可能性が高い。米国の金利引き上げが実現すれば円安が進み、1ドル=110円を超えると思われる。1円安で【トヨタ】の年間利益は400億円増えると言われている。
7月の中国での販売台数をみる限り【トヨタ】は米中貿易戦争の恩恵を被っているようだ。6月の米国車の販売台数は前年同月比で22.89%減の18万1200台で7月も米国車の販売台数は前年比でマイナスになると思われる。米国車の販売減で日本車と韓国車の販売が増大する。
【トヨタ】の7月の中国での販売台数は前年同月比17%増で12万7400台。これは単月としては過去最高。これを牽引したのが【トヨタ車】の中でもっとも中国で売れている【カローラ】が前年同月比10%増の3万4300台、小型セダン【レビン】が225増の1万6900台、SUVの【RAV4】も29%増の1万2300台の3車種であった。
中国は7月1日から輸入車の関税を25%から15%に引き下げたため全車中国に輸出しているトヨタの高級車【レクサス】に割安感が出て約40%増えて【レクサス】の7月の販売台数は1万5200台であった。
一方、中国は米国からの輸入車には7月6日から25%の報復関税を課したため米国から輸出しているドイツの高級車【BMW】には15%+25%=40%の関税が課されBMWの販売台数が大幅に落ち込んだ。
米中貿易戦争は米国の自動車産業に大打撃を現時点では与えている。トランプ大統領は政策の転換を余儀なくされることになろう。   (おわり)

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2018年8月 2日 (木)

EUが9月から導入の新燃費試験の対応が遅れたVW

欧州の自動車業界には新たな混乱が生まれている。その原因はEUが2018年9月から導入する新たな燃費試験【乗用車等国際調和排出ガス・燃費試験法】(WLTP Worldwide harmonirized Light vihicles Test Procedure)がその発端である。
【WLTP]】は乗用車および小型商用車(英: LDV:Light-duty Vehicle)の燃費や二酸化炭素および大気汚染物質の排出レベルについて、国際的に整合した標準試験方法を定めるものである。
これにより、現在は各国や地域が独自に設定している排出ガス・燃費の試験サイクル・試験方法が統一され、自動車メーカーは一度の試験で複数の国・地域での認証に必要なデータが取得可能となる。
2014年3月に、スイスのジュネーブで開催された国際連合自動車基準調和世界フォーラム 第162回会合において、【WLTP】は世界統一技術規則(GTR)として成立した。
【国土交通省】は2016年10月31日、日本国内の排出ガス燃費試験の基準を従来のJOBモードから2018年10月より【WLTP】に全面的に移行すると発表した。日本の【マツダ】は2017年型発売の車種【CX-3】が【WLTP】モード走行試験の認可を既に取得している。
EUでは2014年には【WLTP】への移行が決まっていたがドイツの【フォルクスワーゲン(VW)】と【ダイムラー】(ブランド名メルセデス・ベンツ)は【WLTP】への対応が後手に回り、【VW】は生産を一時停止、【ダイムラー】は今期の業績の見直しを余儀なくされた。
両社が【WLTP】への対応が遅れた原因は米国で排ガス不正問題を起こし、その後始末に時間を要したということだ。15年にVWの排ガス不正が発覚した後、VWはディーゼル車のソフトウエアの書き換えに追われた。ダイムラーも17年に300万台以上の無償修理を実施、18年に入っても当局から一部車種でリコールを指示され対応を迫られている。
ディーゼル不正問題が長引く中で、本来であれば新制度に対応するはずの試験部門の人員や設備が十分に確保できなかった可能性が大きい。
7月に入って【VW】は組み立て工場の周辺の土地確保に動いているという。生産した車両を検査が終わるまで新車を駐車して置くスペースが必要なためだ。確保した土地は【VW】の本社と工場の所在地のドイツの北西部州【ニーダ―ザクセン州】のヴオルフスブルグ市(人口12万3902人)、同州の北西端の貿易港で工場にあるエムデン市(人口5万486人2016年12月31日)、同州南部の【ハノーバー市】(人口53万2864人)、VWグループの高級車【アウディ】の本社・工場のある南部の州バイエルン州インゴルシュタット市(人口13万2438人)である。
【VWグループ】の2018年上半期(1~6月)の世界新車販売台数は前年同期比7.1%増の551万8600台で世界2位である。生産しても販売できないという想定外の事態に【VW】は追い込まれた。昨年に続いて世界新車販売台数一位は微妙な情勢になってきた。   (おわり)

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2018年8月 1日 (水)

金融政策に有効な手立てのない日銀

日本銀行は7月31日に開かれた金融政策決定会合で、当面、低金利を維持する指針を導入したが現在0%程度に誘導するとしている【長期金利】(10物国債の金利)について一定の上昇を認めるなどの例外措置を講じている。政策金利の指針は黒田体制になって初めてで、日銀は緩和の持続性を強化する措置だと主張している。しかし、上下0.1%という狭い範囲に抑えていた長期金利の変動幅を倍増させる方針が黒田東彦総裁の会見で示されたことで、副作用に配慮した金融正常化への一手との見方も出ている。
【日銀】が【量的・質的金融緩和】に踏み出したのは黒田総裁が就任した直後の2013年4月4日で以後円安が進み、輸出主導の自動車、電機などを中心に日本の製造業は息を吹き返し、日銀が長期国債を年間80兆円買い入れたことにより市場に溢れだした資金は株式市場に向かった。
2012年11月16日の衆院解散の日の【ドル/円為替相場】は1ドル=81円26銭、【日経平均株価】は9024円、安倍首相が就任した2012年12月26日の【ドル/円為替相場】は1ドル=85円38銭、株価は1万0230円、2013年の最後の株式取引の12月28日の為替相場は1ドル=106円06銭、株価は1万6291円で1年で21円の円安、株価は6267円上昇したことになる。【円安と株高】はまさに【量的・質的金融緩和(大胆な金融緩和))の成果であった。
だが【日銀】が目指したデフレ脱却のための【2%の物価上昇】は当初の目標の2年間を過ぎても達成されていない。その後目標達成の時期を先送りしてきたが5年間を過ぎてもいまだに実現していない。結局、金融緩和だけでは物価上昇は日本では実現不可能なのであろう。
【金融緩和】の恩恵を一番被ったのは【証券会社】であり、一番の被害者はゼロ金利を強いられた銀行や信用金庫であった。
【日銀】の努力にも拘わらず物価が2%上がらない原因は給与が上がらないからだ。給与が上がらない最大の要因は日本では欧米諸国のように会社の業績悪化を理由に従業員を簡単に解雇できないからである。日本が「20世紀の奇跡」と言われた経済成長を遂げた要素の一つが終身雇用制度に裏打ちされた雇用された企業への並外れた従業員の忠誠心である。
【終身雇用】への幻想が経営者側にも残っているために経済合理性に基づいた【解雇】を日本の経営者は決断し難い。その結果、非正規雇用という抜け道を日本の企業は多用するようになった。【バブル】が弾けた2年後の1994年の日本の雇用労働者数は3936万でそのうち15.3%の604万人は非正規雇用の労働者であった。
リーマンショックが起こった2008年の雇用労働者数は5175万人で正規労働者は3410万に対して非正規労働者は34.1%の1765万人、それ以降2014年まで正規労働者は減少を続け、2014年の正規労働者は3288万人それに対して非正規労働者は増え続け37.4%の1967万人であった。2015年からは正規労働者数は増加に転じ2017年までの3年間で135万人増えている。しかし非正規労働者の数も増え続け2017年には2036万人に達している。非正規労働者は給与が増える可能性は低く、消費を控えるので物価上昇には寄与しない。
【物価上昇】には金融政策では限界がある。【雇用の規制】に風穴を開けない限り物価上昇は当面望めない。   (おわり)

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